糸井 |
おととい、邱永漢さんにまた会ってて、
邱永漢さんって起業が大好きなんですね。
で、なんか考えちゃ会社にして、
いろんなこと知ってるわけですよ。
彼がよく言うのは
ビジネスホテルを発明したのは俺だ、とか、
いっぱいあるんですよ。それこそ。
そんなにいっぱい作って、
本人はずっと監督してるわけでもなければ
社長やってるわけでもないんですよ。
中華料理屋にしてもそう。
次の誰かがやってるんですよ。
それって、邱さんはひょっとしたら
何百と会社を作っていることになる。
で、どうやって自分が抜けたあとの
トップを決めてるんですか、って
すごいシンプルな質問したら、うれしそうに、
買ったものはだめなんですよって言ったんですよ。
つまり、自分が抜けたあと任せる人をどっかから、
そういう職種の人から買ってきて
そこのポストに入れたらだめなんですって。
運転手だったやつでもいいんだって。
10年かかるんだって。 |
内田 |
育てるわけですか。 |
糸井 |
で、育てたものじゃないと、
うまくいかないんですって。
渡せないんだって。
それはねー、僕は、歴史の知恵というか。 |
福嶋 |
それ、でも会社の数だけやってるんですね。 |
糸井 |
そう。それはね、恐ろしいと思いましたね。
つまり今は起業ブームだから、
マーケティング会社の人がルールを熟知してるから
って入れてるわけですよ。
つまり、野球チームで言えば、
大リーグをずっと観察してきたスポーツ記者を
いっぱい入れてるみたいなもんですよね。
果たしてそれで全部の会社を、
ま、トップか副社長にして、
運営していくとどうなるかというと、
おそらくなんですけど、
おんなじ種類の人たちの戦争、
コンペティションですね。
これはダンピング競争になるのが
目に見えてるんですよ。 |
内田 |
なるほど。 |
糸井 |
そんときに、いや、それがわかるまでには
時間がかかった。邱さん76歳ですけど、
76歳の邱さんが10年かかるっていうんで、
で、どんな人でも自分のそばにいて育てた人に
任せたらだいたいは大丈夫。
あとはもうアイディアがそんなに要るわけじゃない。 |
内田 |
うん、何を取るのでしょうね。 |
糸井 |
びっくりしたんですけど、
僕はもっと聞きたいんですけど、
本当に難しいことだって言ってましたね。 |
内田 |
アメリカ的だとね、ヘッドハンティングしますね。 |
糸井 |
そうです、そうです。買い物だっていうんです。
それでね、既製服はだめだっていったんですよ。 |
内田 |
それがだめだっていったら、
アメリカは全部だめになっちゃう。 |
糸井 |
そうなんです。 |
福嶋 |
生え抜きってことですか。 |
糸井 |
生え抜きってことに近いだろうし、
単純に短い時間の中で僕が考えたのは、
買ったのは全部おんなじ工場で作られていると
いうことがひとつだな、とまず思いました。
もうひとつは、呼んできたときに、
高いギャランティしないとだめですね。
つまり、プライド料を、
例えば2000万円なら2000万円だしたら
そこから下がるってことは許せないんですね。
ところがずっと一緒に居て、
単に運転手してた人が社長になったときには、
最初から知ってるわけで、
100円を稼ぐことのすごさっていうのを
わかってるから、
2千万円でひきこまなくても、
500万円ではじめて、
おっと400万円になっちまったぜ、
っていうときに耐えられるらしいんです。
だから、商いのレンジっていうのも
彼ぐらいのほんとの仙人みたいなベテランになると、
そのレベルがあるみたいなんですよね。
これはね、きっとまたアメリカ人はそれを解析して、
その勉強をするんだと思いますけどね。 |
内田 |
アメリカ流でいえば、ま、買ってはくるんだけど、
買ってきた人間に全力を尽くさせる方法が
コンペティションなわけ。 |
糸井 |
ということですね。 |
内田 |
いつでもそれに代えられる人を脇に置いといて、
脅しかけてるような。 |
糸井 |
はい。それが耐えられないっていうのは
僕ら日本人はすぐに思うけど、
アメリカ人はみんながそうだから我慢してますね。
でも爆発しますよね。 |
内田 |
それにね。早く、短期にね、
貯めるものを貯めてリタイアしちゃいたい、
って彼らの夢ですね。
65歳まで働きたいなんてやつは日本人ぐらいで。 |
糸井 |
おもしろいのは、そのリタイアの結果は
まだ出てなくて、ヤッピー世代の次の世代ですよね。
早く貯めて、早い話が外からまた買った
CEOみたいなものを入れて、
自分が株主になってリタイアして、
「じゃぁ何する?」っていうときの夢が、
