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青木さんの建築事務所は、
目のとどく範囲の小集団ですよね。
それだと、「品質保証」は、
自分でやらないとダメですよねぇ。 |
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はい。
自分の手のとどく範囲でやるから、
おおきな組織とは
ちがうことができるんですもんね。 |
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小集団だと、
「一生懸命」の表現の出しあいにもなるし、
くだらない徹夜も、しちゃうものだし…… |
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かといって、
大企業みたいに、何時から何時まで、
と決めるのもウソだし……。 |
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フランスに出張する前、
いそがしかったんです。
だから、
ぼくが外国に出てしまうと、
会社は、どうなるんだろう?
と心配していたら……帰ってみたら、
問題、なにも起きていないんですよ。
帰ってきた日は、
机にすわっても、やることないんですよ。 |
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(笑)いいですねぇ。
「もしかしたら、オレって
必要ないのかもしれない」
と、心配になるぐらいの組織が、
ほんとは、いちばん、いいんでしょうね。 |
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ええ。
小集団で仕事をしていれば、
毎日のように
トラブルや事件が
起きてくるじゃないですか。 |
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そのときに
「このことはこうしよう」
と、対応できるだけの
余裕のある自分でないとダメですし。
いつも、「いっぱいいっぱい」だと
やっぱり、いけないんですよねぇ……。 |
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そうですねぇ……
なんかこの会話は、最後は
中小企業の懇談会みたいに
なってきましたけど、
青木さんも、ぼくも、
「経営が、いちばんむずかしいことだ」
という意識が、たぶん、
自分のなかに、あるんでしょうね。 |
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ええ。
自分の事務所を
つくったはじめのころには、
ジレンマがありました。
「いい仕事をしないと、
いいスタッフが来てくれない」
「しかし、
いいスタッフがいないと
いい仕事はできない」
どうすればいいんだろう?
解きようがない矛盾だな、と思いましたから。 |
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それ、わかるなぁ!
品質管理のことばかりがアタマにあると、
新卒を、とりようがないんですもんね。
だけど、新卒が仕事をしてゆくあいだに、
ノウハウが、鍛えられていくのでしょう。
……ということを考えると、
最初から新卒しかとっていない
青木さんのところは、
進化したところからはじまったのでしょうね。 |
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はい。
新卒じゃない人が来たことは
ほとんどないです。
新卒じゃない人だと、二段階、
必要になっちゃうんですよね……。
ある経験があるから、
その経験を一回消去してもらわないといけない。
そうしないと、その人なりの
凝り固まった仕事の進めかたになりますからね。
創造的な仕事でなければ
経験は便利なのでしょうけど、ぼくの場合は、
消去してもらわないと仕事になりませんから。
でも、消去、したがりませんからね。
だから、やっぱり、新卒のほうがいいですよ。 |
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建築の学科の出身者がはいる会社だから、
新卒の人たちの「建築のための言語体系」は、
ある程度、学校で鍛えられているんですか? |
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いえいえ、それはぜんぜん鍛えられていません。
「学校でうまくいかなかったし、
先生からは『ちがうだろう』と言われて、
やろうとしていたことが、できなかった』
とか、そういう不器用なヤツって、
いるじゃないですか。
そういう人しか採用できませんし、
そういう人が好きですから、
ぼくは、そういう人を採るんです。
そういう人の、本来、
やりたかったことを伸ばしてあげたら、
ものすごい成長するのが、おもしろいんです。
ただ、だんだん、
器用な人がはいってくるようになると、
おもしろみは、減るんですけどね。 |
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もう、今じゃ、
青木さんの事務所にはいるというのは、
「有名な事務所にはいること」ですから、
エリートが来てしましますよね。 |
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それが問題なんです。
「三月に卒業しますから、
四月からつとめたいんですけど……」
最近、わかってきたのは、
こういうふうに言ってくるかたは、
「将来を考える余裕のある人」なんですよね。
むしろ、四月か五月ぐらいになってから、
「このまえ、学校が終わったんですけど、
仕事をしたいんです」
と言ってくるという……これはスゴイですよ。
学校が終わるまで、
次のことを、考えていなかったんですから。
そういう人に、はいってほしいんです。
そういう子で、
おもしろいことをやっている人、いますから。
今までの、いろいろなスタッフを見ていても、
正直に言いまして、
「学生時代から建築設計のうまいヤツ」
なんて、ほとんどいないんです。
むしろ、写真を撮るのが好きで
こういう写真を撮っていましたとか、
地図を見るのが好きで、
こういうおもしろい地図を見つけたとか、
建築とぜんぜんちがうところで
「コイツはおもしろい!」と言って
採用しているのが、実情なんですね。
つまり、
学校時代に自分の興味を失わずに済んだ、
という力を、評価したいんです。 |
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なるほどなぁ……。
採用した新卒たちは、四年間で去る。
勇気を持って、そのルールを
守ってきた青木さんが、すごいですね。 |
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それは、悩むときもありますよ。
学部の四年生を採るのをやめて、
経験のある人も採ろうかな、と考えたり……。
でも、どこかで、思いとどまる。
それから、
一年経って、二年経って、となると、
「やっぱり、方針をかえないでよかったなぁ」
と思うことが、多いんです。 |
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そうなんだろうなぁ!
いやぁ、話していて、
ものすごくおもしろかったです。
どうもありがとうございました。 |
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こちらこそ、とてもたのしかったです。
ありがとうございました。 |
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今度、また、
こういう対談の第二弾、やりませんか? |
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(青木淳さんと糸井重里による建築の対談は、
いったん、こんなふうに、おわりました。
読んでいただいてありがとうございました!
またの登場を、たのしみにしていてくださいね。
postman@1101.com
対談の感想などは、ぜひこちらに、件名を
「青木さん」として、おおくりくださいませ!)
2006-06-13-TUE |