糸井 |
大学を出て、どうなるんですか。 |
荒井 |
ええと、なぜか、卒業して、
焼鳥屋で焼き鳥を焼くことになるんです。 |
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糸井 |
へえ(笑)。 |
荒井 |
そこは、大学の先生が斡旋してくれたというか、
先生の紹介でその焼鳥屋に入ったんですよ。
かなりできの悪い学生だったんで、
しょうがないからって、
拾ってあげるつもりだったんじゃないですかね。
けっきょくそこで2年間、
焼き鳥、焼いてました。 |
糸井 |
2年間。 |
荒井 |
はい。
で、そのうち、そこのお客さんから
仕事がもらえるようになるんです。
その焼鳥屋のお客さんに
編集者が多かったんですよ。 |
糸井 |
ふーん。 |
荒井 |
だから、いってみれば、
ただのラッキーなんです。
なんとなくイラストレーターになっちゃって、
なんとなく広告の仕事も、
人のつて、人のつてで、やるようになって。
時代的なものもあったのかもしれませんね。
仕事そのものがいまより多かったですから。 |
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糸井 |
じゃあもう、
駆け出しのイラストレーターとして、
とにかく来た球ぜんぶ打つで。 |
荒井 |
はい。もう、ほんとに、ぜんぶ。 |
糸井 |
大きな苦労なく、できましたか。 |
荒井 |
そうですね、なんていうか、
自分だけがつくってるわけじゃないんだから、
ひとつのパーツになればいいんだ、
っていうふうに考えてて。
とくに広告なんかは、
コピーライターの人とか、デザイナーの人が、
なにを欲しがってるのかなぁって
探りながら描くようなことをやってましたね。 |
糸井 |
そのころの広告で、
ぼくらが目にしているようなものって
なにかあります? |
荒井 |
ああ、なんだろうなぁ。
数だけは、ものすごくいろいろやりましたけど。
大きなものでは109とか、
あと三越にドーンと使われるようなものとか。 |
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糸井 |
ああ、それはすごい。
じゃあ、そうとう忙しかったでしょう。 |
荒井 |
ええ。だいぶ、やりました。 |
糸井 |
広告以外の仕事も並行して? |
荒井 |
そうですね。
ありがたいことなんですけど、
とくに売り込んだりせずに、
絵本を描くチャンスが与えられて、
絵本をつくることになって。
それでちょっとラクになったりして。 |
糸井 |
もう、焼鳥屋さんは辞めてますよね。 |
荒井 |
そうですね、2年で。 |
糸井 |
ぼくはやっぱり、
その2年という長さに感動しますね。 |
荒井 |
あ、そうですか。 |
糸井 |
うん。その、美大を出た人が、
焼き鳥を2年焼くのは
なかなか簡単じゃないですよ。 |
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荒井 |
はははははは。 |
糸井 |
あの、もちろん、焼鳥屋さんという
職業をどうこういうわけじゃなくてね、
自分の意思とは無関係に
焼くことになったという意味で。 |
荒井 |
はい。 |
糸井 |
そういう状況だと、どこかで、
このあと自分はこうなるだろうっていう
イメージを描いちゃうだろうと思うんですよ。
で、あんまり明るいビジョンが描けないときに
きっと「このままじゃいけない」
っていう言い方をしてしまう。
それを言うまでに、
ふつう2年はかからないと思う。 |
荒井 |
あーー。 |
糸井 |
つまり、季節が2回訪れるわけですから、
フォークソング的に言うと。
めぐる季節が2回ですから。
それはけっこう、すごいですよ。
だから、あなたは、
まず、そこに才能があった。
もしもぼくが長老なら、そう言いますね。 |
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一同 |
(笑)
(つづきます) |