YOSUI
井上陽水・
ゴールデンバッド対談。

井上陽水のB面は、一筋縄ではいかないぞ。

第20回 妻帯者が恋愛する場合なんてのは
     そんな局面じゃないですか


井上 いや、決断を迫られて、何か言わなきゃいけない局面は
……まあ、いくつもありますよね。
「とにかく、それどうなんだ?」なんて言われて、
「どうなんだ、って言われても、キミ……」
っていうね(笑)。
糸井 ま、べつに答えなくてもいいんだけどさ、
たとえば、妻帯者が恋愛する場合なんてのは、
そんな局面じゃないですか。
で、「私は遊びでいいと思ってるし……」
って全員がいいますよね。
で、ほんとにそう見えますよ、全員が。
「いや、もうあんたのことなんか、
 普段は考えてないくらいだから」
って女の人は言いますよね。
で、そういう人ほど、
「どうなのよ?」ってある日突然言いますよね。
井上 ……(笑)。
糸井 で、「私は別れるわよ」って言いますよね。
と、こっちは
「昨日までと違いすぎるじゃないか……」って思うから、
食とか性とかって保守的ですから、
「それは、ちょっと、その……」と言って、
まあ、ごまかすとか、逃げるとか
いろいろ方法はあるけど、
「どっちかにしてくれないと、私はもうやめるから」
って世の中の男は毎日聞いてるわけですよ、どこかで。
そういうときに、ごまかしきれない局面って
山ほどありますよね。
で、まあ、答えなくもいいですけど、
井上 なーにを言ってんの(笑)。
糸井 いや、こう、男女のことにしたほうが
話がわかりやすいかなと思って。
要するに、煮え切らねばならぬ瞬間を、
どうするかってこと。

やめた。自分の首を絞めそうだわ。
このへん、自主検閲をいれよう(笑)。
井上 ……話を変えるけどさ(笑)。
糸井 うん。
井上 あれだってよ、結局インターネットって、
こないだ話したときはね、
俺はやってない状態だったじゃない。
最近はやるんですよ。
パソコンも、メールも。
携帯メールのことなんて、
こないだ糸井さんにチラッと教えそうになって、
こりゃいかんと思ってやめたんだけど。
糸井 いや〜、教わってもいいくらいでしたけど、
僕があまりにもついていけなかっただけなんですけど。
井上 あれは、まあ、テレビカメラもあったし……。
あれよ! こないだもチラッと言ったけどさ、
あの……やっぱり、手紙があり、ファックスがあり、
パソコンのメールがあり、
どんどんやっぱりこう、なんて言うんですかねぇ、
こう、簡単になっていくんですよ。
糸井 脂っけが抜けていきますよね。
井上 うん。ご挨拶が当然ないわけで、
用件も最小限、みたいなね(笑)。
まだ、パソコンのメールだと、
うっかりすると、ひとつ冗談書いて、
まあ、ちょっと。
糸井 文体があったりする。
井上 それでも、手紙とかファックスに比べると、
ずいぶん簡素化されたんだけど、
ついに携帯電話のメールもね、
「どう? ヒマ?」って、それだけ。
文字の数が少ない。
「いや〜」って、頭に「いや〜」がつく(笑)。
それくらいはまあ、やっぱり、いくらなんでも。
で、カタカナにしようかなー、とか思ったり(笑)。
「イヤー」って伸ばしたりして(笑)。
「イヤー、今夜はね、ちょっと」って、
それで終わるの。
「いいよ」って時は、電話かける。
糸井 「いいよ」から電話が始まるんだ(笑)。
井上 いきなり電話でさ、
「どう、今晩?」とか言ってもね、
やっぱり調子のいいときは、
冗談もかえせるし、適当なウソもつけるけど、
調子の悪いときってさ……(笑)。
冗談もでないし、声も聞かせたくないし、
「ただなんか出たくないんだ」という
ずいぶん哲学的な答えもあるしね。
糸井 あるよね。
“俺にしかわからない理由”がね。
井上 ま、そんな様子うかがいがあって、
双方の気持ちがそろったなら、
もっと細かいことを電話でどうですか、って
空気が流れるわけですよ。
糸井 不思議だよねぇ、そんなこと考えられなかったよね。
電話できないときでも、携帯電話のメールが入ると、
電話する可能性が生まれるんだよね。
それだけでも、ちょっと
アクティブな生き方になるよね。
井上 でまた、携帯のメールってのは、また面白いもんで、
メールを送ったら、ちょっと着信音が2回くらい鳴って、
「メールが着きましたよ」ってことを知らせる。
……必ずすぐ読めるかというと、
そうもいかないことがあるからね。
すぐ読む人もいるし、
会議中で3時間後にメールを読んだ、とか。
いろいろいいんですよ。
糸井 いいんですか?
井上 「ああ、今日は、食事したいけど、
 糸井さん、どうなんだろうなぁ……」
なーんてことで、電話して、
「糸井さん、どうしてる、最近?」とか(笑)、
あーだこーだ言いながらさ、
それもまた、ひと仕事だからねぇ。
ま、面白いって言えば面白いけど、
調子がよければ。
糸井 両方がその気になってるとは限らないしね。
井上 電話を受けた糸井さんがさぁ、
しめ切りで舞い上がってるときにさ、
久しぶりの電話だと、
ま、これはこれで対応しなきゃってことだと
たーいへんじゃない(笑)。
「どぉ? 糸井さん」とかさ、
「いや、ちょうど俺も、腹減ったんだ」とか、
「ぜんぜんダメ」とか(笑)。
糸井 短い時間だったら、飛んで行けるってこともあるし、
長い時間オッケーのときもあるし、
あらかじめ“概ね”ってのがわかるよね。
井上 そうなのよ。
やっぱり、電話して、
ナマの声で答えを……ってなると、ちょっとね。
生々しい。

(つづく)

2000-08-30-TUE

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