第12回 ふつうのオバサンでいる日。


糸井 最近、オレね、ホームなのよ、考えが。
ホームがあって、ふだんは軍隊じゃない?
ほとんど軍隊で、
「殺せーっ」っていうところに出ていくわけじゃない。
たとえば金魚でいえば、岩陰があるじゃない。
あの岩がホームだと思うのよ。
あれがないとねえ。
独身じゃ生きていけないよ。
綾戸 ほんとねえ、ワタシもそう思う。
糸井 こうなっちゃったら、もう独身じゃ生きていけない。
だから独身で生きてる人って、
きっと誰かいるか、つらいか、どっちかだと思う。
極端に言うと、仲悪くてもいい。
仲悪くても、まあこれしかないなあ、っていうのでも
ホームになるんですよねえ。
綾戸 ああ、あるねえ。
糸井 それは、親でもないし、子どもでもないんですよ。
他人の方がいいんですよ。
綾戸 いいねえ。
ウンコ行けるかなあ(笑)。
糸井 もう行ける。
行けなかったっていう反省っていうか、
材料があるから、
逆に「うぉー行ける」って喜んで
行きまくるかもよ。
綾戸 しかも、反動が出ちゃったりしてね、
“ぶりぶりっ。ごめんなさい”、とか言ってね。(笑)
いやあ、それはあるかもしれないね。
糸井 変わると思うなあ。
綾戸 大親友の女友達が、
よみうりランドでやるから来て、って電話したら、
「えらくなっていくよなあ、
 さみしくなっていくよなあ、
 複雑なんだけど、でも家族で行くよ」と言ってくれて。
そのときに
「何なの?その複雑な気持ちって」って聞いたら、
「いや、うれしいんだけど、遠くに行っちゃう」
「ワタシ行ってないんだけど・・・」
「いや、綾戸は行かないのよ。
 でもみんなが連れてっちゃうのよ」
ちょっとずつその意味がわかってきた。
糸井 でもそれはね、単純なのよ。
時間がなくなるだけなの。
どうしても限られた時間で、
その友達と朝まで遊ぼうか、
って言えなくなるのよ。
綾戸 言えない、言えない。
もう、“ドタキャンの綾戸”って言われてるもん。
糸井 昔は、朝まで遊ぼうか、
って決めなくてよかったのよ。
そこだけが変わるの。
いやあ、懐かしいなあ、で10分になっちゃう。
そこだけが変わるのよ。
綾戸 でもありがたいことに、
ジャズなんで、そんなに有名じゃないっすから、
楽は楽よ。
糸井 でも、今で十分なくなってるよ、時間は。
綾戸 でも、森進一さんのことを思ったら、
楽だわぁ。
森さんかわいそうだったー。
新幹線乗っててさー、
新幹線の外から、
(ファンに窓を)ドンドンドンって叩かれて、
「キャー」って言われちゃって。
糸井 もっといったら、スマップですよ。
平気な顔をするしかない。
平気な顔しているうちに、
平気になっちゃったりする可能性があって、
それが怖いでしょ?
つまり、誰かが自分のことを
しゃべってるっていうのを
気にしててもキリがないから、
気にしないようにするでしょ。
でも、気にしないって人間としては異常ですよね。
だってみんなが、コソコソコソ・・・って
話してるのを聞こえなくするわけじゃない。
それ、もう人間として人体変わってるよねえ。
それをやっちゃったら、
人として変わってるわけですよ。
取り戻す場所をどこに持ってくか。
綾戸 スマップはそんなに悩んでるの?
糸井 いや、悩んじゃいないと思いますよ。
もっと上手に、慣れてればできるんだろうけど、
すごいことをやってると思うんですよ。
綾戸さんだって、
「あっ、綾戸智絵だっ」って言って、
走って振り向きざまに顔見て
戻ってくヤツいるでしょ?
綾戸 いる、いる。
糸井 あれやられたとき、ふつうだったら腹立つのよ。
なんでそんなことしなきゃいけないの、
って日もあるのよ、ふつうの人なら。
おばさんなら、「何よっ」って思うじゃない。
でも、「いいんだ」って思うところで、
もう世界が変わっちゃってんだよね。
それはねえ、どうしたらいいのかわからないもので、
きっと夢に見るしかないんだよ。
綾戸 ワタシねえ、1コだけありがたいなあ、って思うのは
親からもらったこの性格。
「ありがとうございます、ありがとうございます。
 みなさん恐れ入ります。
 今日は母と2人で買い物に来てるもんで
 失礼しますっ。どうも〜」って言えるの。
だから、これは楽だなあ、って思うときがあって、
「サインはしたいんですけど、
 そこまで有名じゃないし、
 うちのばばを連れてますんで、
 失礼しますー」って帰るの。
糸井 そりゃ、得だねえ。
綾戸 「今日はおばはんでございまして、
 七色仮面は今日はおばはんで去っていきます、
 さよ〜なら〜〜」とか言って、
帰ってくの、銀座で(笑)。
糸井 引出しがあるんだー(笑)。
綾戸 銀座の三越の前で、
「さよ〜なら〜〜、みなさん、さよ〜なら〜〜」
とか言って行くの(笑)。
そうすると、
「わぁー、すてきーー」とか言ってくれるの(笑)。
糸井 鶴瓶みたいだね。(笑)
綾戸 そう、鶴瓶だよ。
だからね、ワタシはね、上手にね、
コントロールっていうのかなあ、
動かすんじゃなくて、
自分もね、そして人もね、大事にしていこうと思うと、
性格をコントロールしないとね。

(つづく)


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2000-07-09-SUN

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