YOSUI
井上陽水・
ゴールデンバッド対談。

井上陽水のB面は、一筋縄ではいかないぞ。

第12回 ジョンとポールに憧れたからね



糸井 「ほぼ日」でやった対談のなかで、
ホストの零士さんとの対談があるんですけど、
「なによりも強いのは、思い込みです」
という話をされたんですよ。
あれは、やられた。
やっぱ、思い込まないとオーラが出ないらしい(笑)。
粗削りでもいいから「俺はこうなんだ!」って
思い込んでるヤツは強いらしいんだよ(笑)。
例に出たのは、全盛期のトシちゃんとか、
最近の郷ひろみとか。
やっぱり、思い込みの力はすごいんですよ。

でも、僕らは作り物だから、いろいろ工夫して(笑)、
あーでもない、こーでもない、ここは話術で、とか、
テクが山ほどあって、それを順番に出して……、
とか思うわけじゃないですか。
で、ホストの零士さんが言うには、
「放っておいてもモテる」思い込み型の人たちとは、
戦っても通用しないから、見ないことにするんだって。
でも「いいなぁ」とは思うんだって(笑)。

それは、花礼二さんに対してもそうだしね。
たとえば、テレビ画面に山崎まさよしが出てきて、
特に何かをアピールするわけでもなく、
ジャーンてギター弾いて歌うと、
「つい見ちゃうんだよねぇ〜」(笑)。
敵なんだって、ホストの。
天然でなんにもしないのに、
なにかを連れていっちゃう人って、
ホストの敵なんだって(笑)。
で、井上陽水は両方もってますよね。
ずるーいさぁ、天然の部分と(笑)。
井上 なーにを言ってるの?
糸井 そうか!
井上さんは、ポールの遺言のようにして、
そのまま完成したんですね。両面。
放っておけば、わがままだし。
井上 AB型だし、ま、しょーがないんですよねぇ……。
ジョンとポールに憧れたからね。
糸井 初めからね(笑)。
井上 そう(笑)。
つまり、両極に憧れてるようなもので……。
だから、1人で2役みたいなものに、
どうしてもなっていく。
糸井 ジョンのさ……、この話、前にしたっけ?
昔の「ローリングストーン」ていう雑誌の表紙で、
オノ・ヨーコとジョンが横たわっているの。
井上 ああ、あったね。
糸井 ジョンが胎児のようなかっこうして、
オノ・ヨーコに寄り添っているという、
あそこに行くまでの人生でしょ、
ジョン・レノンって。
つまり、さっき話した
生まれた時の「オギャー!」が復讐の叫びだとしたら、
「もどれましたー!」って(笑)。
井上 ああ……そうだよね。
糸井 そういう物語ですよね。
で、戻ってから、主夫とかして曖昧に暮らしてたんだけど、
撃たれて死んで……、ある意味、成仏ですよね?
井上 うん……本当に、本当ですよ。
糸井 で、ポールは社会運動に行くじゃないですか。
井上 社会運動に行くわさぁ……。
糸井 嫁はいろいろなことになっちゃうし。
仕組みのほうに、仕組みのほうに、行きましたよね。
井上 あれ、貴族になりたいんだろうね。
もう貴族になってるのかな。
糸井 なりたいのかもね。
井上 “サー”とか言われてるの?
糸井 “サー”を持ってるんだよね。
井上 糸井さーん、こんな時にアレなんだけどさ、
なんか食事頼める?
ちょっとこう……すいませんねぇ……。
糸井 俺もそう思った。
井上 ところでさぁ、(鼠穴にある額縁入りの書を指して)
「雨二モマケズ……」ってこの書、
これ、前からあったっけ?
……立派な。
糸井 いいでしょ。
井上有一さんという書家が書いたものなの。
死んじゃった人なんだけど、
テレビでインタビューに行ったんだけど、
結局僕がね、井上(有一)さんにとっては、
僕が唯一のインタビューになっちゃったらしい。
もう、亡くなってますからね。
井上 え、その人の書なの……。
これ、すごいねえ。
……そうだよねえ。
宮澤の賢ちゃん(宮澤賢治)が
こういうのを残してるわけないもんねえ……。
ところで、ここの事務所(鼠穴ビル)って、
引っ越してからもう2年くらいになるの?
糸井 えーとねぇ……、
おととし(1998年)の5月に移ってきたの。
井上 いいねぇ。
4階まであるの!?
糸井 うん。
4階は屋根裏部屋みたいなものだけど。
1階はほとんど倉庫みたいになっちゃって。
まあ、この場所(鼠穴ビル)がないと、
「ほぼ日」やっていけなかったですね。
民家っていいよ!
温泉じゃないけど、
サボってようが、仕事してようが、
区別つかないじゃないですか。
井上さん、儲けて作ってよ、
僕たちが住みやすい場所をさぁ。
井上 それは、ほかに、誰が……住むの?
クマさん(篠原勝之)とか?(笑)
糸井 誰でもいいよ(笑)。
そのときに決めればいいんだって。

(つづく)

2000-08-13-SUN

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