糸井 |
僕がインターネットを仕事にしてない状態で、
携帯電話のメールがあったら、 バンバン使ってたかもね。
なにせ毎日やってることで、
良くも悪くも奴隷なわけですよ。
毎日やらなきゃならない仕事に関わる付随すること、
またそれに付随することで、
ある意味で、24時間がいっぱいになっちゃうんですよ。
で、まったくイヤなら、やめるんだけど、
それは金八先生みたいなところもあるわけで、
そのイヤさは、つらいけども、
俺が自分で選んだわけで、
全部を投げ出したいとは言わないんですよ。
すると、この対談の最初のほうで、
「初めて“忙しい”って言うようになった」と言ったのは、
そのあたりのこと、経験したことなかったの、俺。
……我慢、とか。 |
井上 |
……(笑)。 |
糸井 |
だから、なんだろう……今、修業中な感じなんです。 |
井上 |
あれ、難しいよね、本当に。 |
糸井 |
見城さんとかって、
全力でぶつかるもの同士のなかに、
火の玉が生まれて、みたいな、
つき合いの好きな人じゃないですか。 |
井上 |
身体と身体でぶつかっていく。 |
糸井 |
「内蔵と内蔵を擦りあわせる」って
見城さん言ったからね。 |
井上 |
「内蔵を見せあおうじゃないか!」
「裸を見せあおう!」 |
糸井 |
で、そういう人だから、
見城さんは、きっと俺のこと嫌いだろうなぁ、
って思いますよね。会う前は。
で、対談の収録が 夜中の2時くらいまでかかったんだけど、
見城さんは、朝6時の飛行機で北海道に行くと。
で、「あ!」と思いついた。
誠心誠意、収録のときにしゃべってるなかで、
「俺はいいかげんにやってる人に
思われるかもしれないけど、
実はこれから明日の更新の仕事をやるんですよ」 って、ちょっと自慢で言ったら、
すっごいうれしそうにしてた。 |
井上 |
え? |
糸井 |
つまり、「(糸井さんも)そういうヤツだったのか!」と。
夜中まで仕事がんばってるのか、と。
でも、そういうことが好きなわけじゃないんですよ。
僕は夜中の2時に別れた後で仕事をすることが
好きなんじゃなくて、それしかできないから、
そうしてるだけで……。
その部分で、俺を認めてくれと言うつもりはないけど、
俺のことをわかってくれる人の数が増えるんですよ。
ものすごく努力すると。
努力って強いんですよ、ジョーカーとして。 |
井上 |
なるほど。 |
糸井 |
しかも、単なる足踏みを毎日やってるんじゃなくて、
努力でしょ。
そうすると、やっぱり、疲れますね。
「俺たちに何があるんだ、努力以外に」
なんて言いますからね。 |
井上 |
でもねぇ、実感としてわかるんですよね。
まずいっていうか、ホントに小中学生の頃は、
「努力」なんて言われても、
「なーに言ってんの?」くらいのことだけど(笑)、
いや〜、やっぱりね。 |
糸井 |
でも、それが通じると思ってるってことは、
まだまだ俺たち若いですよね。
吉本隆明さんは、
「聞きやしないんだ」って言ってるもんね。
みんなに聞かせてあげたいような話を、
今しゃべったその直後に、
「どうせ若い人たちは聞きやしないんだから」って。 |
井上 |
僕らがそうだったように。 |
糸井 |
うん。
それをちゃんと正確に言えるってのは、
知性として高度だと思いますね。
俺、吉本隆明さんの境地まで行けないわ。
「俺の話、聞いてくれたらうれしいな」って思ってるわ。
……ダメね、そういうとこは。 |
(※テイクアウトの、お好み焼きが到着) |
糸井 |
おお、豪華!
こういうもの(お好み焼き)を心から豪華と言える暮らしを
もう、3年間やってますよ。 |
井上 |
でも、いつかに比べたら、天国みたいな。 |
糸井 |
その時のほうが、贅沢してたよ。 |
井上 |
あー、そう(笑)。
50年も生きるとね……。 |
糸井 |
橋本治って、会ったことある? |
井上 |
なーいけど、気になる人だよ。 |
糸井 |
あの人はいいよぉ。
僕は、いちばん男らしい人として彼を認識してます。
……お好み焼き、食おうか。
(おわり) |