内田 |
日本の田舎に育って、家が代々庄屋の家系で、
親が村(ムラ)を作って、その中で
周りの人をまとめて、家業や村を
発展させていくのをみて、育ってしまった。
そういうこともあってか、
第五世代プロジェクトではうちのボスは、
おまえは研究よりマネージメントやれと
暗黙のうちにマネージャにされてしまったという
ことのようです。
第五世代コンピュータというボスの発想は
コンピュータに知識を持たせ、
三段論法のような推論をやらせて
人間に近い機能を実現させようという
時代の常識を超えたものだったわけです。
その理論の枠組みはしっかり出来てたけど
その発想をその時代のテクノロジーを使って
どう実現するかは、
まさにゼロからの出発だったんです。
でも、その発想の斬新さに惹かれて
ヨーロッパやアメリカから、そして日本国内からも
何十人という人がいろいろなアイディアを持って
集まってきてくれた。
だからこういう人をうまくまとめて
1つのコンピュータを作るための村を
作る必要があって、それをやらされたんだということが
後になってから分かりました。
でも、1つのテーマに没頭する研究は楽しいけど
マネージメントなんて個性と個性のぶつかり合いの
調整みたいな事の繰り返しです。
忍耐の連続で、やってる時は楽しくなかったですね。 |
糸井 |
それはもうすでに才能があったんですね、きっと。 |
内田 |
そういう人との数多い出会いの中に
7つくらい年下の東大でドクターを取ったばかりの人
ここではドラえもんくんと呼んでおきますけど
(福嶋註:似てるんです!
四次元ポケットも彼の脳にあるらしい…)
ずば抜けてできるヤツがいた。
外国から来た天才的な若者も含めて
ICOTに集まってきた若者たちの平均年齢は
29歳くらいで、私は35歳だったから、
私は何かを教えたり指図したりしたんだけど
このドラえもんくんにだけは
こういうこをした記憶がないんですよ。
ドラえもんくんも、マネージメントの才能もあった。
彼の家業はホテルで、確か従業員も150人位
いたと思う。早くにお父さんを亡くしたことも
あって、自然とマネージメントのセンスが
ついちゃったんだと思う。 |
糸井 |
それは、幸福感というものを喪失せねばならなかった
という不幸を背負ってたわけですね(笑)。 |
内田 |
ううう、まあ、ううう。 |
糸井 |
敢えて言えばね。 |
内田 |
そりゃ、人から言わせれば、持たないものの苦労と
持つ苦労で、おまえのやってるのは
いい方なんだから少しくらい苦労したって、
って言ったってやっぱり大変なんですよね。 |
糸井 |
そりゃ言われ方違いますよね。 |
内田 |
私の作ったICOTの中のムラは、
私の担当がハードウエアだったから、日本的。
ドラえもんくんは、ソフトウエア担当だったから
もっと近代的というか、
合理性のある村だったと感じました。
ほかの人の協力もあったけど
私とドラえもんくんが村作りをやったと思います。
世界中から人を集めての村作りですね。
でも、今、ドラえもんくんは大変みたいで。
彼のホテルの近くにべつのホテルができたとかで
彼のところが影響受けちゃって
さらに最近、日本景気悪いから大変、
と言ってました。
たたまなきゃいけないとか
苦労してるようでしたけどね。 |
糸井 |
たたまないやり方ってないのかなって、
僕らはおもしろがりますけどね。 |
内田 |
彼の才能をもってすればやりようは
あるでしょう。
ドラえもんは、便利な道具をいれてる
秘密のポケットを持ってますから。
それにまあ、他人事ですからね。 |
糸井 |
他人事だからねー。 |
内田 |
第5世代プロジェクトのときも
技術的問題で、よい解決策が無くて
ピンチの時は何度もあって
彼は、それを切り抜けてきたんだから。
例のポケットのアイディア出して。
どうも話聞くと、まだ余裕はある感じ。 |
福嶋 |
すごい方っていうのは、よく頭の中、
わかんないんですけど、
そのドラえもんさんって方は、
一緒にあまりお仕事したことないんですけどね。
とにかくメールで質問しますよね。
それがどんなことであれ、
メールを送った5秒後ぐらいに、
すばらしい答えが、だーーっと届くんです。
だから、考えてることと、
話すことと手の動きが同時に起こってて、
それが寸分の狂いもない、
