![第30回 「ぬ」に送られた読み札たち 第30回 「ぬ」に送られた読み札たち](images/vol30.gif)
![ぬかづけ みそしる しろいめし ぬかづけ みそしる しろいめし](images/vol30_card01.jpg)
おいしく漬かった糠漬けに、
湯気の立つごはんとおみそしる。
もう、これだけあれば‥‥とウットリしてしまう日本人、
決してすくなくはないと思われます。
シンプルで力強い日本の食の一枚を紹介しつつ、
はじまっております「カルタ・ド・ニッポン」。
2008年末から2009年頭にかけてあらためて募集した
「ぬ」「ね」「む」「め」「よ」「ろ」
ではじまる読み札には、びっくりするほど
たくさんの投稿をありがとうございました!
今回、ご紹介させていただくのは、
「ぬ」に寄せられた読み札です。
たしかに、「ぬ」ではじまる言葉、
そんなに多くはありませんよね?
にもかかわらず、
ほんとうに多くの「ぬ」が届いております。
最も多かったのは、
冒頭に挙げた「糠漬け」をテーマにした作品でした。
続けて3作品ご紹介いたしましょう。
![ぬか床が 遺産相続 されました ぬか床が 遺産相続 されました](images/vol30_card02.jpg)
![ぬか床を 「ちゃん」付けで ぬか床を 「ちゃん」付けで](images/vol30_card03.jpg)
![ぬかどこを 連れてゆく ぬかどこを 連れてゆく](images/vol30_card04.jpg)
どれも糠漬けへの並々ならぬ愛情があらわれています。
糠漬けの作品は、まだまだ。
・ぬか床は一日にしてならず
・ぬか漬けと新米
・ぬか床の おすそ分け
・ぬか漬けが 残っているから もう一杯
・ぬか漬けのうまい 定食屋
・糠漬けを しゃもじで混ぜる 寒い朝
・ぬか床 たまには 声かけて
「糠漬け」のラストは、こんな一枚をどうぞ。
![ぬか漬は 苦手なんです、 お義母さま。 ぬか漬は 苦手なんです、 お義母さま。](images/vol30_card05.jpg)
このシチュエーションって‥‥
嫁と姑の、あれですよね?
新旧のライフスタイルが
日本の家庭内で糠漬けをめぐってぶつかり合う、
バチバチの緊張感が伝わってきました。
さて、「糠漬け」の次に多かったのが、
これについての読み札だったのです。
![ぬらりひょんって なんかすごい ぬらりひょんって なんかすごい](images/vol30_card06.jpg)
ぬらりひょんというのは、妖怪のことです。
なんでこれがこんなに多かったのでしょう?
メールボックスにずらりと並んだ「ぬらりひょん」の文字。
かなり奇妙な光景でした。
・ぬらりひょん 名前だけなら 知っている
・ぬらりくらりと ぬらりひょん
妖怪ブームということもあるのでしょう、きっと。
『ゲゲゲの鬼太郎』にも登場しますものね、ぬらりひょん。
・ぬらりひょんが 好き
・ぬらりひょんに 逢いたい
ああ、好きなんですねえ、ぬらりひょんが‥‥。
・ぬらりひょんに あいたくて 旅にでました
・ぬらりひょんに なってみたい
そ、そんなに好きなんですか‥‥。
・ぬらりひょんが そこに
・ぬらりひょんが居た。
‥‥ついに、目撃者が。
実は「妖怪」の読み札はこれだけではありませんでした。
「ぬ」ではじまる妖怪は、ほかにもうひとつ、
おわかりでしょうか‥‥。
![ぬりかべを ふと思い出す 帰り道 ぬりかべを ふと思い出す 帰り道](images/vol30_card07.jpg)
これには、思い当たる感覚がありました。
・ぬりかべに 道塞がれた
という投稿作もありましたが、
・ぬりかべは けっこう有名な妖怪
ですので、幼いころ、
みちくさをした夕暮れの下校途中に、
ふとそんなことを思って駆け足になったような‥‥。
ぬりかべの読み札は、ほかにも。
・ぬりかべって いいたくなる
・ぬりかべに 似たる こんにゃく
・ぬりかべに 似ている 上司
妖怪の読み札はこのくらいにしまして、
「ぬ」の読み札、どんどんまいりましょう。
![抜け穴 近道 石榴の実 抜け穴 近道 石榴の実](images/vol30_card08.jpg)
石榴、むずかしい漢字ですがこれは「ザクロ」ですね。
秋の景色が思い浮かぶ、きれいな作品です。
「抜」という字でくくられる、「ぬ」の作品をいくつか。
・「ぬけたい」と言えぬ 日本人
・抜けた歯を 大事にしまう
・抜け殻を 手にとり思う せみの声
・ぬいた野菜は まだちいさい
・ぬかせない 改札、行列、年功序列
なぜだかここは、
しみじみと日本人らしい作品が多く並んだ気がします。
![ぬきあし、さしあし、 しのびあし。 昔の泥棒はかわいいな。 ぬきあし、さしあし、 しのびあし。 昔の泥棒はかわいいな。](images/vol30_card09.jpg)
ほんとだ、泥棒なのにちょっとかわいい感じ。
泥棒つながりで、こんな札はどうでしょう。
![盗人猛々しいとは、 「子」のことだ 盗人猛々しいとは、 「子」のことだ](images/vol30_card10.jpg)
久々に言いたいだけの札?
