夢か馬鹿か。
水中考古学って、知ってますか?

第5回 続・アゾレス諸島へのクロスロード

さて今回は、いよいよアングラ湾に沈む
難破船さがしの始まりです。
アゾレス諸島を行き交ったポルトガルや
スペイン船に満載された莫大な富や財宝も
いっしょに見つかるのでしょうか?
調査にむかうチーム員の心はもう、
いっぺんに海のソコです。

でもいったい、どうやって
目ざす沈没船を探したらいいのでしょうか?
手当たりしだいに海に潜って、そこいら中を
万遍なく捜せば、みつかるのでしょうか?
あてもなく捜すには、湾はあまりにも広すぎます。

チームの調べによると、海底は流失しやすい、
きめの粗い砂で覆われています。
付近を潜るタコ捕り漁師の話では、
重く冷たい冬の嵐が吹き荒れ、
深みに砂が追いやられると、
難破船やその残骸がこつぜんとして、
姿を現すそうです。

でも、ものの2〜3週間もたたないうちに、
砂がどこからともなくもどってきて、
あたり一面をふたたび砂漠のように
覆いつくしてしまうのだそうです。

いよいよ調査船「なんじゃもんじゃ号」の出番です。
機器を積んだ船が、アングラ湾を横切るように、
何度も何度も、行ったり来たりをくり返しました。
記録計が1〜2メートルほど堆積した砂層の厚さや
露出している岩盤などの存在を示してくれました。
沈没船とその財宝は、砂地の表面
あるいは砂中に隠れているとみて間違いなさそうです。

やがてダイバーたちは、
湾の西側の砂上に露出していた
三隻の難破船を、確認しました。

一隻目は、長さが35メートルもある大きな木造船です。
沈没船のサイズやその場の様子にくわえ、
銅製の留め具が使われていることから判断して、
19世紀に造られた船のようです。

二隻目は、船のバラストと思える
小石群の下から見つかりました。
その船のろっ骨の形やふな底の被覆材に
鉛板が使われていること、
それに小銃用に使われる鉛弾の発見などから推して、
16〜17世紀頃の船のようです。
この時期、鉛の板でふな底を被う造船技術からみて、
スペインかポルトガル船であるにちがいありません。

三隻目は、鉄製の蒸気船でした。
長さが79メートルもあります。
大西洋を巡航していたイギリス船で、
1878年に嵐にあい、沈んだ船といわれています。

さてさて、このあとには、
いったいどんなものがみつかるのでしょうか?

井上たかひこ



「水中考古学への招待」
井上たかひこ著 成山堂書店
2000円(税別)
ISBN4-425-91101-6

2000-06-23-FRI

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