井上 |
ポールが書いたその手紙は、
自分たちビートルズが
いかに素敵なバンドかっていう
紹介文なんだけど。
レコード会社に手紙を書くとかって、
普通は事務所の人間がやるようなことだよね。
その文章を高校生の頃に見て、
そんときちょっと素敵だなって思ったの。 |
糸井 |
うんうん。
とてもよくわかる、その気持ち。 |
井上 |
その影響も大きいのかもしれないね。 |
糸井 |
小さなことにも思えるけど、
それかもしれない!(笑) |
井上 |
それでねえ、その影響かもわからないけど、
自分のデビュー曲をテープレコーダーで録って、
九州の深夜放送の番組のディレクターに会って、
「これ……かけてもらえませんかぁ」
ってお願いして……。
そんときは帰ったんだけど、
受験で浪人してる友だちがたくさんいたから、
ハガキをその友だちたちに配って、
「僕の曲リクエストしてもらえないかねぇ……」
って注文したりして。
そんなことがあったんだけど、
ポール・マッカートニーの影響だったのかもしれない。 |
糸井 |
まだ18(歳)くらいの話だよね。 |
井上 |
うん。
18、19(歳)だね。 |
糸井 |
それは、イヤでやってるのではなく、
好きでさえあったのですか? |
井上 |
“大人ぶりたい”、というかさぁ、
あの……、
“きれいごとじゃないんだ、ぶりたい”
みたいな。 |
糸井 |
おおおおー。
わかるーっ!(笑) |
井上 |
…………わかる?
「表もあれば裏もある」みたいなことを
俺はわかってんだ、という。 |
糸井 |
「俺の見えるところだけお前ら見るなよ」と。 |
井上 |
なんかさぁ……、
「サウンド・オブ・ミュージック」なんて、
ジュリー・アンドリュースだっけ?
そういう映画あったじゃない。
まあ“夢よ蝶よ花よ”だけど、
まあそういうのに対して「冗談じゃないよ……」
みたいなところが、早くもあったようなねえ。 |
糸井 |
反発してたのね(笑)。 |
井上 |
(笑)早くも反発があったのね……。 |
糸井 |
反抗期にいったん、そうなっちゃって
それからずっと、そっちの方向に行っちゃったという人
いますよねえ? |
井上 |
ああ、いますねえ。 |
糸井 |
それはそれで、さびしいですよね(笑)。 |
井上 |
……そればかりだとね。 |
糸井 |
「冗談じゃねえ」だけ?(笑) |
井上 |
ま、それはある種の
“BAD”のスタート……というか。 |
糸井 |
ポールとジュリーのおかげなんだ(笑)。 |
井上 |
……ジュリー・アンドリュースのおかげは
ちょっとあったねえ。 |
糸井 |
その裏方さんにあたる部分というか動きっていうのは
当時あまり見えてこなかったよね?
ビートルズがタバコを吸ってる写真が出ちゃって、
当時すごい問題になったのを
俺いまでも覚えてて、
「えっ、ビートルズはロックじゃなかったのか!?」
(そんなことが何で問題になるんだよ?)
って、すごいびっくりしたのよ。 |
井上 |
そんなこともあったねえ。
ポールは一応、そんな甘い状態で
お客さんもそれなりにいて。 |
糸井 |
“貴公子”なんて呼ばれてたんもねえ。 |
井上 |
そもそもさ……あの……、
ブライアン・エプスタインっていうマネージャーがね、
もう少し小奇麗にして、スーツ着せて、
ビートルズをああいう状態にしたらしいんだけどね。
まあ、それでも当時の僕らにしたら、
すごい状態だったよね。 |
糸井 |
十分不良でしたよね。 |
井上 |
その前っていうのは、
それこそ、コテコテの……皮ジャンみたいな感じで、
それを小奇麗にして
結果的には大ヒットしたわけだから……。
……まぁ、皮ジャンのままだったら
もっと大ヒットしたかもわからないけれど、
でも常識的に考えれば、
小奇麗にするやり方でよかったんだろうねえ。
多くの女の子たちが、
音楽的にもビジュアル的にも騒ぐようにするためには、
普通いろいろ考えるわね。
まあ、そこで大人の知恵っていうものが、
ある程度活用されてるんだよね。 |
糸井 |
総合力みたいなものだ。 |
井上 |
まあねえ。
そこはまた……何とも言えないんだけどね。
なんか、その……ロックだ、アーティストだ、
ってそんなことばっかり言ってる人たちに対して
「ちょっとどうなのかなぁ……」
っていう思いがあるわけですよね(笑)。
“BAD”というテーマと、どういう関係があるのか
……よくわかりませんが。 |
糸井 |
ちょっと、あなた!
むしろ逆の話をしてるとさえ言えますよ(笑)。
だから、たとえばの話、
ビートルズがタバコを吸ったということで
外国のメディアがえらく騒いでいたときに、
もうすでにローリングストーンズは出てたんですよね。
で、ストーンズがタバコを吸っても
全然平気じゃないですか。
で、ストーンズは
ビートルズが「不良だ」って言われてた時期に、
「もうこの人たちには文句言わない」
っていうくらい、不良に見えたんですよ、僕には。
声の出し方から……、
「あれは本当のワルだ」って感じがして。
(つづく) |