完全な回答となってるような、
そこら辺で私は、賢いと思ってしまうんですけど。 |
内田 |
すぐ答が出てくるときはそうなんです。
でも、さらさらと答がでてくるところは
どう出しているのかなあ、なんて思いながら
見てるとおもしろい。
でも出ない時や、都合の悪いときは
音沙汰無し、これもおもしろい。
年は若いけど、対等かそれ以上の
パートナーとしてみてるから、
冷ややかに見物できるわけで
そういう関係があるのもおもしろいですね。 |
糸井 |
賢い人って、何したいんだろうね。
そのドラえもんさんなり。 |
福嶋 |
ねぇーー? |
内田 |
何したいんだろうね、あいつね。 |
糸井 |
誉められるより愛されたいって
いうんじゃないのかね。 |
福嶋 |
プレゼンテーションが異常に上手な方です。 |
糸井 |
しかも? はぁーー。 |
福嶋 |
ほんとにどこから見ても
非の打ち所の無い才能って感じかな。 |
内田 |
いや、彼のプレゼンテーションというか、説明は
考えようによっては、労力をミニマムにしようと
してるとも思えるわけで、ちょっとずるい感じ(笑)。
私が余計な説明をくどくどやり過ぎると言われる
逆の形かもしれないけど。 |
福嶋 |
最小限の力で最大限の効果を出す方法を
天分として持っている。 |
内田 |
私がOHP10枚作るところを、
彼は5枚しか作らない。
私が20行書くときに…… |
福嶋 |
3行ぐらいで終わってますよね。
言葉をポンポンポンと並べ、
適格な図を示し。 |
内田 |
ちょっと悪い言い方をすると
ここまでの説明で分からない人は、
分からなくてよいと見切ってる感じがするんですね。
それは、彼の住む世界がソフトウエアの世界だから
かもしれないですね。
ソフトの世界は、やはり概念の世界だから
分からない人にはいくら説明しても
分からないということが多いですよね。
私なんかは、ハードの世界だと、
その人の能力レベルに合った仕事って必ずあって、
だから、なるべく多くの人を
惹きつけた方がいいから、
できる限りのサービスをしちゃう…。 |
糸井 |
そこに色気がない? |
内田 |
いや、色気を出して、できない人を集めても
邪魔になるだけだという考え方でしょう。
ソフトの世界ってそういうところだから。 |
糸井 |
趣味じゃないんじゃない?
そのドラえもんさんって人に一人でも多くの人に
分かるようにしろって言ったら、
ストレスなわけでしょ? |
福嶋 |
表面的にはすべての人がわかるような言葉を
しゃべっているんですけれども、
聞いててその中味を理解している人が
何パーセントいるんだろうというぐらいの
高度な話をやさしい言葉で話してくれるんですよ。
ところが話のレベルが高すぎてわからない。 |
内田 |
その辺は、ドラえもんくんとは
時々話すことありますけど、
彼としては、私がいうような人を見切ってる
つもりは無くて、最大限親切な説明をしてる
というんですね。考えてみると、
私のボスにもそういうところがある。
彼の人生の周囲にいた人が
やっぱりみんなインテリジェントな人で
自然と意識しないうちにそういうやり方が
身についちゃったという感じ。 |
糸井 |
そういう人ばかりに囲まれたんでしょうね。 |
福嶋 |
嫌う人もいないんじゃないですか? |
内田 |
ボスの例でいうと、
その講演を聞いている人の半分は大感激。
残りの半分は、全く意味不明だったということが
よくあるわけで、意味不明の方に入っちゃった人は、
親しくなろうにも近づけなくなっちゃう。
特にボスだったりすれば嫌われちゃうし…。 |
糸井 |
学生とは接してるんですか? |
内田 |
ボスもドラちゃんも、今は
大学の先生です。 |
糸井 |
授業は持ってるんですね。 |
内田 |
授業の評判もよくて、卒論の学生や大学院生を
十数人抱えてる。
その学生達は、大感激グループだから
見るからに出来る。
もちろん、落ちこぼれグループは、
ボスの研究室なんか来ないでしょうけどね。 |
糸井 |
そういうさ、できる人が絶えず、
あるパーセンテージいるってこと自体が
おもしろいですね。どんなに教育水準が下がっても、
いるんですよね。 |
内田 |
ICOTは、大手コンピュータメーカから
若い研究者を集めたんですけど
当然そういうことが起ったわけですよね。
