夢か馬鹿か。 水中考古学って、知ってますか? |
理解しない人には、いつまでたっても わかってもらえないかもしれない。 もしかすると、馬鹿だとさえ言われるかもしれない。 しかし、海の底には、確かに宝が眠っているのだ。 あるかもしれない宝物と、 あるに決まっているけれど、誰も見ていない宝物。 それを、自分の目で見たくて潜って考えて、 考えて潜っている人たちがいることを知ってましたか? ぼくは、ひとり、知っています。 井上たかひこさんという日本人です。 世界中の水中遺跡を発掘調査する、 水中考古学研究家。 ※(講演や取材の依頼は、ほぼ日にどうぞ) |
第31回 ジャックとローズはもはやそこには立っていなかった 〜「タイタニック・ツアー」2004〜 前回は、 潜水艇で深海に潜っていったバス博士たちの目前に、 山のようにそびえる巨大なタイタニックの船体が 姿を現したところまでお話をしました。 バス博士たちの艇が、船首部分にたどり着きました。 それはぼう然とするほど想像を絶する巨大な船首でした。 もしかしたら、船首の手すり付近に、 ジャックとローズが立っているのではと 瞳を凝らしてみましたが、 もはやかれらの姿はありませんでした。 ここでの悲劇の再現は、 深い悲しみぬきに見ることは不可能でした。 船の艦橋には、運命の氷山を発見した見張り台や 遠隔操舵装置が残されたままになっています。 が、バス博士たちは、いつまでもそこに 長居をしてはいられませんでした。 潜水艇のライトはまばゆいばかり タイタニックを照らしています。 窓という窓には、いまなおガラスが そのままの姿で残されています。 そのうちのいくつかの窓は開かれていて、 あたかも90年前に乗客の誰かが 何事か起きたのだろうかと、 船外を覗いているようにも思えました。 船外には、大型のスープ皿や 数百本のワインボトルが転がっており、 海底にぽつんとひとつだけ取り残された 女性用のハイヒールを見たときには、 悲しさで心が揺り動かされたといいます。 数千点の遺品がRMSタイタニック社によって、 引き揚げられました。 それらの一部は展示され、 数百万の人々の目に触れることができました。 でも、まだまだ数え切れないほどの品が 海底に残されたままになっています。 しかし、それらをサルベージして、 船内からなにかを取り出したり、 売ったりしてしまうことは、法律で禁じられています。 海底での6時間は、あっという間に過ぎてゆきました。 夕闇せまる深い霧のなかを バス博士たちの潜水艇が浮上してきました。 11時間後の帰還です。 ケルディッシュ号の甲板に戻ってきたバス博士たち。 ディナー・ルームに用意されていたのは、 焼きたてのトーストにロシア製ウォッカでした。 そこで潜水の成功を祝いました。 勝利の美酒だったにちがいありません。 ところで、このツアーの値段は いくらだったのでしょうか? しめて36000ドルだったそうです。 バス博士にとって、とても価値のある 印象深いツアーであったと聞きます。 バス博士に国際電話をしてみると、 「タカ! 今度はぜひいっしょに行こう」と、 エキサイトしていて上機嫌でした。 一度は行ってみたい タイタニック号へのツアーの話でした。 さて、つづきは、次回をお楽しみに! 井上 たかひこ 井上たかひこさんの新著が出ました! 「気がついたら水中考古学者」 井上たかひこ著 成山堂書店 1,890円(税込) ISBN4-425-91111-3
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2005-07-10-SUN
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