番外編
『夢海子の親父は2.5トン』
まだ寒い日が続く3月のある日、
darlinさんがオイラ(JARO)に新聞の切り抜きを
持ってきてくれました。
空爆とかユーロ人気いまいちとか、そんな類ではなく、
見出しはズバリ
“三重のアザラシ夢海子 アカンベー初披露”。
それを見ただけで「行って来い」ということだと、
すぐに察しがつきました。
記事によるとどうやら、アカンベーアザラシの
夢海子(ゆみこ)ちゃんが春休みに合わせて、
東京のサンシャイン国際水族館に来るらしいのです。
「東京で初披露」ということは足立区在住のオイラは
当然見たことがないわけです。
日取りを決めて、すぐに行くことにしました。
時を同じくして、偶然にもアザラシのお姉さんから
面白いメールが届きました。
時期が時期だけに、いろいろと頭のなかで
想像と期待に胸ふくらませながらお返事を書いたら、
またそのお返事がきました。
そうこうしているうちに、春休みが来て、
お姉さんのメールはほぼ日の人気連載になってました。
3月はまさにアザラシ月間でした。
さて、アザラシ月間の最後を飾るべく、
オイラは末日に取材のアポを取りました。
心はアッカンベー夢海子とバイカル3姉妹でいっぱい。
早く本物に会いたくてウズウズしています。
おてんばで愛らしいアザラシ3姉妹は、バイカルアザラシ。
しぐさ、ひとつひとつが可愛いですよね。
いっぽうのアッカンベー夢海子はミナミゾウアザラシ。
種類こそ違うけれど、お茶目な芸をするからには
間違いなく可愛い、と信じて疑わなかったんです。
実際、彼女を目の前にするまでは・・・。
当日、東京は朝から大雨。
初顔合わせにしてはあまりよくない空もようです。
オイラはその雨のなかをサンシャイン60ではなく、
隣接されているサンシャインシティ・
ワールドインポートマートの最上階を目指しました。
サンシャインといえば昔、リュウグウノツカイを
見に来たおぼえがあります。ごぶさたしておりました。
「アッカンベー」。
この巨体に「こっち向いて!」とは
とても頼めませんでした |
エレベータの前は、すでに家族連れとカップルで
あふれかえっていました。
さっそく、受付けで担当者の方を呼んでもらいます。
「山田か天海(てんかい)を訪ねてきてください」。
アポをとったとき、電話口のお兄さんはそう言いました。
それを思い出し、オイラは
「ヤマナカテンカイ様をお願いします」と言いました。
「山田ではなく、ヤマナカですか?」
「はい、お願いします」。
そんな押し問答が続き、結局、山田さんにも天海さんにも
なかなか会えず、10分のロス。
かなり焦りながら夢海子コーナーを目指します。
さい先わるいなあ。
なおも、不運は続きます。
夢海子ちゃんをはじめ、ペンギンや
ゴマフアザラシのコーナーは、屋根がありませんでした。
お客も夢海子ちゃんも雨ざらしなんです。
雨は激しさを増し、お客さんの集まりも悪い。
うーん、アッカンベーはやはり、よりいい状態で見たい。
お客さんでいっぱいのところを写真に収めたい。
いろんな思いがオイラのなかで渦巻き始めました。
その矢先、スタッフの方たちが
「午後になれば、雨も少しは上がるでしょう。
それまで館内をご覧になっていたらどうです?」
とうれしい言葉をかけてくれました。
かすかな希望がオイラの胸に湧きました。
一番前は、子どもたちの天下です。
期間中、ずっとこんな状態が続くとか
(4月11日まで) |
館内は人いきれで暑いです。
が、ラッコやイルカ、幻の魚イトウを見ているうちに
心がなごんでいきました。
しばらく館内を回っていると、
なんと、バイカルアザラシを発見しました!
はあ、まさかこんな所で会うなんて。
うわー、立ち泳ぎをしてますぜー。
体長は1mほどでとってもキュート。
水面に顔を出したり潜ったり、とってもせわしない。
あー、はなさんがうらやましいと同時に
面倒みるのは大変そうだと思いました。
屋内の水槽に丸まると太ったニジマスが!
しかも海水!!
専門の方に聞いたところ、
海水で養殖したり、飼っている施設が
他にもあるそうです |
これが、サンシャインにいる バイカルアザラシだ。
小さくて、キュート |
やがて約束の13時。
表に出ると、あんなに激しかった雨はやみ、
ショー開始の15分前だというのに、
すごい人だかりができています。
子どもたちの嬌声、お母さんたちの場所の奪い合い。
みーんな夢海子にく・ぎ・づ・け。
写真撮れるのかなあ?
オイラは心配になりつつも、水辺で遊ぶ夢海子を見ます。
で、でけえ。
あ、パンダイルカもいる!
