人は、これからしゃべることばを
つぎつぎと予測しながらしゃべっているということは
前回の「逆転現象」の説明のときにお話しいたしました。
言おうとする先のことばが頭をよぎるから、
未来に言うことばと、いま言っていることばが
混ざったり、入れ替わったりしてしまう。
そういう間違いは、めずらしくありません。
しかし、今回、上に挙げた例は、
ある意味で逆のパターンですね。
つまり、過去に言ったことばが、
いま言っていることばに影響してしまう。
たとえば、文字を書いているときは、
こういう間違いが起こりやすいんです。
そこに残ったことばが視認できるというか、
目に入ってくるし、書いたことで
はっきりと頭の中に印象づけられますから。
もちろん、この例の場合も、
「チャンポン」の「ポン」が頭に残っていて、
それが「何分」に影響してしまうというふうに
説明できなくはありません。
けれども、人というのは意外に
一回言ったことを頭の中に残さないものなのです。
というよりも、言ったことばを残すより、
つぎにしゃべることばを予測することのほうに
頭を働かせるんですね。
書いた文字は頭に残るけれども、
人は頭の中で、しゃべった文字を書いたりしません。
しゃべったことばは、
一度言うと忘れるというふうに働くのが
ふつうなんじゃないかと思います。
ですから、前回の「逆転現象」のほうが、
「言いまつがい」としては複雑に見えますが、
こちらの「前言に引きずられて」というパターンのほうが
ケースとしては、めずらしいのではないかと思います。
(言いまつがいの担当者から
「逆転現象系の投稿は多いですが
前言に引きずられるネタの投稿は少ないです」
という報告を受けて)
ああ、そうですか。それはそうだろうと思いますね。 |