糸井 |
憧れの人に会って、アガるというのは、
相手が自分をどう見てるかにもよりますよね。
武満徹さんと会うのは平気だったんですか? |
井上 |
武満さんは、そうねぇ……、
平気だったねえ。 |
糸井 |
おかしいなぁ。
僕から見たら、吉行さんよりも
武満さんの方がむずかしそうに見えますよ。 |
井上 |
武満さんは……なんか、
「わからない」同志で……。 |
糸井 |
ああ、そうか(笑)。 |
井上 |
……武満さんもすごい顔してるねぇ。
「すごい顔」っていうのは、つまり、
なんて言うんだろうねぇ……。 |
糸井 |
キャラそのものですよねえ、あれが。
井上さんがアガる人って、他にはいないの?
吉行さんと阿佐田さんの2人が
やっぱり飛び抜けてるの? |
井上 |
でも、あれよ、それこそ、パフィーとかさ、
ああいう人がパッと来ると……アガる。
むかし、玉置浩二が
安全地帯でブイブイいわせてたときに、
彼に会っても……アガってた。
「まいったなぁ」みたいな(笑)。 |
糸井 |
“ブイブイいわせてる時期”って、
みんなありますね。
あのブイブイなものって、なんなんでしょうね?
「ブイブイパワー」……ある!(笑)
パフィーがデビューする前に、
僕、彼女たちに紹介されてるんですよ。
そのときは「顔、似てるねー」なんて
普通にしゃべってたんだよ。
で、そのずっと後、奥田民生くんの楽屋で
パフィーが“鞠つき”してたことがあって、
前に話したことあるはずなんだけど、
なんか、ちょっと遠くを歩いたもん、俺。
もう、そのときは“ブイブイ”だったんですよ、
「黒のパンダ」とか言いながら……、
あっ「白のパンダ」か(笑)。 |
井上 |
「今、すごく派手に世の中に出てる」という人だと、
ま、ちょっと敬遠したい、って感じはあるのね。 |
糸井 |
「冷めるのを待ってから」みたい気持ちあるよね。
「今は、熱いから」って。 |
井上 |
……病気なんだから、って。
「今、アナタは熱に冒されてるから、
ちょっと冷まして」と(笑)。 |
糸井 |
木村拓哉くんがそうですよ。
彼の楽屋に行った歴史があったとして、
1回ずつ全部ちがいますよね。
階段の上にいますよね。 |
井上 |
あの人……なーんか、
ブイブイ状態の時間が長いけどさ、
たまたま、8チャンネルの27時間テレビで、
奥田民生と唄ってるのを見てね、
この人もずいぶん長い間さ、
ブイブイ状態が続いてるわけだよね。
ま、なんて言うんだろ、
本人もそれなりに、まっとうなものもあるだろう……、
けども、こう長い間ブイブイが続いてるとさ、
そのまっとうなところを無くさないように、というか、
必死に歯をくいしばって、まっとうでいよう、というか、
……なんとも言えない顔になってる、
なんとも言えないというのが
本当にぴったりなんだけど……。 |
糸井 |
すごく意識的に
「よいしょ!」ってスイッチ替えないと、
戻るのむずかしそうに見えますよね。
ただ、あの子はブイブイの時に、
「自分はブイブイではない」と思ってたんですよ。
「自分はブイブイじゃないっスから」の状態で、
けっこう長く暮らしてたんですよ。
で、あそこで積んだ練習みたいなものが、
今になって活きてますよね。 |
井上 |
けっこう、タフになってるのかな? |
糸井 |
タフですよ。
僕が鼠穴に引っ越しする寸前くらいの時だから、
十分ブイブイのときに、
前の青山の事務所にフラっと遊びにくるときに、
近くのハンバーガー屋で、10コくらいさ、
「みんなも食うと思って」みたいな買い物して、
そのまま僕の事務所に寄る、みたいなことを
してましたから。
そういうことをやった方がいいという
イデオロギーがあるんですよ、あの人。
でも、しんどいだろうねえ、
耐えるの辛いだろうねえ、本当は。
そのタフさを持ってるだけで、
さっき話がでた、花礼二じゃないけど、
一本すごい鋼があるよねえ。 |
井上 |
うん、すごい。 |
糸井 |
できないよ。
で、やっぱり、波はあるんでしょうね、きっと。
でも、カメラ回ったら、
そっちのモードにカチーン!と行けるところが、
やっぱり才能でしょう。
本当にすごい才能だと思うよ。
でも、奥田民生くんもすごいじゃないの。 |
井上 |
うん。すごい。
彼はもう、天然系だから。 |
糸井 |
奥田民生くんが井上さんと一緒に音楽やってたときは、
ただ一人の後輩としていたでしょ?
(つづく) |