ここではイロワケイルカと呼ばれています。
「俺はパンダじゃねえっ!!」って
イルカの意見を尊重したネーミングです |
さて、いよいよショーが始まりました。
コーナーの前では、鈴木知恵子おねえさんが、
ざっと夢海子のプロフィールを紹介します。
「体重300kg、体長・・・」。
なるほどなるほど。
「1日、アジ、またはサバを約9kg食べます」。
体が大きいからそれくらい食べるだろうな、
エンゲル係数が高そうだな、フムフム。
そのときでした。衝撃的な事実がお姉さんの口から
告げられたのです。
「夢海子のお父さんは、4m、2.5tありまーす」。
え、え??? 2.5t!? ということは2500kg!?
起こすだけで試験になるというナナハンのバイクが、
なんと10台分か。
Konishiki10人前?
あー、まさにアザラシの都庁ビルだ。
いよいよショーが始まりました。
アッカンベーをやるたびに、歓声が上がります。
いやはや、すごい人気ですね。
ショーが終わってからもなかなかお客さんは引かず、
記念撮影希望者は長蛇の列を作りました。
でもこれは、整理券を持った10組だけなんですよ、
残念ながら。
ですから夢海子ちゃんと撮影したいチビッコは、
なるべく早い回がねらいめですね。
そうそう、スタッフの方に聞いたところによると
夢海子ちゃんが来た当初は、
3組しかやらなかったそうです。
やはり、慣れない土地で大勢と撮影したら
まいっちまいますもんね。
さてさて、一般のお客さん10組に混じって
オイラも列の最後尾に並びました。
心臓がドキドキしてます。
以前つき合ってた人がユミコという名前だったなあ
なんて、いらぬことを思い出したりもします。
おとうさんが、2.5トンだったりして。
やっとオイラの番になりました。
「こ、こんにちはあ。えー、ジャ、ジャロといいます、
よろしく」。
「プハー。ブーーー。プハーーー。」
ゾウアザラシというだけあって、本当にでかい。
獣ってやつですね。
今度は浅井友理お姉さんが、
「ほーら、そんなにオコンないの!
いい子だねー、さあ、立ってみようか」
え、えー!! 怒ってるんですかあ!?
でもさすがですね、お姉さんがやさしくうながすと、
夢海子ちゃんは300kgの巨体をゆっくりと持ち上げて、
“アッカンベー”をしてくれました。
立つとすごい迫力です。恐い系の人みたいです。
「あー、彼女がベンツから降りてきたら恐いなあ」
なんて余計なことを考えながら(ゴメンなさい)、
デジカメのシャッターを押しました。
普通のカメラと比べてデジカメは充電が遅いので、
気ばかり焦ります。
お願いだから、怒らないでね。
「ブフー、ブフー」。
あー、「肉食のにほひ」がします。
お姉さんと両手をつないでいる夢海子。
「タンゲダンペイみたいじゃん」。 by セイヒロー
左はショーの進行役を務める鈴木知恵子さん。
右は直接夢海子に指示を出す浅井友理さん。 |
アッカンベーはひとまず撮り終え、アングルを変えて
夢海子ちゃんが疲れない体勢で撮影することにしました。
「間近で見ると、けっこう可愛いですね、
愛嬌あって・・・」。
「ブフフーー、ブブフーーー」。
夢海子ちゃんに気を取られていると、不意にお姉さんが
「後ろのゴマフアザラシ気を付けてください!」
と叫びました。え、え???
振り返るとそこには、夢海子ちゃんよりも、
ふたまわりくら小さいゴマちゃんが、
オイラのオシリを見つめてました。
そんなに熱心に見つめてくれてありがとう……。
いやあ、それにしても、夢海子ちゃんは
本当に辛抱してくれましたよ。
スタッフの方々もありがとうございました。
ファインダーに収まらないほど大きい夢海子。
現在約300kg。お父さんは2.5t・・・ |
最後にスタッフの方々にお話をおうかがいしましたので
ご紹介したいと思います。
まず夢海子ちゃんは「甘えん坊で、おてんば」らしいです。
うーん、撮影中におてんばぶりを発揮されて、
どつかれたりしないでよかった、よかった。
また、「芸ってどれくらいで覚えるものなんですか?」
と聞いたところ
「両親がアッカンベーをするので、
生まれて数カ月で覚えました」。
はあ、親子2代か。芸能一家に生まれ育ったんだ。
お父さんの後をついだんだな。
現代には珍しい古風なやっちゃ。
三重県の二見シーパラダイスからトラックに乗せられて
はるばる300km離れた東京まで来た夢海子ちゃん。
「こんな短期間でアザラシを借りるのは、
初の試みなんです」
とスタッフの方が言うように、
並々ならぬ苦労もあったようです。
ちなみに、夢海子ちゃんは4月11日までいるそうです。
そうでした、危うく忘れるところでした。
あくまでも、夢海子のお父さんは2.5tです。
「あ! リュウグウノツカイだ」。
確か、小学生のころだったっけ、 これを見にきましたよ。
もうこんなに色が抜けちゃって・・・、
年月のうつろいを感じます |
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『サンシャイン国際水族館』
住所:東京都豊島区東池袋3-1-3
サンシャインシティー
ワールドインポートマート10F
電話:03-3989-3466
開館時間:月〜土曜10:00〜18:00
日・祝日10:00〜18:30
(入場は30分前まで)
入場料:大人1600円(高校生以上)
子ども800円(4歳以上中学生まで)
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