糸井 |
で、みなさんが「殺せーっ」って言って集まる(笑)。
“シロクロショー”だね。 |
綾戸 |
そう。
“まな板ショー”。
まな板のエッチじゃなく、まな板の鯛になるの(笑)。
捌かれてるの。 |
糸井 |
だから、オレ裸商売の人に
ものすごく共感するのよ、実は。
ただ、そこまでするか、ってだけのことなのよ。
だけど、そこまでの“そこ”がわからないのよ、実は。
だったら、キスシーンを撮ってる人が、
キスはよくって、セックスはいけない。
あれ誰がどう決めるんだろう?
で、そこんところは演技じゃないっていうけど、
キスのときだって演技でしょう? |
綾戸 |
中には、下はいいけど、上はヤダって人も
いるかもしれないよー。 |
糸井 |
それねえ、考えちゃうと、
決めちゃった人の強さっていうかねえ、
弱さか強さかわかんないもの? |
綾戸 |
それと怖さがある。 |
糸井 |
決めちゃっただけなんだよねえ。 |
綾戸 |
そう。
その人の今までの人生が決めちゃったの。
みんな違う生き方してきたのに、やんなっちゃう。 |
糸井 |
犯罪なんかに近いっていうのは
わかるよぉ。 |
綾戸 |
だからねえ、ゲロを出した1位じゃなく、
きたないで賞の1位でなく、
ふっと手が出た4位の人ね、
吐いたゲロ食べちゃった人、
それがいっちばんきたないよー。
リアリティだよ、これ。(笑) |
糸井 |
自分じゃないものなんだろうなあ。 |
綾戸 |
そうなのー。
先は汚いで徹しましょう、
ってそんなもんじゃないのよね。
ついつい手が出ちゃったのよ。 |
糸井 |
頭で考えたわけではないんだろうねえ。 |
綾戸 |
食ったあと、まずかったと思ったはずだよー。
(爆笑)
えらいことしたーって。
1番っていうのになっちゃったよ、って感じ。 |
糸井 |
それをさー、年間毎日毎日やってるんだから・・・
汽車に乗ったり、飛行機に乗ったり行くんだよなあ。 |
綾戸 |
だから、きゅうりの輪切りしてるのが
ワタシの余暇なの。
それがしあわせ。 |
糸井 |
やなことかって言ったら、やなことだし、
いいことかって言ったら、いいことだし、
そんなもんわかんないよっ。 |
綾戸 |
地球ってあるじゃない?
こっち昼のとき、あっちは夜でしょ?
だから、自分の人生地球なの。
こっから見ると、綾戸光輝いて
昼のときもあるんだけど、
ちょっと時間経つと、夜になっちゃう。
で、落ち込んでると、今度昼になっちゃったりね。
ワタシは動いてないの。 |
糸井 |
食あたりみたく、
人あたりみたいなのして、ガクってすることない? |
綾戸 |
あります! |
糸井 |
あるよねえ。
絶えず誰かが自分のことを想ってるっていう、
恋してる相手ならいいけど・・・ |
綾戸 |
何も知らない人が想ってる。
怖いときある。 |
糸井 |
それ、あるよねえ。 |
|
綾戸 |
あのねえ、変な話なんだけど、
これは怖くはないんだけど、
ある新幹線に乗ったとき、
ワタシはもう、入った瞬間に
森進一さんってすぐわかったの。
でも、声かけたらしんどいじゃない。
彼だって仕事終ったところなんだから。
同業者だから、わかるから。
森進一だってわかったけど、
黙って隣りに座ってたの。
でも、向うがチラチラこっちを見るのよ。
まさかワタシのことなんて、知ってると思わないから、
黙って座ってたら、
「あのー、綾戸智絵さんですよねえ?」
って同じような声(ハスキーボイス)で、
ワタシに言うのね。(笑)
ワタシもう、うれしくってうれしくってしかたないから、
まず最初に言った言葉が、
「ハイ!ワタシの方は、もう、
森進一さんってすぐわかったんですけど、
お疲れでしょうから、言わなかったんですう」
って、もうカバーしてるの。
森さんあなたのこと知ってますよ、と。
ワタシの方から声かけなくて恐縮です、
っていう気持ちが出ちゃったの、黙っとけばいいのに。
誰かが知ってるっていうことに脅威なの。
あの森進一が知ってるのー? って。 |
糸井 |
寝てる間も誰かが綾戸を想ってるわけじゃない。
時には悪意だってあるわけじゃない。 |
綾戸 |
ある。
アイツさえ死ねば私がー
っていうヤツもいるかもしれない。 |
糸井 |
あの言葉はないわよねえ、っていう
さえずりのようなものもあるし。 |
綾戸 |
あの人とだったら僕は死んでもいい、とか
いろいろあるかもしれないしね。
こわい〜〜〜。 |
糸井 |
オレはねえ、今はなくなったんだけどねえ、
結婚してからなくなったかなあ。
(結婚するまでは)5年に1ぺんくらい泣いてたのよ。
寝泣き。おねしょみたいに。
夢を見て、もう意味のわかんない泣き方してたの。
たぶん、あれはあれでたまってて
で、ダーッて泣くとうれしくなるの。
“もういいや”になって。 |
綾戸 |
スカーッとするわけよね。 |
糸井 |
で、そばに人がいるって思うと、楽になれて。
綾戸さんももうすぐその気分になるよ。
いいよ、人がいるの。
子どもがいるのもいいけど、
子どもにはそれって言っちゃ悪いのよ。 |
綾戸 |
やっぱりね、(子どもには)言えないよね。 |
糸井 |
そんときに、「ばっかじゃない」でも何でもいいのよ。
それできるよ、きっと。 |
綾戸 |
いいね。
そういうのを待ちたい。(笑)
(つづく) |