あんまり無いんですよ。
つまりヨットであったり、車であったり、
女であったり、家であったり。
あ、またおんなじと思いますね。あと麻薬ですよね。 |
内田 |
ま、もう一回会社作るとかね。 |
糸井 |
ああ、それは繰り返してる人はいっぱいいますね。
だから本当にリタイアしてるという人はいないし、
つまり、「ほんとに欲しいものって何?」
っていう質問に対して
アメリカは答え出せない。
競争だから競争だ。
おもしろいぞ、勝つのは。
っていう教育まではできるんだけど、
幸福感について、クリントン見てても
よくわかるけどわかんないですよね。
権力までしかわからない。
でも権力の外側っていうのも、
宗教って曖昧な垣根があるから、
ごまかしちゃうじゃないですか。
ごまかしちゃうおかげでかえって見えなくなるものが
あるんだと思うんですよ。
日本人はね、そういう意味ではね、
ご隠居さんとか、けっこうその、
ジャンルが多いんですよ。
小商いとかね。アパート経営とか。
職人としての腕を見せるだとか。
ちょっと大事にされたり。
さっき内田さんおっしゃった、
日本の文化みたいなところに、
実は意外に小さなシステムがいっぱいあって、
それが何かなーっていうのは
僕は落語なんですけど、実は。
落語の世界がユートピアだと思ってんですよ(笑)。 |
内田 |
アメリカ人だとね、
ウィークエンドファーマーとかね。 |
糸井 |
ああ、また戻ってますね(笑)。牧場とね。 |
内田 |
そうですね。 |
福嶋 |
イギリス人は、ガーデニング。 |
内田 |
イギリスに行くとね、
大学の先生で、都会と田舎に家2軒持っている人
いるんですよね。
街ん中にフラットっていうのを持ってて、
それから週末に帰るために、
車で1時間から2時間の田舎に、
きったない農家かなんか買ってるわけね。
日本もね、金持つと何やるかっていう
典型ってあって、
自分の親も見事にそれにはまってましたね。 |
糸井 |
家ですかね。 |
内田 |
いや、まずですね。女を作る、店をもたせる、 |
糸井 |
それパターンですからね。 |
内田 |
まさにパターンですね。
それからね、自分が死ぬ時の準備として、
葬式やるには家は狭いとかって、
裏に家建てるんですね。
10畳を3つつなげた部屋を作って、それから
そのときに来た人にお茶出すために
脇に台所がないと、とかいいながら
台所やトイレを作ったりしましたね。 |
糸井 |
迎賓館ですね。 |
内田 |
その家で親父の葬式やったんだけど、
そのあとが困りましたね。
使い勝手が悪くて、他に使いようが無い。
広いし寒いし。
そのつぎはお墓ですよね。 |
糸井 |
そうですね。パターンですね、全部ね。 |
内田 |
お墓の方は生きてるうちにね、
ちゃんと坊主に高い金出して、戒名もらって。 |
糸井 |
高い戒名買うんだ。 |
内田 |
自分だけじゃなくて、私の母親の戒名もらって、
石碑をりっぱに立てて、石に刻んだ文字は
朱色に塗っておく。 |
糸井 |
ええ、セッティングして、そこまで。 |
内田 |
そこまでやると後はやることが無くなっちゃう。 |
糸井 |
そこで適度に女がもめたりしてくれると、
もうちょっと膨らみができるんですけどね。 |
内田 |
もめるんですけど、解決できちゃう? |
糸井 |
いや、金が余計にかかるだけだから、
数量でまたカバーできちゃう。 |
内田 |
もともとケチでしょ。金貯めるくらいだから。
どんな時でも、ちゃんと計算はしてるんですね。
このくらいなら、出してもいいかなと。
明治の頃は、そういうのが男の甲斐性とか
言っていたんだと思うんですよね。
うちの親父は、明治の思想を受け継いだ人
だったから、そういう行動は、
非常にティピカルな感じがしてね。 |
糸井 |
ティピカルですね。 |
内田 |
日本の田舎に育つと、その地域、よく言う
村(ムラ)から外へ、発想が展開しないわけで
家業を盛り立て、子孫に財産を残すという点では
一所懸命やる。
でも、邱永漢さんみたいなグローバルな視野に立って、
外国のベンチャーに投資するなんて
外向きの発想は出ないんですよね。
日本の国の政治は、村の政治をそのまま
持ってきたというはやはり当たってる。
インターネットの時代になってもまだ、
日本人の考え方の元は、村のモデルが中心にある。
その村の中で、それなりに工夫を凝らして
金儲けして、村長さんになるためにがんばる
なんてことをやる。 |
糸井 |
すごいゲームなわけですね。
生きがいであったりして。
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