もともとしっかりと理解していないことばや、
生活に密着していないことばを使うとき、
人は「言いまつがい」をしやすい。
また、怒りや緊張といった強い感情の振幅が、
脳の働きをさまたげ、その結果、
正しいことばを選べなくなってしまうというのは
これまでにお話ししてきたとおりです。
そういった「言いまつがい」しやすい状況になったとき、
人間の脳というのは少ない手がかりをもとに
正しそうなことばを無理に選んでしまいます。
突拍子もないような「言いまつがい」も、
よくよく検証してみると、
何かの手がかりをもとにしているということが
わかるはずです。
上に挙げた、
「サスペンダー」と「エキスパンダー」を
混同してしまうというのは、
「よく似た音」をもとにして
違うことばを選んでしまった典型的な例です。
単語の正確な表記や発音、
あるいは意味といったものを
十分に理解していないのに
そのことばを使わなければならない場合に、
似ているところを持った単語を
自分の記憶の中から探し出してきて
それを使ってしまうわけです。
「サスペンダー」と「エキスパンダー」は
意味としては無関係ですが、
音の類似性という部分では近いものがありますよね。 |