第9回 焼鳥屋さんでの2年間。

糸井 大学を出て、どうなるんですか。
荒井 ええと、なぜか、卒業して、
焼鳥屋で焼き鳥を焼くことになるんです。
糸井 へえ(笑)。
荒井 そこは、大学の先生が斡旋してくれたというか、
先生の紹介でその焼鳥屋に入ったんですよ。
かなりできの悪い学生だったんで、
しょうがないからって、
拾ってあげるつもりだったんじゃないですかね。
けっきょくそこで2年間、
焼き鳥、焼いてました。
糸井 2年間。
荒井 はい。
で、そのうち、そこのお客さんから
仕事がもらえるようになるんです。
その焼鳥屋のお客さんに
編集者が多かったんですよ。
糸井 ふーん。
荒井 だから、いってみれば、
ただのラッキーなんです。
なんとなくイラストレーターになっちゃって、
なんとなく広告の仕事も、
人のつて、人のつてで、やるようになって。
時代的なものもあったのかもしれませんね。
仕事そのものがいまより多かったですから。
糸井 じゃあもう、
駆け出しのイラストレーターとして、
とにかく来た球ぜんぶ打つで。
荒井 はい。もう、ほんとに、ぜんぶ。
糸井 大きな苦労なく、できましたか。
荒井 そうですね、なんていうか、
自分だけがつくってるわけじゃないんだから、
ひとつのパーツになればいいんだ、
っていうふうに考えてて。
とくに広告なんかは、
コピーライターの人とか、デザイナーの人が、
なにを欲しがってるのかなぁって
探りながら描くようなことをやってましたね。
糸井 そのころの広告で、
ぼくらが目にしているようなものって
なにかあります?
荒井 ああ、なんだろうなぁ。
数だけは、ものすごくいろいろやりましたけど。
大きなものでは109とか、
あと三越にドーンと使われるようなものとか。
糸井 ああ、それはすごい。
じゃあ、そうとう忙しかったでしょう。
荒井 ええ。だいぶ、やりました。
糸井 広告以外の仕事も並行して?
荒井 そうですね。
ありがたいことなんですけど、
とくに売り込んだりせずに、
絵本を描くチャンスが与えられて、
絵本をつくることになって。
それでちょっとラクになったりして。
糸井 もう、焼鳥屋さんは辞めてますよね。
荒井 そうですね、2年で。
糸井 ぼくはやっぱり、
その2年という長さに感動しますね。
荒井 あ、そうですか。
糸井 うん。その、美大を出た人が、
焼き鳥を2年焼くのは
なかなか簡単じゃないですよ。
荒井 はははははは。
糸井 あの、もちろん、焼鳥屋さんという
職業をどうこういうわけじゃなくてね、
自分の意思とは無関係に
焼くことになったという意味で。
荒井 はい。
糸井 そういう状況だと、どこかで、
このあと自分はこうなるだろうっていう
イメージを描いちゃうだろうと思うんですよ。
で、あんまり明るいビジョンが描けないときに
きっと「このままじゃいけない」
っていう言い方をしてしまう。
それを言うまでに、
ふつう2年はかからないと思う。
荒井 あーー。
糸井 つまり、季節が2回訪れるわけですから、
フォークソング的に言うと。
めぐる季節が2回ですから。
それはけっこう、すごいですよ。
だから、あなたは、
まず、そこに才能があった。
もしもぼくが長老なら、そう言いますね。
一同 (笑)


(つづきます)


今日のダーリンの言葉は時々心に響くんです。
でも日にちが経つと忘れてしまうので本にまとめてあるのは嬉しいです。
このシリーズの本は何度も読み返したくなるので、
すぐ取り出せるところに置いてあります。
(夏姫)

自分用とプレゼント用と二冊購入させていただきました。
手にとって、本の装丁を眺めているだけでもウキウキ。
そして、中の文章、写真もどの作品も目にし、
読んでいくのがもったいないくらいな気持ちになります。
実は、プレゼント用は注文時、まだ、行き先は決まっていませんでした。
自分だけではもったいない気がして…つい…。
でも、プレゼントする相手、決まりました。
喜んでくれるとうれしいな、と思っています。
(みゆき)

この本を見ていて、
ふと、一ページ目から、じっくりと読むのではなく、
一日の初めに、今日の言葉は何?
ちょっとした占い感覚で、思いつくままにページを開いて読む。
そんな楽しみ方ができるな?。
と思っています。
きっと朝が来るのが楽しみになりますね。
あっ。でも全部のページ読みます。
(やまび。)



2010-06-23-WED