この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース18「犬に言いまつがい」  朝、犬にえさをあげてから、 いつものように「お食べ」と言おうとしたら、 なぜか「おすわり」と言ってしまい、 思わず犬も食べようとして、 一瞬止まってしまいました。 ごめんなさい、お食べ‥‥。 (sario) 〜『金の言いまつがい』236ページより〜





今度は犬に「言いまつがい」ですか(笑)。
だんだん解説が難しくなってきました。

ここでのポイントは、
犬に命令する表現というのは
あらかじめ限られているということです。
つまり、選択肢が非常に少ないんですね。
加えて、相手が自分の犬だということで
ほとんど気を遣わなくてもいい。

つまり、ほとんど集中もせずに、
限られた表現の中からことばを選ぶので、
まあ、ぞんざいになってしまったと。
つい、隣にあったことばを選んでしまったと。
まあ、そういうことでいいと思いますよ。
え? まだ、犬の事例があるんですか?





この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース19「犬に英語で言いまつがい」  英語が話せない私の上司は 仕事で外国に行ったとき、 なぜか犬に噛まれてしまい、 犬に向かって大声で 「サンキュー!」 と怒鳴ってしまったらしい。 (Yoko) 〜『金の言いまつがい』237ページより〜





ああ、これはもう、先の例に比べて
さらに選択肢が少ない状況ですね。
もともと、英語の語彙が少なくて、
それこそ「サンキュー」とか「ハロー」とか
言えることばがほとんどないわけです。
そんな中で、怒りを表現しなきゃいけない。
しかも、犬に(笑)。

状況的にもかなり特殊ですね。
外国にいて、ただでさえ緊張する状況なのに、
なぜか犬に噛まれてしまっている。

ですから、パニックが幾重にも重なって、
本来の意図とはまったく無関係に
手近な英語が出てきたということだと思いますよ。
ま、そういうことですね。


・あらかじめ、選択肢が限られている場合、  十分に検索せずにことばを選ぶ場合がある。 ・あらかじめ、選択肢が限られていて、  さらに冷静でない状況では、  意図と無関係なことばを言う場合がある、かも?


2007-05-02-WED



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN