糸井 |
本屋って、市場規模がそれほど大きくないのに、
大きいと思われていますよね。
それが、いちばん痛いんです。きっと。
いかに大規模と言われる出版社でも、
よく見ると、小さい会社ですから。
その割に、有名だと思われている(笑)。
「自社媒体」を持っているから。 |
安藤 |
発信力があるんですよね。 |
糸井 |
あるんですよ。 |
安藤 |
書店とか書店員も、そうですよね。
インテリではないのに、なんとなく、みんな
インテリだと思われているじゃないですか。
黒縁メガネをかけたおじさん、みたいな(笑)。 |
糸井 |
イメージと実際って、
わからないですよね。
bk1も、ぼくも、どこで
どう思われているか、わからないじゃないですか。
人のイメージは、変えられないので。
だから、自分の言いたいことは言って、
それで納得してくれる人と
つきあえばいいんじゃないかと思います。
自分も、そうだもん。
「ほぼ日」というメディアを
持つ前は、それこそ自分の言いたいことを
言いたいようには言えなかったですよね。
そういう面では、今は健康にいい暮らしですけど。 |
安藤 |
bk1というメディアを持てて、
ぼくも、そういうところはありますね。 |
糸井 |
好かれるための努力をするわけじゃないけど、
サービスはするんですよね。
めし屋とおなじなんだろうな。
ぼくも、たぶん以前は
「気楽にやってる人だ」って
思われていたんでしょうね、きっと。
まあ、確かにぼくは、
苦労を見せることを
そんなに重要だとは思ってないけど。
「苦労」の後に何か物語が
続いていれば、いいけれども、
「たいへんですよねえ」って言われていることの
大半は、たいへんじゃなかったりしますよね。
たとえばCMに出演することで大変なのは、
水をかぶるCMで水をかぶったりとかいう、
そういう一日だけの苦労では、
ないじゃないですか。
いちばん大変なのは、
たぶん、CMに出たことで、
その会社の失敗やら成功を、
自分で背負ってしまうということでしょ。
だからぼくは、
そういう一日の撮影レベルの
「苦労」と同じ次元で苦労を話したくないので、
昔から、楽勝だよ、って言い続けてたんだと思う。 |
安藤 |
イメージということで言えば、
「この場面で何とかしてくれそうな選手」
とか、そういうイメージっていいですよね。
「ここいちばんは、あいつしかいない」とか。
書店界の内部からのイメージが
ぼくに、どうつけられるか、は、
あまりこわくないですよね。
それよりも、お客さんから
ぼくの作る本棚がどう思われているかは、
とても気になります。 |
糸井 |
安藤さん、それを楽しくするためにも、
子どもさんと遊んでいるところがありますよね。 |
安藤 |
そういうところあります。
ぼくが仕事漬けで、
子どもと遊んでもいなかったら、
すぐにいい本棚をつくれなくなりますよ。
それを、どう自分の生活のなかで
位置づけられるか、だなあと思います。 |
糸井 |
ぼく、
本屋にいかなくなってきているんですよ。
わざとなんです。
行くと、楽しすぎる。
楽しすぎて、自分のやりたいことを増やしちゃう。
それって、おそろしいことなんですよ。 |
安藤 |
ああ、わかります(笑)。
思わず行きたいんですけどねぇ。
ぼくも行くとダメなんです。 |
糸井 |
企画、生まれちゃうでしょ? |
安藤 |
生まれちゃう(笑)。 |
糸井 |
仕事増やしちゃって、
俺、それやるからな、って言ううちに、
何かをおろそかにしちゃうんですよねえ。 |
安藤 |
狂っちゃうんです。 |
糸井 |
だからあんまりおいしいところには
行かないように・・・本屋は、その典型ですよ。 |
安藤 |
東急ハンズなんかも、
ぼくはもう「行くとダメ」の世界ですね。
「ああ、この手があったか!
・・・帰って、あれやんなきゃ」って(笑)。 |
糸井 |
そういう人が作るものは、
他人に、そう思わせる人でもありますよね。
俺をひきつけすぎる本屋が悩むように、
たとえばぼくや安藤さんも、
どう「ちょうどよくする」か。
その工夫をしないといけないですよね。
最近、ほぼ日も、
スモールにする選択肢も含めて
考えようかなあと思ってます。 |
安藤 |
ぼくのやっていた
「往来堂書店」も、
何で人があんなに来てくれたかというと、
スモールだからだと思うんですよ。
ぼくは何となく、
大書店が違うと思っていたところがあるんです。
大書店は、確かに本はいっぱいおいてあるし
売り上げも大きいんだけど、
なんか、はたらく人の顔がよくない。
アンハッピーなんだろうな、と。
もしかしたら、スモールビジネスのほうが、
モアハッピーなのかなあと感じました。 |
糸井 |
それは、答えはわかんないんですよねぇ。 |
安藤 |
わかんないんですけど、
何となく人が惹き寄せられるのは、
そういうハッピーさなんでしょうね。 |
糸井 |
わかるなあ。
bk1も、何となく
スモールのにおいがしてますもの。 |
安藤 |
そうですか? |
糸井 |
顧客の数にしたら、
往来堂の何十倍でしょうけど、
大きくなっちゃったのに、
スモールの気分が持続してる。
俺、ほぼ日をはじめた時から、
ビッグスモールのイメージを
出していたんです。
「ほぼ日がでかくなったら、
ほぼ日ビルを建てて、しゃちほこつける」
って。
そうじゃなければ、
裏切った、とか言われるじゃないですか。
金は欲しいって言いますし、
ぼく、ウソついてないんですよ。
『ほぼ日の本』にも、
俺は金が好きだ、って書いてますから(笑)。
苦労が好きでやってるわけじゃなくて。 |
安藤 |
だから、若い人が惹かれるんですよ。 |
糸井 |
若いと言えば、
安藤さんをえらいなあと思ったのは、
つぶしちゃいけない本屋さんを
若い時からやっていたことですよね。
イチローのアメリカに行く前とか、
野茂がアメリカに行くのを決意した時とか、
とんでもなくおそろしいものを
見ているはずですよね。
自分の持っているスキルの高い人たちは、
若くても大勝負をかけていますよ。
そこがすごいなあと思います。
(おわり)
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