井上 |
いや、決断を迫られて、何か言わなきゃいけない局面は
……まあ、いくつもありますよね。
「とにかく、それどうなんだ?」なんて言われて、
「どうなんだ、って言われても、キミ……」
っていうね(笑)。 |
糸井 |
ま、べつに答えなくてもいいんだけどさ、
たとえば、妻帯者が恋愛する場合なんてのは、
そんな局面じゃないですか。
で、「私は遊びでいいと思ってるし……」
って全員がいいますよね。
で、ほんとにそう見えますよ、全員が。
「いや、もうあんたのことなんか、
普段は考えてないくらいだから」
って女の人は言いますよね。
で、そういう人ほど、
「どうなのよ?」ってある日突然言いますよね。 |
井上 |
……(笑)。 |
糸井 |
で、「私は別れるわよ」って言いますよね。
と、こっちは
「昨日までと違いすぎるじゃないか……」って思うから、
食とか性とかって保守的ですから、
「それは、ちょっと、その……」と言って、
まあ、ごまかすとか、逃げるとか
いろいろ方法はあるけど、
「どっちかにしてくれないと、私はもうやめるから」
って世の中の男は毎日聞いてるわけですよ、どこかで。
そういうときに、ごまかしきれない局面って
山ほどありますよね。
で、まあ、答えなくもいいですけど、 |
井上 |
なーにを言ってんの(笑)。 |
糸井 |
いや、こう、男女のことにしたほうが
話がわかりやすいかなと思って。
要するに、煮え切らねばならぬ瞬間を、
どうするかってこと。
やめた。自分の首を絞めそうだわ。
このへん、自主検閲をいれよう(笑)。 |
井上 |
……話を変えるけどさ(笑)。 |
糸井 |
うん。 |
井上 |
あれだってよ、結局インターネットって、
こないだ話したときはね、
俺はやってない状態だったじゃない。
最近はやるんですよ。
パソコンも、メールも。
携帯メールのことなんて、
こないだ糸井さんにチラッと教えそうになって、
こりゃいかんと思ってやめたんだけど。 |
糸井 |
いや〜、教わってもいいくらいでしたけど、
僕があまりにもついていけなかっただけなんですけど。 |
井上 |
あれは、まあ、テレビカメラもあったし……。
あれよ! こないだもチラッと言ったけどさ、
あの……やっぱり、手紙があり、ファックスがあり、
パソコンのメールがあり、
どんどんやっぱりこう、なんて言うんですかねぇ、
こう、簡単になっていくんですよ。 |
糸井 |
脂っけが抜けていきますよね。 |
井上 |
うん。ご挨拶が当然ないわけで、
用件も最小限、みたいなね(笑)。
まだ、パソコンのメールだと、
うっかりすると、ひとつ冗談書いて、
まあ、ちょっと。 |
糸井 |
文体があったりする。 |
井上 |
それでも、手紙とかファックスに比べると、
ずいぶん簡素化されたんだけど、
ついに携帯電話のメールもね、
「どう? ヒマ?」って、それだけ。
文字の数が少ない。
「いや〜」って、頭に「いや〜」がつく(笑)。
それくらいはまあ、やっぱり、いくらなんでも。
で、カタカナにしようかなー、とか思ったり(笑)。
「イヤー」って伸ばしたりして(笑)。
「イヤー、今夜はね、ちょっと」って、
それで終わるの。
「いいよ」って時は、電話かける。 |
糸井 |
「いいよ」から電話が始まるんだ(笑)。 |
井上 |
いきなり電話でさ、
「どう、今晩?」とか言ってもね、
やっぱり調子のいいときは、
冗談もかえせるし、適当なウソもつけるけど、
調子の悪いときってさ……(笑)。
冗談もでないし、声も聞かせたくないし、
「ただなんか出たくないんだ」という
ずいぶん哲学的な答えもあるしね。 |
糸井 |
あるよね。
“俺にしかわからない理由”がね。 |
井上 |
ま、そんな様子うかがいがあって、
双方の気持ちがそろったなら、
もっと細かいことを電話でどうですか、って
空気が流れるわけですよ。 |
糸井 |
不思議だよねぇ、そんなこと考えられなかったよね。
電話できないときでも、携帯電話のメールが入ると、
電話する可能性が生まれるんだよね。
それだけでも、ちょっと
アクティブな生き方になるよね。 |
井上 |
でまた、携帯のメールってのは、また面白いもんで、
メールを送ったら、ちょっと着信音が2回くらい鳴って、
「メールが着きましたよ」ってことを知らせる。
……必ずすぐ読めるかというと、
そうもいかないことがあるからね。
すぐ読む人もいるし、
会議中で3時間後にメールを読んだ、とか。
いろいろいいんですよ。 |
糸井 |
いいんですか? |
井上 |
「ああ、今日は、食事したいけど、
糸井さん、どうなんだろうなぁ……」
なーんてことで、電話して、
「糸井さん、どうしてる、最近?」とか(笑)、
あーだこーだ言いながらさ、
それもまた、ひと仕事だからねぇ。
ま、面白いって言えば面白いけど、
調子がよければ。 |
糸井 |
両方がその気になってるとは限らないしね。 |
井上 |
電話を受けた糸井さんがさぁ、
しめ切りで舞い上がってるときにさ、
久しぶりの電話だと、
ま、これはこれで対応しなきゃってことだと
たーいへんじゃない(笑)。
「どぉ? 糸井さん」とかさ、
「いや、ちょうど俺も、腹減ったんだ」とか、
「ぜんぜんダメ」とか(笑)。 |
糸井 |
短い時間だったら、飛んで行けるってこともあるし、
長い時間オッケーのときもあるし、
あらかじめ“概ね”ってのがわかるよね。 |
井上 |
そうなのよ。
やっぱり、電話して、
ナマの声で答えを……ってなると、ちょっとね。
生々しい。
(つづく) |