糸井 |
当時のぼくらが
ものすごい不良だったかっていったら
ぜんぜんそうじゃないんだけど、
なんていうか、あのころは、こう、
くにゃくにゃしてたら負けちゃうぞ、
くらいの気分はあったと思うんです。 |
荒井 |
うん、そうですよね。 |
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糸井 |
ねぇ。
たとえば、いまの若い人たちが、
くにゃくにゃしてても
ぼくは別にかまわないと思うんだけど、
当時はそれだとほんとに潰れちゃうような
気がしてましたよね。
なんだろう、あれ。貧しかったのかなぁ。 |
荒井 |
時代の空気みたいなものって
ありましたよね、やっぱり。
といっても、ぼくらの世代は
学生運動があったわけじゃないんですけど。 |
糸井 |
何年生まれですか? |
荒井 |
56年。昭和31年なので。 |
糸井 |
じゃあ、ぼくの8個下ですね。
そのころは世の中も大学も
落ち着きかけてますよね、もう。 |
荒井 |
そうですね。
「しらけ世代」とか言われた世代です。 |
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糸井 |
もう、ユーミン(当時、荒井由美)は
「就職が決まって
髪を切ってきたとき」
(『「いちご白書」をもういちど』1975年)
って歌を書いてましたよね、きっと。 |
荒井 |
うん、そうです。 |
糸井 |
そうですよね。
ぼくらにしてみると、あの歌は印象的で。
年下のひとりの詩人の作品として、
こんな表現が出てくるんだなって
ちょっと驚いた記憶があります。
ああ、思いだした。
オレ、それをパチンコ屋で聴いてたんですよ。
で、うまいこと言うなぁって。 |
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荒井 |
はははは。 |
糸井 |
なんだろうね、あの時代の、
はっきりわからないけど
なにかと戦ってる、みたいな感じは。 |
荒井 |
ありましたよね、確実に。
なんだかわからないけど、
エネルギーがぐつぐつぐつぐつ
しているような感じが。 |
糸井 |
ありましたねぇ。 |
荒井 |
ありましたよー、ほんとうに。
いや、完全にそうでしたよ。 |
糸井 |
影響を受けちゃうようなものは
見ないようにしようっていうかね。
だから、荒井さんの
ほんとうに好きな本は
買っちゃダメだったっていうのは、
とてもよくわかるんです。 |
荒井 |
うん。 |
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糸井 |
1本芝居観たり、
1本映画観たりするたびに
吐き気がしてくるんですよ、
その、自分の矮小さに。 |
荒井 |
うん、うん、うん。 |
糸井 |
そんなことは忘れて
日常に戻んなきゃいけないんだけど、
それこそ、うどん食ってても、
誰か女の子に会ってても、
コーヒー飲んでても
そんなことしかできない自分っていうのが
せつなくて‥‥。 |
荒井 |
そうですね。
「ちっぽけ」とか言うのが
口癖みたいな感じでしたねぇ。 |
糸井 |
じゃあ根底にあるのが
野心なのかっていうと、
野心ではないんですよね。 |
荒井 |
うん。 |
糸井 |
どうなりたいっていうのが
はっきりあるわけじゃないんだけど、
目の前に具体的にでかい山があるのに、
オレはこのサイズのまんまだっていうのが
もう、悲しくてさぁ。 |
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(つづきます) |