この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース20「違う!」  公園でデート中、すずめの群れが。 それを見た私は一言。 「あっ、ねずみだ~!」 隣の彼は 「『ず』しかあってないし‥‥」と悶絶。 (joe) ~『銀の言いまつがい』228ページより~





これは、突拍子もない「言いまつがい」に見えますが、
じつは説明がしやすいという例ですね。

「すずめ」も「ねずみ」も、
日常にしばしば登場する動物ですよね。
音の面からいっても、ともに3文字で、
細かくいうと「ず」という音が
真ん中にあるという共通点がある。

いわば、「よくある動物」という引き出しから、
よく似た音のことばを間違って取り出してしまった、
ということでしょう。

目の前にいる「すずめ」のことを
「ねずみ」と言ってしまうと、
周囲にいる人はびっくりしてしまいますけど、
説明しようと思えば、できなくはない。
そういうケースだと思います。





この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース21「ぜんぜん違う!」  母は「洋服ダンスの中のオーバー」 と言おうとして、 「冷蔵庫の中の座布団」と言った。 「の中の」しか合ってない。 (Adusa) ~『銀の言いまつがい』230ページより~





これは‥‥たしかに、ずいぶん違いますね。
ええと、完全な説明は無理かもしれませんが、
どうしても説明しなければならないとすると、
できなくはないです。

まず、「洋服ダンス」と「冷蔵庫」というのは
「ものを収納する場所」という共通点がありますね。
で、「オーバー」と「座布団」というのは、
まあ、ぜんぜん違うといえば違うんですけど、
要するに、繊維でできた、ふかふかしたものだと。

ですから、ちょっとした気のゆるみによって、
間違って検索してしまって、
「洋服ダンス」が「冷蔵庫」に、
「オーバー」が「座布団」になってしまったと、
まあ、いえなくもない、と。
しかし、だんだん説明が難しくなりますね(笑)。





この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース22「ぜんぜん違う!」  仕事中、欧文フォントの代表格である 「Helvetica(ヘルベチカ)」 の名前がどうしても思い出せなくなったので、 語感を頼りになんとなく発声してみたら 出てきた言葉は 「ポーレチケ」でした。 (缶) ~『銀の言いまつがい』231ページより~





あ、これは、むしろ説明しやすいですね。
「ヘルベチカ」というのはもともとラテン語で
「スイスの」という意味ですけれども、
アルファベットなどのフォント名として知られてますね。
けれども、フォント名というのは専門的なことばで
ふつうはあまり使わないことばですよね。
つまり、一般には、馴染みのないことばだといえます。

一方、「ポーレチケ」というのは、
歌詞の一部として登場しますね。
「♪さぁ、楽しい、ポーレチケ、ポーレチケ」という。
ええと、これは、なんの歌でしたっけね?
ま、そのくらいの認識であることがほとんどで、
逆にいうと、歌詞で出てきたくらいの馴染みしかない。

つまり、「ヘルベチカ」も「ポーレチケ」も
同じくらい馴染みのないことばで、
でも聞いたことはあるぞ、という感じですよね。
つまり、共通項としては
「本来の意味は知らないけど、聞いたことはある」と。
音も似ているし、音節数もだいたい同じ。

というときに、そういう馴染みのないふたつのことばを
取り違えてしまうのは、まあ、ありうることだと思います。
え? まだあるんですか?





この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース23「ぜんぜん違う!」  先日、母が 「ごっ、ごっ!」とか言ってるので、 何かと尋ねたら、 「最近の若い人は」 と言おうとしていたらしいです。 ぜんぜん違うよ、ママ。 (ゆりな) ~『銀の言いまつがい』232ページより~





なんですか、これは(笑)。
「最近の若い人は」って言おうとして、
「ごっ、ごっ」ですか‥‥。
うーん‥‥これは難しいですね‥‥。
ええと‥‥ちょっとこれだけでは、説明できないです。
すいません、これは、説明不可能(笑)。


・突拍子もない「言いまつがい」でも  本来のことばと間違ったことばのあいだに  なんらかの共通項を見いだすことができれば  その共通項による検索の間違いとして  説明することができる。 ・説明不可能な「言いまつがい」もある。


2007-05-03-THU



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