糸井 |
家族旅行……、井上さんはどうだか知らないけど、
ウチの例は典型で、カミさんがいて
子供がいて、どっか旅行に行きますよね。
僕はリーダーって言われるんですよ。
冗談なのか、本気なのか、
いちばん都合がいい言葉なんですよ。
敵(カミさん&子供)は僕のことをリーダーと呼んで、
「それはリーダーがやってくれるから」と言う。
で、俺はふだんから
リーダーをやりたくないと思って生きてるのに、
その場面ではリーダーをやってるわけですよ。
「次の飛行機は何時発だから、
どこそこに何時に集合すればいいはずだ」って。
そうやって大きくなるんですよ。
「肉の焼き加減はどうしますか?」と、
インドネシア風英語で料理人に訊かれたんだと思って、
「ミディアム」と僕が答えれば、
あとの2人も「ミディアム」と答えるじゃないですか。
ところが、その時、ほんとは、
その料理人は「ワタシは○○です」って、
自己紹介していたんだよー。
そういうところで失敗を重ねて、
耐性を作りたい(笑)。
だって、井上さんだって、
書類にハンコ押す仕事もしてるんでしょ? |
井上 |
今はしてないけどね、
……時々するよ。 |
糸井 |
「この件、どうしますか?」と聞かれたときの判断とか、
その時はもう「わからない」とは言えないでしょ? |
井上 |
うーん…………。
いや、でもホントに、わからない……。
……でも押してるかなぁ、
じゃないと先に進まないんで。 |
糸井 |
できれば、訊かれたことに、ずっと答えないままに、
100万個の答えないものを
そのまま棺桶にもっていきたいでしょ? |
井上 |
それ……あるねえ。
それがいちばん正直なところでしょう(笑)。 |
糸井 |
時には、暫定的に、ある答え方をしてみて、
仮想の美しい答えを置いてみて、
それを眺めたりして、っていうこともあるよね?
「おかげで今日は1日安楽でした……」
という歌もきっと作ってるよね?
いいなあ、楽しそうだなあ(笑)。 |
井上 |
なに……言ってんのかしら?
しかし、この間、言ったっけ?
さすがにどんなに悩んでいる人でも、
温泉の露天風呂に入ると、
「ここじゃ悩めない」って。
これ、ちょっと信じられるんだよねえ。 |
糸井 |
いや、ああいう生理にくるものって
もっと大事にしないとダメだね。
「脳だけで考えるのをやめましょう」
というのが、今の僕の気持ちで……。
よく昔から僕ね、番組の企画でも、
コマーシャルでも、なんか冷たい感じがしたときに、
「火を焚こう!」って言ったんですよ。
『イトイ式』という番組をやってたときに、
真ん中に“鍋”を置いたのは……、
僕が「どうしても」と言ったんですよ。
たとえば、場がシラケちゃったとき、
そこに暖かいものがあればいい、
温度さえあれば、なごんでても大丈夫だって。
それと、温泉の話って同じですよね? |
井上 |
うん。
似てるよね。 |
糸井 |
ちっとも“BAD”の話じゃないけど(笑)。 |
井上 |
温泉の話になっちゃった(笑)。 |
糸井 |
いや、いろいろ解決したいから、
“BAD”を出すんじゃないですか?
良い悪い、2つだけから選ぶのもイヤよね、
という気持ちも込めて“BAD”を出す。
でも頭に“GOLDEN”をつけている。
で、お客さんはどうとらえるか、って言ったら、
また「素敵!」って言うかもしれない。 |
井上 |
でも、その、
ギャンブルとかそういうので言うとさぁ、
まあ、すべてそうなんだけど、
たとえばルーレットなんかだと、
赤と黒という賭ける場があって、
赤、赤、赤って賭けたとしたら、
次は黒に賭けて……。
つまり、内角ばかりせめてたら、
次あたりは外角で……、
ってこともありますよねえ。 |
糸井 |
そうか! 表裏ではなくて場所なんだ。
内角、内角、外角という話はよくわかりますね。
(つづく) |