── |
信藤さんは、以前から
中沢先生の本を
愛読されているとのことですが‥‥。 |
信藤 |
『チベットのモーツァルト』
からはじまって、
『雪片曲線論』、『野ウサギの走り』、
最近では『憲法九条を世界遺産に』‥‥。 |
── |
中沢先生の作品の、どんなところに
おもしろさを感じているんでしょう? |
信藤 |
もともとはね、角川書店から出ていた
『月刊小説王』って雑誌に、
中沢さんと細野(晴臣)さんと、
アートディレクターの
奥村(靫正・ゆきまさ)さんなんかが
日本中の聖地をめぐる、
という連載企画があったんです。
天河神社とか‥‥大山詣でとか戸隠とか、
日本の聖地をめぐっていくんですけれど、
それが本当におもしろくてね。 |
── |
そこから、中沢先生にご興味を? |
信藤 |
そうですね。
もともと、神秘的なものには
興味を引かれていたんですけど‥‥。
で、そのあと
『チベットのモーツァルト』なんかを
読みはじめたんですよ。 |
── |
なるほど、そうでしたか。 |
信藤 |
それに「三位一体」という言葉自体、
じつは以前から、
けっこう気になっていたんです。 |
── |
それは、どういったきっかけで? |
信藤 |
『神との対話』という本があるんです。
著者は敬虔なクリスチャンなんだけど
生活はぜんぜん楽にならずに、
なかなか幸せな日々が訪れず、
食べるのにも困る生活をしていたときに、
何でこれほど神様に祈ってもダメなのか、
ということを、
当の神様に向かって
手紙を出したところ‥‥。 |
── |
ベストセラーになった本ですよね? |
信藤 |
実際にポストへ投函した、
ということではないらしいんですけれど、
なんと、その手紙に返事がきた、と。
‥‥で、それは、
神さまが著者の手を借りて
サラサラっと書き出した、という。
いわゆる
「自動書記」というものですね。 |
── |
それはまた、不思議な‥‥。 |
信藤 |
自分が疑問に思ってることを
神さまに質問すると、
それに答えてくれる、というんです。 |
── |
そのなかに「三位一体」が? |
信藤 |
出てくるんですよね。
でも、どうしてもそのとき
「三位一体」が理解できなくて(笑)。
‥‥あとね、僕は、なぜだか
「3」という数字が好きなの。 |
── |
お好き、と言いますと? |
信藤 |
とくに、ぜんぶの面が
正三角形でできた‥‥何面体というのかな、
1、2、3‥‥4面体? テトラヘドロン?
自分が眠るときのクセで、
頭のなかに三角を描くのが好きなんです。
ヘンかもしれないけど(笑)。
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── |
小さいころからそうなんですか? |
信藤 |
ええと、いつからかは、
ちょっと覚えてないんだけどね。
まあ、とにかく
だいぶ昔からのことです。
頭のなかで、三角の四面体を
分解していくと、
また新しい三角形ができてきて‥‥。
それをまた立体にして、
そのテトラヘドロンを
ゆっくり回転させて‥‥とか。
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── |
はぁ、はぁ……。 |
信藤 |
バックミンスター・フラー博士という、
ドーム状(ジオデシック・ドーム)の
建築構造を考案したり、
『宇宙船地球号操縦マニュアル』
という本を書いたりしている学者さんも、
三角形について、書いてるんです。
この世のなかで
三角形しか信用できない!
というような言いかたで。
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── |
信用できない? |
信藤 |
たとえば、
地球上でまっすぐな線をひいても
それはほんの少し、湾曲するじゃないですか。 |
── |
ええ、地球は丸いですもんね。 |
信藤 |
そういう意味で、理論的に考えても
直線というのは「ない」という
言いかたをしているんです。
実際、宇宙空間においても
光は直進しないということですから。
でも、三角形っていうのは
実際に実験してもわかるんだけど、
すごく安定した形なんですよ。
他方で、四角形っていうのも
安定しない形ですよね。 |
── |
ある一辺を押すと、
三角になろうとしたり、
もっと押したら、
直線になろうとしたり‥‥。 |
信藤 |
うん、非常に不安定な形。
でも、四角形の対角線上に
ひとつ辺を描き込むと、
三角形がふたつになって、
こんどはすごく、安定しますよね。 |
── |
なるほど、
建築なんかでもそうですね。 |
信藤 |
あらゆる物質というのは
そういうふうにできてるんだ、
というような考えかたをしているんです。 |
── |
それで「三角形はすごい!」と。 |
信藤 |
そう、そう(笑)。
ですから、僕が三角形にひかれていたのは、
絶対的なものを求めてるというか、
安定を求めてるというか‥‥。
そういうことなのかな、と思っていたんですよ。
<続きます>
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