私なんかは、さっきの村作りでいうと
落ちこぼれ担当でしたね。
でも、落ちこぼれと言っても
原理や概念の抽象的な話は分からなくても
話が具体化してハードのレベルになったら
設計や実装は得意という人も多いわけで
そういう専門職的な人なわけです。
そういう人の担当というわけですけど。 |
糸井 |
ほう、担当なんですか。 |
内田 |
プロジェクトの中間位の時点になると
毎年、人の交代があって、新人が来るわけです。
新人達をどの研究グループに配属するかは
本人の意向とか、研究グループの他の人との
相性とかが大事ですから
いくつか候補になるチームを選んで、
見させるわけです。
最初はみんな戦力として取りたいから、
毎日新人達のとこに行って、
こういう研究おもしろいよ、と親切に説明してね。
だからまあ、にこにこしてるわけです。 |
糸井 |
うん。 |
内田 |
3ヶ月くらい…、ま、1ヶ月か、にこにこしてる。
そのうち新人の中に、
どうもみんな話をいろいろしてくれるんだけど、
わかる話がないんですよ。と言い出すヤツが
出てくるわけですよ。 |
糸井 |
ふんふん。 |
内田 |
こりゃやばいなーと思ってくるわけです。 |
糸井 |
新入生の勧誘みたいですね。 |
内田 |
そうそう、それでそのうちね、最近室長含めて、
話し掛けに来る人がいなくなって
きたんですよね、っていう話になるわけ。 |
福嶋 |
内田さんに相談に来るわけですね。 |
内田 |
その頃、私の家族は筑波の研究学園都市に
住んでて、ICOTへは、単身赴任だったんですね。
ICOTは、2LDKを借りてくれて、一緒に筑波の
電総研から来た人と住んでたわけ。
そのうち他の人は奥さん達も東京へ引っ越してきて
2LDKから出て行って、住人は私一人になっちゃった。
ウチの奥さん、冷たいから…。 |
糸井 |
(爆笑) |
内田 |
そうすると、2LDKがガラガラになった。 |
糸井 |
(笑いながら)自分だけのものになっちゃった? |
内田 |
そのうちICOTの若い連中がそこへ
転がりこんできた。
彼らの親会社って、川崎とか結構遠くて
彼らの宿舎ってもっと遠い。
独身だから、無理に帰るより、ICOTから歩いて
5分の2LDKへ定住する方がずっと便利
ということになっちゃった。
2LDKですから、一部屋、私いただければ
他はみんな、ゴロ寝で。
夜になると飲みながら
いろいろ話をはじめて、
まあ普通は、みんな若いから、
車の話とか女の子の話とかするんですが、
新人が悩みを打ち明けるということが起るわけです。 |
糸井 |
ほう。新入生がね。 |
内田 |
昼飯くらい誘ってもらってんだろ、っていうと、
最初はそうだったんだけど、
そのうちね、だんだんひどくなって、
昼飯にも誘われなくなったとかね。
いろんな会議なんかでも
最初は「来い、来い」といわれて出たんですが
どの会議に出ても、よくわかんないんですよね、
っていうわけ。
新入生のほとんどは、どこかの研究グループへ
行っちゃんだけど、そうじゃないのがやはり
少しは出てきちゃう。
そのうち、会議があるっていうのも
教えてもらえなくなっちゃうわけ。
いるだけ邪魔だから。
誰もここんところ、口利いてくれる人が
いなくなりましたって。
どうしたらいいでしょうって。
以前からいる研究者も、みんな
難問を抱えて自分自身が生きていくのが精一杯
の状態だから、特にいじめをしてる訳じゃないん
だけど。
第五世代プロジェクトは、理論の組み立てや
ソフトウエアが先頭を切ってたわけで
その分野にそういう人が、また出やすいんですよね。 |
糸井 |
はい。極限ですよね。それはもう。 |
内田 |
特に面倒見のよい人に付けてやるとか
するんだけど、新人の方もICOTへ来るまでは、
優秀な誉高かったりするので、プライドも
傷つくし…。
最後は、親会社にもどってもらうとか
したんですよね。 |
糸井 |
そうか、そういう場所なんですね。
帰る場所はあるんだけれど…。 |
内田 |
会社へ戻れば、ノイマン型の普通のコンピュータ
の世界ですから、また、優秀研究者に戻ることも
可能なわけで…。 |
糸井 |
虎の穴なわけだ。 |
内田 |
やっぱり。
さっきのドラえもんさんみたいな人は
問題無いけど、そういう人は少なくて
紙一重的なのが多いから、
