有吉が、 窓から風を 入れましょう。 有吉弘行+糸井重里

第5回 ほとんどが休み。
糸井 柔道ネタで番組に出ていた頃は、
「食えてないけど、出る機会はゼロじゃない」
という状態だったんですね?
有吉 はい。それが、
ずーっと、ずーっと、続きました。
糸井 それは「ひまでしょうがない」ということが
まず、ありますよね?
有吉 ほんとうにひまでしたね。
仕事は、週に‥‥あ、いや、月に、
3本ぐらいでした。
だから、ほとんどが休みです。
糸井 営業とかは?
有吉 ぼく、営業がほんっっっとに苦手で、
人前が大っきらいで。
糸井 ‥‥ははははは。
有吉 お客さんのダイレクトな反応が
怖いんですよ。
糸井 うん、うん。
有吉 だから、営業は絶対やらないから、と
スタッフの人に伝えていました。
糸井 それで、事務所の人たちは、
「いいよ」って言ったの?
有吉 はい。
だいいち、ヘタなんですよ。
だから。
糸井 自信があるんだ(笑)。
有吉 客いじりがヘタなことには
自信があります(笑)。
やっぱり、お客さんに
「イヤだな」という気持ちが
伝わっちゃうみたいです。
ぼくの所属している太田プロには、
伝統的に営業のテクニックがあるし、
それはもちろん教えてもらえます。
どんな人でもこうすれば確実に笑いを取れる‥‥
だけど、それさえできないんです、ぼくは。
糸井 へぇえ。
有吉 そういうわけで、営業も行かず、
まったく仕事がなかったので、
ほんとうにおかしくなっちゃってました。
毎日、テレビ観て、ラジオ聞いて、
パソコン開いて、ゲームやってました。
糸井 そうやって時間をつぶしてるときは、
たのしいんですか?
苦しいんですか?
有吉 気持ちはすごくもやもやしてるんですけど、
ぼくはどうやら努力家ではないらしく、
どんな境遇でも
けっこう快適になって、慣れちゃうんですよ。
糸井 うん、うん。
有吉 たまに仕事に呼ばれたかと思うと、
「あの人はいま」とか、
ネガティブな仕事ばっかりでした。
糸井 なるほどねぇ(笑)。
有吉 仕事が来たのはうれしいんですが、
そういう番組の収録に行くと、
嫌だな、と思っちゃいました。
糸井 ああいう番組って、
みんな嫌じゃない顔をしてますけど、
やっぱり出るのは嫌ですよね。
有吉 嫌です。
そうじゃない番組でも「一発屋」とか呼ばれて
ちょっとはネガティブなんですが、
それはぜんぜん嫌じゃない。
挽回のチャンスがありますからね。
だけど、ほんとうの
過去の人として呼ばれたときは、
苦労話をして、
同情されて終わりでしたから、
すごくつらかったです。
糸井 歌手の人もよく出演されますが、
お笑いの人はきついですよね。
「案外いいやつだったんだ」
とか言われたら、
かなわないですよね。
有吉 はい(笑)。
結局、「あの人はいま」のような番組は
10回近く出ました。
糸井 はははは。
有吉 「レギュラー」って言われてたんですよ。
糸井 すごいな(笑)。
上島さんと知り合う前も、
その時期はあったんですよね?
有吉 はい。「前」もありました。
糸井 そのときは、暗かったんでしょうね。
有吉 もう、絶望です。
糸井 (笑)
有吉 救いがなくて、
ホントに、どうしようもない時期でした。

(続きます)

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2009-11-13-FRI