夢か馬鹿か。
水中考古学って、知ってますか?

第6回 黒船(1)
    房総沖に消えた幻の黒船をさがせ!!

    
夏がやってくると、
なぜか熱い胸騒ぎを感じてしまいますね。
そうなんですよ。不思議なことに、
身体中の血が騒ぎだして、
もうどうにも止まらなくなっちゃうんです。

今回から舞台を日本の近海に移して、
「黒船」シリーズをお届けすることにします。
日本の夏といえば、いよいよ僕たちの出番です。

ここは、あふれる太陽の光がまぶしくきらめく
房総半島の勝浦です。豊かさをはぐくむ黒潮の海も、
ふだんは実にゆったりと、のどかで穏やかな
表情をみせています。

でも、このように微笑んだような海原も、
時化(シケ)になると一転して白い牙をむきだし、
荒々しく僕たちに襲いかかってきます。
この一帯の海は、洗岩や暗岩が
いたるところに林立する、海の難所中の難所です。
古来より「関東の鬼ケ島」と呼ばれるほど、
海の男たちに恐れられている海なんです。

きっとそのあたりの岩々の洞窟には、
金棒をかついだ鬼が棲んでいて、
よい獲物がくるのを、
今か今かと待ちかまえているに違いありません。

実は、この名うての海の難所、勝浦沖に、
米国の「黒船」が沈んでいるというのです!
その真偽を確かめたくて、僕たち数人は、
さっそくその海に潜ってみることにしました。

そして、待ちに待ったその日がやってきました。
港の桟橋には、潜水用のエアタンクや機材が
ところせましと、並べ立てられています。
スリム?な身体をウエットスーツに滑りこませて、
ブーツをはき、右脚にはナイフを装着しました。

「出発進行!」
僕たちがチャーターした船は、沖の岩場をめざして
まっしぐらに、軽快に波を切って進んでいきます。
外海にでると大海原からの“うねり”で、
小舟は前後左右に細かくゆれながら、
僕らを運んでいきました。

しばらくすると船は、どうやら目的地に
たどり着いたようです。舳先を風上に向けると、
船長は甲板に積んであった小型のアンカーを
ワシづかみにして、思いきり海中にほうり出しました。
その海は、海底から突き出す岩々を
隠してあまりあるほど青黒い水をたたえています。

さっそく僕たちも、潜水開始です。
ザッパーン!
船腹から次々と青黒い海に飛び込んでいきました。

さて、つづきは、次回をお楽しみに!
僕らが長い間探しつづけてきた、
幻の「黒船」は、果たしてみつかるのでしょうか?

井上たかひこ

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AMラジオで僕の話を聞いてください!
NHKラジオ第一放送(全国放送)
7月20日(木) 午後13:05〜14:55 
「海辺のポエジィ」

「海の日」にちなんだ「海の特集」番組です。
朝の海、昼の海、黄昏れ時の海、夜の海という
4つのpartで構成されています。
私が出演する「水中考古学」は“夜の海”です。
出番は14:23からの4、5分間の予定です。
そのほかのpartには、
海の漂着物、フィッシャーマンズ・セーター、
サーフィンの専門家が登場する予定です。
僕は、黒船の話をする予定です。



「水中考古学への招待」
井上たかひこ著 成山堂書店
2000円(税別)
ISBN4-425-91101-6

2000-07-17-MON

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