なんか得意技がないと |
糸井 |
一重下っていうものがあったらもうおしまいなんだ。
一重上じゃないと。 |
内田 |
いや、紙一重というのは、ある分野に限って
気違的にできるという意味なんで、
そのレベルを紙一枚超えちゃうと、
ホンモノになっちゃうわけで…。 |
糸井 |
そっか。そっか。 |
内田 |
一枚下なんですよ。ぎりぎりなんですよ。 |
糸井 |
で、それよりちょっとまた下だと、
もうだめなんですね。 |
内田 |
ちょっとぐらいだったらいいんですけど、
今の話はかなり下ですよね。 |
糸井 |
やっぱりそうですか。 |
内田 |
当時、ICOTは私のボスを頂点とする
研究グループがあったわけですが
当然通常の会社のような事務局が
あって、総務や経理部門がありました。
そちらのトップが専務理事で、通産OBの
人なんですけど、その人は、研究のことは
わからないけど、研究者の出来、不出来と
出身校の関係などを分析していて、
ええと東大、要するに旧帝大と、東工大と
早稲田、慶應以外は
大学だと思ってなかったですからね。
私自身、電総研にいた時は、
ほとんど学歴主義はなかったんですけど
ICOTへ来て、そういう人のマネージャを
10年近くやって、すっかり学歴重視になって
しまった。
はみ出しても、やはり基礎的知識はないとね。 |
糸井 |
恐いなあー(笑)。 |
内田 |
ICOTの中に、日本文化の伝統に
乗っ取った村作りをやったということですけど
メンバーは外人も含んでますから、世界の中へ
日本の村を押し出した感じ。
学歴主義の話をしましたけど
これは一種の競争主義の反映とも言えるわけです。
やはり、有名大学へ入るためには、受験の良し悪し
は別として、努力と忍耐が必要なわけで、
第5世代コンピュータのような、回答の準備の
されていない状況で問題を解かなくちゃいけない
状況では、受験なんて軽々と通り抜けて来た人
の方が、やはり、マネージャとして使ってみると
効率がいいわけですね。
ICOTへは、結構、いろいろな大学の人が
来てました。正規の研究員以外でも
外注のソフトウエアハウスの人とかも来ました
から、多くの私立か地方大学の人とも仕事を
したわけです。
そういう数多くの大学出身者を見た結果、
学歴主義者になってしまったというわけですね。 |
糸井 |
そうですか。 |
内田 |
電総研では、ICOTより、もっと入るのが
難しかったですから、東大、あと旧帝大と
早稲田と慶應あたりがメインで
それ以外は少なくて、そういう所を出た人の
中でのバラつきをみていたわけです。
だから東大出ても、パッとしない人も多く
見たし…。というわけで、学歴主義では
なかったんですけどね。
でも電総研では、人の能力には色々な面がある
ということを、きつい現実を通して、
勉強させられました。
やはり、新しい発想を展開して、
忍耐強くそれを細かくつめてゆける人が
一番良いわけで、生き残っていくんですが
受身的になってアイデアの出なくなる人が
多いわけです。でも公務員だから、辞めさせられる
ことはない。研究費と人件費は別建てなんですね。 |
糸井 |
ふーん、あ、そうなんですか? |
内田 |
今は、公務員は削減が進んで、必要な人まで
いなくなってますが、昔は、受身的な人とか
人をサポートするのがうまい人というのも
いたんですよ。
そういう人は自然と実験道具のセットアップ
とか、後片付けとかやる。
お客が来た時の接待とか。 |
福嶋 |
お茶沸かすとか? |
内田 |
お茶沸かすのは、下手なやつが沸かすと、
かえって…。 |
糸井 |
困る(笑)。 |
内田 |
解答の準備がされていない研究の世界で生きる
わけですから、何かを作り出せないといけないわけで
それができないと、研究費を使わせてもらうとか
人を使うとかやらせてもらえない。
コンピュータ使うのと、本を読むのは
お金がかからないから、それをやる。
だから計算機を使って沢山本を読んで、
ほら、読書は好きだしもともと能力あるわけだから。
生き字引みたいな人間になるんだけども
なんにも作り出せない。 |
糸井 |
つまり教頭先生みたいな人が
どんどんできちゃうんですね。 |
内田 |
頭はいいんですよ。生き字引だから、
わかんないときに、
こういう問題があるんだけどっていうと
