糸井 |
「ほぼ日」でやった対談のなかで、
ホストの零士さんとの対談があるんですけど、
「なによりも強いのは、思い込みです」
という話をされたんですよ。
あれは、やられた。
やっぱ、思い込まないとオーラが出ないらしい(笑)。
粗削りでもいいから「俺はこうなんだ!」って
思い込んでるヤツは強いらしいんだよ(笑)。
例に出たのは、全盛期のトシちゃんとか、
最近の郷ひろみとか。
やっぱり、思い込みの力はすごいんですよ。
でも、僕らは作り物だから、いろいろ工夫して(笑)、
あーでもない、こーでもない、ここは話術で、とか、
テクが山ほどあって、それを順番に出して……、
とか思うわけじゃないですか。
で、ホストの零士さんが言うには、
「放っておいてもモテる」思い込み型の人たちとは、
戦っても通用しないから、見ないことにするんだって。
でも「いいなぁ」とは思うんだって(笑)。
それは、花礼二さんに対してもそうだしね。
たとえば、テレビ画面に山崎まさよしが出てきて、
特に何かをアピールするわけでもなく、
ジャーンてギター弾いて歌うと、
「つい見ちゃうんだよねぇ〜」(笑)。
敵なんだって、ホストの。
天然でなんにもしないのに、
なにかを連れていっちゃう人って、
ホストの敵なんだって(笑)。
で、井上陽水は両方もってますよね。
ずるーいさぁ、天然の部分と(笑)。 |
井上 |
なーにを言ってるの? |
糸井 |
そうか!
井上さんは、ポールの遺言のようにして、
そのまま完成したんですね。両面。
放っておけば、わがままだし。 |
井上 |
AB型だし、ま、しょーがないんですよねぇ……。
ジョンとポールに憧れたからね。 |
糸井 |
初めからね(笑)。 |
井上 |
そう(笑)。
つまり、両極に憧れてるようなもので……。
だから、1人で2役みたいなものに、
どうしてもなっていく。 |
糸井 |
ジョンのさ……、この話、前にしたっけ?
昔の「ローリングストーン」ていう雑誌の表紙で、
オノ・ヨーコとジョンが横たわっているの。 |
井上 |
ああ、あったね。 |
糸井 |
ジョンが胎児のようなかっこうして、
オノ・ヨーコに寄り添っているという、
あそこに行くまでの人生でしょ、
ジョン・レノンって。
つまり、さっき話した
生まれた時の「オギャー!」が復讐の叫びだとしたら、
「もどれましたー!」って(笑)。 |
井上 |
ああ……そうだよね。 |
糸井 |
そういう物語ですよね。
で、戻ってから、主夫とかして曖昧に暮らしてたんだけど、
撃たれて死んで……、ある意味、成仏ですよね? |
井上 |
うん……本当に、本当ですよ。 |
糸井 |
で、ポールは社会運動に行くじゃないですか。 |
井上 |
社会運動に行くわさぁ……。 |
糸井 |
嫁はいろいろなことになっちゃうし。
仕組みのほうに、仕組みのほうに、行きましたよね。 |
井上 |
あれ、貴族になりたいんだろうね。
もう貴族になってるのかな。 |
糸井 |
なりたいのかもね。 |
井上 |
“サー”とか言われてるの? |
糸井 |
“サー”を持ってるんだよね。 |
井上 |
糸井さーん、こんな時にアレなんだけどさ、
なんか食事頼める?
ちょっとこう……すいませんねぇ……。 |
糸井 |
俺もそう思った。 |
井上 |
ところでさぁ、(鼠穴にある額縁入りの書を指して)
「雨二モマケズ……」ってこの書、
これ、前からあったっけ?
……立派な。 |
糸井 |
いいでしょ。
井上有一さんという書家が書いたものなの。
死んじゃった人なんだけど、
テレビでインタビューに行ったんだけど、
結局僕がね、井上(有一)さんにとっては、
僕が唯一のインタビューになっちゃったらしい。
もう、亡くなってますからね。 |
井上 |
え、その人の書なの……。
これ、すごいねえ。
……そうだよねえ。
宮澤の賢ちゃん(宮澤賢治)が
こういうのを残してるわけないもんねえ……。
ところで、ここの事務所(鼠穴ビル)って、
引っ越してからもう2年くらいになるの? |
糸井 |
えーとねぇ……、
おととし(1998年)の5月に移ってきたの。 |
井上 |
いいねぇ。
4階まであるの!? |
糸井 |
うん。
4階は屋根裏部屋みたいなものだけど。
1階はほとんど倉庫みたいになっちゃって。
まあ、この場所(鼠穴ビル)がないと、
「ほぼ日」やっていけなかったですね。
民家っていいよ!
温泉じゃないけど、
サボってようが、仕事してようが、
区別つかないじゃないですか。
井上さん、儲けて作ってよ、
僕たちが住みやすい場所をさぁ。 |
井上 |
それは、ほかに、誰が……住むの?
クマさん(篠原勝之)とか?(笑) |
糸井 |
誰でもいいよ(笑)。
そのときに決めればいいんだって。
(つづく) |