この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース3「ひと文字違いで大違い」  夫にプロレス技をかけられました。 ばっちり決まり死ぬかと思い 「殺す気か?」と言おうと思ったのですが、 息も絶え絶えの私の口から出たのは 「コ、コロ助か?」 違うナリ〜。 (hiro) 〜『銀の言いまつがい』137ページより〜




日本語というのは音の仕組みが簡単な言語です。
要するに、ひらがなを並べ替えれば、
高い割合で何かの日本語になる。
ですから、あることばを言い間違えたとき、
それが少しの間違いだとしても、
まったく意味の異なることばに
なってしまう可能性が高いんです。

たとえば英語などの場合は、
ちょっと言い間違えたからといって
まったく別のことばになってしまうことは
日本語よりは多くないと思います。
もちろん、違うことばになることもありますが、
音節の構造が日本語よりも複雑なので、
別の単語、別の意味が生まれるというよりも
「たんに言い損ねてしまった」
というふうになる場合が多いと思います。

上に挙げられた「言いまつがい」は、
まあ、直接の原因としては、
身体的に拘束された状況で発声したため、
正常な発音できなかったということだと思いますが、
これが見事な「言いまつがい」として成立しているのは
「日本語の音の仕組みが単純なため、
 ひと文字違うだけでまったく意味が異なってしまった」
ということが原因になると思います。
「ころす『き』か」から「ころす『け』か」
というふうに、ひと文字変わるだけで、
「殺す気か?」が「コロ助か?」という
まったく意味の違うことばになってしまうのですから。

その意味からいっても、
日本語というのは「言いまつがい」に
適した言語であるということができますね。


ことばは、ひとつひとつにたくさんの情報を含んでいる。 ・身の回りから姿を消したものは  それがことばとして残っていても間違いやすい。


2007-04-17-TUE



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