「それはこの本の何ページに書いてある」
ってすぐ出る。研究者として、
何か始めると、当然、解答の準備がされて
いない問題にぶち当たる。そこで
なんか新しいアイデアを出しなさいっていう
命題に対して、まったく無関心っていうのが
できちゃうんですよ。 |
福嶋 |
つまり、作れるか作れないかが線ですね。 |
内田 |
不思議なことにね。で、受験秀才で来たって、
すごく恐がるんですね。
りっぱな解答以外は作っちゃいけないと思ってる。
だから解答らしいものが出せても
正しいという確信ができるまで
出さなかったりする。
受験の問題なら解答集があるけど
研究ではそうはいかない。 |
糸井 |
一度、成功体験があったりすると、
また変わるんでしょうね。 |
内田 |
今はだんだんそうで無くなっているけど
研究の評価は、まず論文を書くことで
決まるんですけど。
論文なんてのは10年に1つ書きゃいいんだとか
主張するんですね。
まあ紙くずを増やすよりはいいという人も
いるけど、やはり、まずアウトプットしないと。
で、20年たっても1つも書いてない人とか
でてきちゃう。
大作を作ろうと思うから、
下書きばっかりいっぱいできちゃうのね。 |
糸井 |
それはよくほら、ドラマに出てくる
小説家になるはずのホステスのひも、ですよ。 |
内田 |
そうですか。
コンピュータ、特にソフトウエアや理論の世界は
抽象的だから、受身的になってしまうケースが
結構でますけど、また別のダイナミックな実験科学
の世界もあって。
そういう世界もまたおもしろいですよ。
電線を超低温にして磁石の中に入れると
電線の抵抗がゼロになるんです。
そこへ電流を抽入してやると
永久にグルグル回っていて、電池のように
電気を貯めておけるんですね。
でも電気の出し入れの時など、急に
この安定状態が崩れて、熱が大量発生する…。 |
糸井 |
急激に。 |
内田 |
電線のコイルは、デュアービンという
鋼鉄製のビンに入れておくんですけどね。 |
糸井 |
はい。 |
内田 |
危険なんですけど、爆発の可能性は
避けられないわけです。
それがまた、おもしろいんだよ。 |
一同 |
(笑) |
内田 |
要は、垂直に、丸く深い穴を掘って
その底にデュアービンや装置を入れるんですね。
そうすると爆発しても、爆風は垂直に飛び出して
周囲への影響は無いわけです。 |
糸井 |
うんうんうん。 |
内田 |
回りに破片が散らないんです。
まともに天井、バーンってぶち抜くだけなんですね。 |
糸井 |
はー。すごい威力なんですか、やっぱり。
ぶち抜きますか。 |
内田 |
そういう実験やる部屋は平屋ですから。
天井もヤワにね。
どうせ爆発するだろうと作ってあるから。
すると穴いくつ開けたかとかね。
そういうことやってる人は楽しそうに見えますね。
研究もいろいろあって。
その人の性格と一致した研究をやってる人は
ハッピーですね。 |
糸井 |
ほんとに趣味になってたりして。 |
内田 |
もちろん爆発させて喜んでるわけではなく
安定状態をどうしたら、破壊しないか考えて
コイルにする電線を女の子のお下げ髪を
編むみたいに三つ編みにしたり、四つ編みに
したり、電線の材質を変えたり
物と一体になって作業してるんです。
毎日、毎日。 |
糸井 |
少しでも退屈じゃなくやるため? |
内田 |
本人はまじめに、でも楽しそうなんだよね。 |
糸井 |
そういう人担当だったわけですか? |
内田 |
それは元いた古巣の話で。 |
糸井 |
あー、そうか。 |
内田 |
第五世代のときはコンピュータだけですから。
それにハードの組立ては、メーカの工場に頼み
ましたから、ICOTでやっていたのは
理論作りとか、ソフトウエアとか、
ハードの設計とか、まあ、頭脳労働がほとんどで
その分、ストレスが貯まりやすい抽象的な
研究テーマが多かったということですね。
でも今、息子達が受験勉強してますが
我々の時代よりさらに型にはまった解答を
丸暗記すればよいような方向に
受験が進んでいるのは、気懸かりですね。
(福嶋註:第5世代の詳細に
ついてはhttp://www.icot.or.jp/をご覧下さいね)
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