KOBAYASHI
新しい本屋さんの考え。
bk-1の安藤店長と話しました。
本好きが編集部をやっているから、読むだけでおもしろい。
web書店の「オンラインブックストアbk−1」は、
新しい本屋さんの考え方を実践しようとしています。
もちろんリーダーは、店長さん。

安藤店長と『ほぼ日刊イトイ新聞の本』を題材にして、
これからの本のことなど、たっぷりと話をしました。

なお、この対談は「bk1」にも同時掲載しています。
bk1ヴァージョンも、ぜひお楽しみくださいませ。
クリックすると、bk1の対談ページに飛びます

第1回 失敗して、またやればいい。

第2回 自分のやりたいことの、ストーカーに。

第3回 本の「本籍」と「現住所」。

第4回 書店員として表現できることは?

第5回 お店の経営のヒント。

第6回 口説ける女の子の話をしてちゃ、だめだよね。

第7回  ・・・あれ? 本屋の話、してないや。

第8回 企画、生まれちゃいますよね?



糸井 本屋って、市場規模がそれほど大きくないのに、
大きいと思われていますよね。
それが、いちばん痛いんです。きっと。
いかに大規模と言われる出版社でも、
よく見ると、小さい会社ですから。
その割に、有名だと思われている(笑)。
「自社媒体」を持っているから。
安藤 発信力があるんですよね。
糸井 あるんですよ。
安藤 書店とか書店員も、そうですよね。
インテリではないのに、なんとなく、みんな
インテリだと思われているじゃないですか。
黒縁メガネをかけたおじさん、みたいな(笑)。
糸井 イメージと実際って、
わからないですよね。
bk1も、ぼくも、どこで
どう思われているか、わからないじゃないですか。
人のイメージは、変えられないので。
だから、自分の言いたいことは言って、
それで納得してくれる人と
つきあえばいいんじゃないかと思います。
自分も、そうだもん。

「ほぼ日」というメディアを
持つ前は、それこそ自分の言いたいことを
言いたいようには言えなかったですよね。
そういう面では、今は健康にいい暮らしですけど。
安藤 bk1というメディアを持てて、
ぼくも、そういうところはありますね。
糸井 好かれるための努力をするわけじゃないけど、
サービスはするんですよね。
めし屋とおなじなんだろうな。
ぼくも、たぶん以前は
「気楽にやってる人だ」って
思われていたんでしょうね、きっと。

まあ、確かにぼくは、
苦労を見せることを
そんなに重要だとは思ってないけど。
「苦労」の後に何か物語が
続いていれば、いいけれども、
「たいへんですよねえ」って言われていることの
大半は、たいへんじゃなかったりしますよね。

たとえばCMに出演することで大変なのは、
水をかぶるCMで水をかぶったりとかいう、
そういう一日だけの苦労では、
ないじゃないですか。

いちばん大変なのは、
たぶん、CMに出たことで、
その会社の失敗やら成功を、
自分で背負ってしまうということでしょ。

だからぼくは、
そういう一日の撮影レベルの
「苦労」と同じ次元で苦労を話したくないので、
昔から、楽勝だよ、って言い続けてたんだと思う。
安藤 イメージということで言えば、
「この場面で何とかしてくれそうな選手」
とか、そういうイメージっていいですよね。
「ここいちばんは、あいつしかいない」とか。

書店界の内部からのイメージが
ぼくに、どうつけられるか、は、
あまりこわくないですよね。
それよりも、お客さんから
ぼくの作る本棚がどう思われているかは、
とても気になります。
糸井 安藤さん、それを楽しくするためにも、
子どもさんと遊んでいるところがありますよね。
安藤 そういうところあります。
ぼくが仕事漬けで、
子どもと遊んでもいなかったら、
すぐにいい本棚をつくれなくなりますよ。
それを、どう自分の生活のなかで
位置づけられるか、だなあと思います。
糸井 ぼく、
本屋にいかなくなってきているんですよ。
わざとなんです。
行くと、楽しすぎる。
楽しすぎて、自分のやりたいことを増やしちゃう。
それって、おそろしいことなんですよ。
安藤 ああ、わかります(笑)。
思わず行きたいんですけどねぇ。
ぼくも行くとダメなんです。
糸井 企画、生まれちゃうでしょ?
安藤 生まれちゃう(笑)。
糸井 仕事増やしちゃって、
俺、それやるからな、って言ううちに、
何かをおろそかにしちゃうんですよねえ。
安藤 狂っちゃうんです。
糸井 だからあんまりおいしいところには
行かないように・・・本屋は、その典型ですよ。
安藤 東急ハンズなんかも、
ぼくはもう「行くとダメ」の世界ですね。
「ああ、この手があったか!
 ・・・帰って、あれやんなきゃ」って(笑)。
糸井 そういう人が作るものは、
他人に、そう思わせる人でもありますよね。

俺をひきつけすぎる本屋が悩むように、
たとえばぼくや安藤さんも、
どう「ちょうどよくする」か。
その工夫をしないといけないですよね。

最近、ほぼ日も、
スモールにする選択肢も含めて
考えようかなあと思ってます。
安藤 ぼくのやっていた
「往来堂書店」も、
何で人があんなに来てくれたかというと、
スモールだからだと思うんですよ。
ぼくは何となく、
大書店が違うと思っていたところがあるんです。

大書店は、確かに本はいっぱいおいてあるし
売り上げも大きいんだけど、
なんか、はたらく人の顔がよくない。
アンハッピーなんだろうな、と。
もしかしたら、スモールビジネスのほうが、
モアハッピーなのかなあと感じました。
糸井 それは、答えはわかんないんですよねぇ。
安藤 わかんないんですけど、
何となく人が惹き寄せられるのは、
そういうハッピーさなんでしょうね。
糸井 わかるなあ。
bk1も、何となく
スモールのにおいがしてますもの。
安藤 そうですか?
糸井 顧客の数にしたら、
往来堂の何十倍でしょうけど、
大きくなっちゃったのに、
スモールの気分が持続してる。

俺、ほぼ日をはじめた時から、
ビッグスモールのイメージを
出していたんです。

「ほぼ日がでかくなったら、
 ほぼ日ビルを建てて、しゃちほこつける」
って。

そうじゃなければ、
裏切った、とか言われるじゃないですか。
金は欲しいって言いますし、
ぼく、ウソついてないんですよ。
『ほぼ日の本』にも、
俺は金が好きだ、って書いてますから(笑)。
苦労が好きでやってるわけじゃなくて。
安藤 だから、若い人が惹かれるんですよ。
糸井 若いと言えば、
安藤さんをえらいなあと思ったのは、
つぶしちゃいけない本屋さんを
若い時からやっていたことですよね。

イチローのアメリカに行く前とか、
野茂がアメリカに行くのを決意した時とか、
とんでもなくおそろしいものを
見ているはずですよね。
自分の持っているスキルの高い人たちは、
若くても大勝負をかけていますよ。
そこがすごいなあと思います。

(おわり)


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2001-07-30-MON

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