夢か馬鹿か。
水中考古学って、知ってますか?

第30回
海底までどの位の時間がかかるのでしょうか
〜「タイタニック・ツアー」2004〜



前回は、バス博士たちが潜水艇ミール号に乗り、
タイタニックをめざして、
深海にもぐってゆくところまでお話をしました。
今回はそのつづきです。

それにしても、深く潜ってゆく間の水圧で、
潜水艇はつぶれてしまわないのでしょうか?
深さ3800メートルの海底では、わずか1インチ四方で
3トンもの物凄い水圧がかかると言います。

今から20年前に、フランスの潜水船ノチール号で、
深さ6000メートルの日本海溝を調査したことのある
東京大学海洋研究所の小林和男教授によると、
深海では中空のゴムまりなどはたちまちぺちゃんこ、
かなり厚い鉄の箱でさえ潰れてしまうそうです。

潜水艇の船体は、チタンの合金で造られていることは
前回にも述べました。
チタンというのは、強い耐蝕性・弾力性を持ち、
航空機などの材料にも使われるいちばん丈夫な金属です。
水圧がものすごく大きい深海底ですから、
それに負けない強さが必要です。

ミール号は、そのようなものすごい圧力にも
耐えられるように設計されています。
強い構造でできていますから、心配はいりません。
内部の圧力も地上とほとんど同じに保たれています。

ところで、潜水艇が海底にたどりつくまでに、
どの位の時間がかかるのでしょうか?
ディズニーランドにあるような潜水艇とは
わけがちがいますから、数十分というわけにはゆきません。
片道なんと2時間半もかかります。
映画「タイタニック」の撮影時にも
同じ時間を要しています。

ミール号がもぐっていく途中で、
ソナーが海底に横たわるタイタニックの
船首部の受像に成功しました。
クレイグが深度計をみて、海底との距離を測っています。
「海底まで、あと400メートル」。
「減速下降!」。
船長のニキタが操縦桿を巧みに操って、
艇を水平に保ちながら、ゆっくりと下降してゆきます。
そして海底にフワリと降りたちました。
見事な軟着陸ぶりです。
乗務員全員が思わず拍手をして喜びを表しました。

第2回目にも述べましたが、タイタニックの沈没時に、
巨大な船体が真二つに折れたため、
船首と船尾部分とは数百メートルも離れて沈んでいます。
その周辺には、タイタニックの燃料用に使われた石炭が、
黒くこんもりとした山のようになって
一面に散乱しています。

ミール号のまばゆいばかりのライトに照らさて、
タイタニック号の船上から
海底に15メートルも埋まっている船首部分まで、
バス博士の眼ではっきりと見ることができたといいます。

さて、つづきは、次回をお楽しみに!

井上 たかひこ

2005-04-03-SUN

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