荒井 |
ぼくは山形県山形市っていうところで、
高校生まで育ったんですけど、
どんな職業につきたいとか、
なにがやりたいとかってとくになくて、
とりあえず東京の大学行って、
っていう感じだったんです。
まわりのみんなもそういう感じで。 |
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糸井 |
はい、はい。 |
荒井 |
とにかく、
ここにいるわけにはいかないなぁ
っていう感じでした。
まあ、口だけは、
オレは東京を踏み台にして行くんだぁ、
とかなんとか言ってましたけど。 |
糸井 |
ああ(笑)。 |
荒井 |
口だけですよ。 |
糸井 |
実際には、イメージないもんね。 |
荒井 |
そうなんです(笑)。
世界に飛び出すって言っても
その世界って、どこ? みたいな。 |
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一同 |
(笑) |
糸井 |
わかんない、わかんない。 |
荒井 |
でも、なんかね、
東京で終わりたくないっていうのも、
いちおう、本気で思ってました。 |
糸井 |
それは、逆に
田舎で育ったおかげかもしれませんね。 |
荒井 |
あ、そうかもしれないです。 |
糸井 |
東京の人って、東京が地元だから、
すっごく落ち着いてるんです。 |
荒井 |
そうそうそうそう。 |
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糸井 |
つまりね、こーんな、
(自分のポケットを見せながら)
ポケットが裏返った服なんかね
東京の人は着ないんです。 |
荒井 |
(笑) |
糸井 |
いや、ほんとに。
おもしろ過ぎるんですよ、こんなのは。
東京の人はね、やっぱり
ふつうのちゃんとした格好してるんですよ。
質のいい平凡なものを平気で選べるんです。
ぼくも田舎の子だから、
それはいまでも、うらやましいなぁ。 |
荒井 |
うん、うん。 |
糸井 |
田舎の子ってね、やっぱり、
ポケットひっくり返したりしたいんですよ。 |
荒井 |
そういうので覚えているのは、
大学の入学式のガイダンスなんですけど、
60人くらいで車座になって、
ひとりひとり自己紹介させられるんです。 |
糸井 |
ああ、恥ずかしいなぁ。 |
荒井 |
そうなんです。
とにかく自由にやりなさいって言われて。
立ってその場でやりたい人は
その場でふつうにやっていいんですけど。
で、そのときに「東京出身です」って言って
ラジカセ持ってきてね、踊りながらね、
自己紹介した女の子がいて。 |
糸井 |
ひゃあ。 |
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荒井 |
いまこういうと笑い話っぽく思えますけど、
そのときは、かっこいいなぁと思って。
すごく田舎もんだと思いました、自分が(笑)。 |
糸井 |
どうしていいかわかんないんだよね。
ほっんとに、どうしていいかわかんないんだ。
もしもラジカセ持ってる子ばっかりだったらね、
ここはひとつオレもラジカセかな?
って思っちゃうんだよ。 |
荒井 |
もう、ほんとに(笑) |
糸井 |
実際には、ラジカセはいるわ、
こう、「ラディゲが‥‥」みたいなことを
言い出すやつはいるわ、
いろいろで困っちゃうんだよ。
で、気のよさそうなだけの人は
やっぱり、魅力ないんですよね。 |
荒井 |
うん。 |
糸井 |
友がみな我より偉く‥‥なんですよね。
でも、そいつらもきっと、
精一杯、ふかしてたんですよね、きっと。
その自己紹介のとき、
荒井さんはなにを言ったか覚えてますか。 |
荒井 |
いや、だからもう、ふつうにやりました。
策は尽きたと思ってね。 |
糸井 |
ラジカセを見たその瞬間に。 |
荒井 |
その瞬間に(笑)。
たぶん、いろいろ考えてたと思いますけど、
これ以上はないだろうと思って
ふつうにしゃべりました。 |
糸井 |
そのラジカセの子は、
のちに、どういう学生になったんでしょう。 |
荒井 |
あ、それがね、絵を描かせたりすると
意外とおとなしかったりして。 |
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一同 |
(笑) |
糸井 |
でしょうね(笑)。 |
荒井 |
あ、なんだと思って安心しましたけどね。 |
糸井 |
ふふふふ。
(つづきます) |