ふじた さきほどの「ひきだしのお店」って
ミコノスタウンの
どのあたりにあるんですか。
よしもとさん タウンの真ん中のほうに
すごく有名なレストランの
「ニコス」があるんだけど、
そこよりちょっと奥に入ったところにあります。
いつも夜はひきだしとニコスを
交互に行っていました。
今日はひきだしだから明日はニコス、
昨日ニコス行ったから今日はひきだし、みたいな。
ふじた 他にもたくさんあるのに
その2店だけ通うなんて
よほど気に入ったんですね。
よしもとさん そうですね。
お店の人にも顔を覚えられてました。
それで、話は変わるんですけど、
ニコスの近くにはいつもペリカンがいて、
夫がいつもそのペリカンに襲われるんです。


ゆーないと ペリカンに?
本当の話?
よしもとさん 本当!!
ふじた ペリカンに
好かれているんでしょうか‥‥?
よしもとさん 好かれてるのか?
いや、嫌われてるんじゃないかな。
私が「あ、ペリカンだ」って無邪気に戯れてて、
ペリカンも「フン」なんて言っているんだけど、
夫が近づくとシャーッて怒るんです。
急に目が覚めたように
するどいくちばしで襲ってくるから
すごーく怖い!
ゆーないと そんなペリカン見たことない。
よしもとさん うん、私もなかった。
夫がいるときしか怖くならないの。
ゆーないと というか‥‥
ペリカンがふつうに歩いてるんですか?
リードもなしで?
よしもとさん そう、ペタペタペタって。
ふじた

島に住みついてて、
街をふつうに歩いているんです。
ミコノスのマスコット的な存在で。



▲ミコノスに住む野良ペリカン。


よしもとさん うん、みんなには平和な鳥だけど、
うちの夫にとっては、猛獣(笑)。
ふじた ペリカン、たまに道で眠ってますよね。



▲頭を後ろに向けて、
羽根の中にくちばしを入れて眠ります。


よしもとさん そうそう。
でも、そんな状態でも起きてくるんですよ!
ペリカンが道で寝ているので
夫が写真を撮りはじめると、
急に起きてきて、「シャーッ!」(笑)。
ペリカンが嫌う何かを発しているのか‥‥
1度、ぱっくり噛まれていました。
見たら、手から血が出ていて。
ゆーないと うそぉー。
よしもとさん 本当、本当。
ふじた ばななさんの小説『王国(その1)』では、
主人公が伊豆のシャボテン公園で
ペリカンに手を噛まれて、
手当てしてくれた男性と恋に落ちますけど、
その話って、まさか、ここから?
よしもとさん そうです、そうです。
あっちは恋に落ちたんですけど
我が家では
「これって破傷風の注射とかしたほうがいい?」
っていうくらい、
深刻な場面が襲ってきました‥‥(笑)。
ふじた 雑菌が入らないか、とか。
ゆーないと 鳥系、けっこう怖いですし。
よしもとさん ねえ、怖い。
けっこう、血が出てました。
ゆーないと 息子さんには
襲ってこないんですか?
よしもとさん 大丈夫。見ててもそばに行っても平気なの。
うちの夫だけが襲われる。
ゆーないと 不思議ーー!
ふじた ミコノスへ行くときは
毎回ご家族も一緒なんですか?
よしもとさん はい。息子もすごくミコノスが
好きだと言ってます。
ミコノスって、地元の子どもは多いんだけど、
観光客の子どもは少ないんです。
うちの子どもだけじゃないかと思ったくらい。
でも、だからこそ、大人にメチャクチャ
かわいがられて楽しそうでした。
「おお、子どもだ、子どもだ」って、
バーのお姉さんに
カウンターに座らされて、
いっぱい飲まされてました。
ジュースだけど(笑)。
ふじた すごい。
息子さん、おいくつですか?
よしもとさん 今11歳です。
前回行ったときは、8歳。
お姉さんに「名前は何ていうの?」
って聞いてました。
ゆーないと すごいなぁ。
よしもとさん 彼はとにかく人気があって、
ミコノスで風船をもらったり、
ジュースをもらったり。
あと、夜遅くまで起きていられるのが
うれしいみたい。
まぁ、普段も夜起きてるけど。
ふじた たしかにミコノスは
夜もずっとにぎやかですよね。
よしもとさん うん、朝までずっとレストランや
バーが開いてて、夜型にとっては楽園です。
ゆーないと ナイトライフが。
よしもとさん うん。
夜ごはんも9時くらいからはじまるし。
「6時に待ち合わせ」と言うと、
「バカか」「そんなの昼めしだ」って言われます。
まぁ、ヨーロッパの人って総じて夜が遅いけれど。



▲海に沿って建ち並ぶレストランには、夜更けまで食事をたのしむ人々の姿が。


ふじた ばななさんは、
日本での生活もわりと夜型なんですか?
よしもとさん 夜型ですね、本当を言うと。
ふじた じゃ、そのままの暮らしがミコノスで。
よしもとさん そうです。
で、また自分だけじゃなくて
ミコノスではみんなも夜型だっていうのが
すごくたのしい。
朝も時間に追われることがないし。
ふつうは旅行をすると、
宿の朝ごはんが9時とか10時までって決まってて
合わせなきゃいけないですよね。
でも、ミコノスではのんびり朝ごはんを
出してくれるから気が楽でした。
夜も、遅い時間に宿に帰ると、
なんか正面玄関脇の通用口みたいなところから
入らなくちゃいけないとか、
ちょっと気まずいことがあったりするけど、
ミコノスでは、朝2時くらいに帰っても
気をつかうことがない。
ふじた そうですね。
みんな好きな時間に出て
好きな時間に戻ってくる。


▲夜景もきれいなミコノス。

よしもとさん そういうふうな場所って、
ありそうでなかなかないと思いますね。
波照間島に行ったときも
すべてのものを売っている唯一の店が
夕方6時くらいに閉まっちゃって、困ったんです。
あの「ああ、過ぎちゃった‥‥」という感じ。
ゆーないと 「何も買えない‥‥」みたいな。
よしもとさん そう。「朝、牛乳ない」みたいな、
あの気持ちにはならない。
ゆーないと ミコノスでは、
夜も何でも手に入るんですか?
よしもとさん だいたい、買えます。
ふじた 「ペリプテロ」という
キオスクみたいなお店が
ずっと開いていて。
よしもとさん うん、水を売ってるとこ。
まぁ、遠くて行くのが大変な場所は
だいたいがいいところですけど、
ミコノスは、行くのが大変な場所なのに
インフラがまったく
整ってないわけじゃないというか。
そういう意味では
理想的に成長した観光地かなという気がします。
(つづきます)

2014-03-18-TUE




※3月26日(水)午前11時~4月1日(火)午前11時の間、
 消費税改訂の準備のため「ほぼ日ストア」が休止期間に入り
 商品をご購入いただくことができませんのでご注意ください。
 4月1日(火)午前11時以降は、消費税が8%になります。

写真協力:ミコノス島でのばななさんの写真/よしもとばなな事務所 提供 ミコノス島の風景写真/Kinji Hayakawa 提供