糸井 |
これまでのお話から、
『三位一体モデル』を育てていくというか、
僕らがやるべきことは
まだまだありそうだ、と思うんです。 |
矢部 |
そうですね。
これからさらに、
物語性みたいなものをつくりこめる、
さらに多くの人に
広められる銘柄なんじゃないかと思います。 |
糸井 |
紀伊國屋さんなんかは、いかがですか? |
鈴木 |
私、『三位一体モデル』のもととなった
「青山分校! 第0講」を
実際に聴かせていただいたんですけれど、
「価値の増殖」みたいなお話が
すごく腑に落ちたというか、納得できたんですね。
講義のあと、すがすがしい気持ちになって
青山から恵比寿の勤務先まで
歩いて帰ってしまったくらい(笑)。
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糸井 |
わかります、わかります(笑)。 |
鈴木 |
で、この本のいちばんの意味というのは、
そんな中沢先生の思考モデルが
東京糸井重里事務所という器で出た、
ということなんだろうと思っています。
いろんなビジネスや広告などの問題に
あてはめて考えてみよう、
世のなかを、基本的なところから
見つめなおしてみようという内容の本が、
みすず書房でもなく、講談社でもなく、
ぜんぜんアカデミックじゃない出版社から
出版されたというのが、おもしろいと思って。
ですから、うちとしても
もっと売っていきたい本ですよ。 |
糸井 |
まさしく、そうした考えで、
僕らも一生懸命つくったんです。
ビジネスマンのみなさんが読む、
ということを想定した場合、
丸善さんなんかでは、どうでしょう? |
知念 |
最初にゲラを見せていただいたときに、
これはとうぜん、中沢先生のファンのかたに
人文書の棚で受け入れられる本だろうと
思ったんですけど、
同時に、ビジネス書のハウツー本に
ちょっと飽きてしまったようなかたに、
ぜひ読んでいただきたいと思いました。
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糸井 |
つまり、大げさにいえば生きかたの本。
もうちょっと小さいレベルでいっても、
「戦術」じゃなく「戦略」の本ですよね。
より楽しく、より生き生きと
生きるためのノウハウだと思うので、
この本がもっと売れるような時代になったら‥‥。
つまり、たとえば、つぎつぎと
目先だけ変わっていくようなビジネス書よりも、
『論語』や『十八史略』を読んでみるか、
なんて時代になったら楽しそうだな、って思うんです。 |
広野 |
ブックファーストは、いくつか
チェーン展開していますが、
もう渋谷店でダントツ売れてるんですね。 |
糸井 |
それは、あなたのせいですね(笑)。 |
広野 |
いやいや(笑)、
渋谷のことも書かれていた『アースダイバー』が
渋谷店ですごく売れた、
ということもありますよね。
それに、お手頃な価格の
ハードカバーじゃないですか、
この『三位一体モデル』って。
そうした本のつくりといい、
もちろん内容もそうですけれど、
この本、ジワジワ来ると思います。
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糸井 |
ジワジワと。 |
広野 |
それは、逆に言うと
ロングセラーになりうる本、
ということだと思うんです。 |
糸井 |
そういう本になっていくために、
出版社としての僕らが
お手伝いできそうなことって、ありますか? |
矢部 |
今、この本のことを知らない人に
知ってもらうようなことですよね。
それはPOPなのか、帯の付け替えなのか、
あるいはもっと大掛かりなことなのか
わかりませんけど、背中を押すようなことが‥‥。 |
糸井 |
もうちょっと、
本から遠い人のところまで
入り口を広げていく、ということですね。 |
矢部 |
いま、表紙をパッと見ただけで
内容のわかる本が売れている、
ということもありますし。 |
広野 |
そうなんですよね。
わかりやすい本のほうが、たしかに。 |
糸井 |
『憲法九条を世界遺産に』。 |
広野 |
わかりやすいです、中身まで。 |
矢部 |
でも、わかりにくいからこそ、
まだ潜在的なお客さまの層がある、
ということもできると思うんです。
ですから、この『三位一体モデル』を
つぎはそこにいる人に、届けられたら。 |
鈴木 |
「第0講」の授業って
そこで聞いていたみなさんが、
本当に熱心な雰囲気で、
これは素晴らしいな、と思ったんです。
そのほとんどが
社会人のかただったと思います。
ですから、40代、50代から、
第一線からは引退した人にまで
きちんとリーチするような、
そんなふうになっていったら
おもしろいと思いますよ、この本。
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広野 |
若い人たちにも
読んでもらいたいですね。 |
糸井 |
そうですよね。
若い人たちにも読めるように
できているはずですしね。 |
広野 |
理論社の『よりみちパン!セ』シリーズみたいに
装丁とかの良さも含めて、
プレゼント的な押しかたもできそうですよね。
誰かに贈ってもらったら、
きっと嬉しい本だと思いますよ。
中沢さんのことを知らないかたが読んでも、
おもしろく読める内容ですしね。 |
糸井 |
書店さんが、こういうふうに
いろいろ言ってくれることで
自信もつきますし、
まだまだやれることも、
きっとたくさんあるんだなと感じます。 |
鈴木 |
やはり、今の出版業界には、
作り手側が本気でつくっているものが
そんなに多くなかったりすると思うんです。
私たち売る側の人間は本気ですから
やはり、本気な商品で
ビジネスをしたいというのがあるので、
その意味で、
糸井事務所さんは素人っぽいからこそ‥‥。 |
糸井 |
うち、本気です(笑)。
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広野 |
それは、すごく伝わってきますよ。 |
鈴木 |
うん、それがわかるから、
こちらも本気で、
きちんとやりたいなと思うんです。 |
糸井 |
それは、本当に嬉しいですよね。
みなさんからの「本気」という言葉を
しっかり受け止めたいと思います。
そして、書店さんに
飽きずにおもしろがってもらえるように、
「本気」が持続していく関係を
つくれるように頑張りますので、
これからもよろしくお願いいたします。
本日は、ありがとうございました。
<おわります>
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