第52回
『みなさん、さようなら』(2/全2回)
『アザラシはどうなっちゃうのさ?エサは誰がやるの?』
と。生き物ですしね、ほんとーーーに手のかかる子どもを
育てているような気もちで私なりに大事に接してきました。
ほんとうにこれだけが心配で心配で
毎日、毎日、3姉妹にご飯をあげながら考えていました。
その頃から眠れないわ、変な夢ばっかり見るわでねえ。
まあ、普段あんまり考えてなかったから
ここぞとばかりにやってきた!! って感じの毎日でした。
んでこのころは、いろんな噂ばっかりで
本当にどれが正確な情報なのかもわからず、
そして上の人からも
“アザラシ飼育に関する資料をまとめろ”と。
でも、何のためにやらされてるのかも
はっきりとした答えは返ってはこないし、
でもやっぱり、まとめてるとなんとな〜くわかるじゃない?
よそにいっちゃうんじゃ・・・とかね。
そして、11月15日にこれからについてが発表されました。
それによると、12月15日でお仕事は終了。
アザラシたちの行くところも決定した、
ということでした。
それからもエサはあげてるし、
ボリも、クラも、マリもいつもどおりで、
この生活もあと少し、この子たちがいなくなるって実感は
全然わかなかったなあ。
搬出日が12月10日って決定しても
やっぱり実感はわかない日が続いて。
前日に飼育の人たちとみんなで
最後の水槽掃除で水抜いて
いっぱいアザラシたちと遊んであげてさ。
でも、搬出日の前日、受け入れ先の飼育の人に引き継ぎと
渡す物とかをそろえてたら涙が出てきました。
ほんとうに明日になったらいなくなっちゃうんだって。
名前を呼んでひょこってボリが水面から出て来たり、
クラが上手にフラフープで遊んだり、
ようやくマリも手渡しでエサ食べるようになったのにとか、
岩場の掃除してるときに寄って来てじゃましたりとか、
日常的だったことが明日からは非日常になってしまう。
そして持たせてあげる嫁入り道具が、
今まで使っていたエサ用ボールとフラフープ、
これしかなかったこと。
「ほんとに、ビンボーだ・・・。嫁入りなのに」。
今度は泣けたね。
そして、10日の朝、受け入れ先の人が来て
帆布(はんぷ)でできた布でクラから出して、
木箱に入れて。
もう、大泣きしました。
この子たちが来たときも木箱に入れられてて、
ほんとうだったらずっとここで生活するはずだったのに
また入れられて。
どれだけのストレスがかかるんだろうって。
申し訳ない気持ちで泣きながら、次にボリ。
ボリはいつもだったら威嚇とかするのに
じっと私を見たまんますんなり水槽から出されて。
2匹をトラックに積んでいるとき、時間が空いて
水槽内にマリだけになったので
「元気でね」と握手をし、無事搬出終了。
朝10時に旅だっていきました。
からっぽになった水槽を一人で掃除しながらまた泣いて。
いっぱい泣いたなあ、ほんとに。
その後、無事着いたって連絡とか、こういう状態ですとか
受け入れ先からもしっかり来ていて今は安心しています。
いい人たちばっかりだし、今度は専門の獣医さんもいる。
水槽も少し広くなったみたいだし・・・。
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