と思いきや、よくよく味わえばそうでもないようで。
なかなか味わい深い作品といえるのではないでしょうか。
続きましては、
「濡」という字でくくられる「ぬ」の作品を。
![ぬれせんべいの 歯ごたえ ぬれせんべいの 歯ごたえ](images/vol30_card11.jpg)
![ぬれせんべいへの 探究心 ぬれせんべいへの 探究心](images/vol30_card12.jpg)
ぬれせんべいの作品も多数でしたが、
とくに印象的だったのが上の二枚。
はじめてぬれせんべいを食べたとき、
「そうきたか!?」とびっくりしましたよね。
その感覚が含まれているのを選んでみました。
![ぬれた瓦が 光ってる ぬれた瓦が 光ってる](images/vol30_card13.jpg)
![ぬれた 犬のにおい ぬれた 犬のにおい](images/vol30_card14.jpg)
と、この2作品も印象的。
どこがどう印象的かという解説は難しいのですが、
どちらも、その光景が、匂いが、
体に直接伝わってくる作品だと思いました。
で、わかりやすいのはこちら。
![濡れ場では 話をそらす両親 濡れ場では 話をそらす両親](images/vol30_card15.jpg)
思い当たりますよねー。
漢字を変えて続けます。
「温」、「ぬるい」「ぬくい」として
寄せられた作品も多数でした。
・ぬくいこたつでアイス
・ぬくもり残る 布団で 二度寝
・ぬくもりは 3億円でも 買えません
・ぬくぬくは、肉まんのちょうどよさ
やはり「温」ですから、
ほのぼのとあたたかい作品が並びます。
・ぬるま湯に 由美かおる
という言いたいだけ札も
元気いっぱいで届いておりましたが、
「温」の締めには、こちらをどうぞ。
![温水さん‥‥ あ、間違えました。 温水さん‥‥ あ、間違えました。](images/vol30_card16.jpg)
現代の日本で「温水さん」といえば、
まずまちがいなく俳優の
温水洋一(ぬくみずよういち)さんのことなわけで‥‥。
なにをもってして、この人は
温水さんに間違えられてしまったのか‥‥。
たいへん味わい深い読み札です。
![ぬるっとした 美味いもの ぬるっとした 美味いもの](images/vol30_card17.jpg)
あります、日本には。
ぬるっとしたおいしい食べ物が。
納豆、里芋、山芋、ジュンサイ、ナメコ、メカブ‥‥。
「ぬるぬる」「ぬめぬめ」ではじまる読み札も
かなりたくさん寄せられました。
・ぬるぬるを 楽しんで食べる
・ぬめりも味の一部です
・ぬめりを食べて 健康
・ぬちゃぬちゃと 朝の食卓 BGM
今回の最後に、
気になりました「ぬ」の札を
続けて4作品ご紹介いたしましょう。
![ヌンチャクで、自爆。 ヌンチャクで、自爆。](images/vol30_card18.jpg)
時をこえて、
ブルース・リーの影響ってすごい。
ヌンチャクって、沖縄発祥という説もあるそうですよ。
![主がいる 沼にも池にも 主がいる 主がいる 沼にも池にも 主がいる](images/vol30_card19.jpg)
最初に連想するのは、河童でしょうか。
あとは大きなナマズとか。
たしかに日本には、
各地に主(ぬし)がいると思われます。
![ぬい針が 一本足りない ぬい針が 一本足りない](images/vol30_card20.jpg)
大奥では、針をなくすと大変なことに。
有名な史実です。
![ぬん、 と出ている 銭湯の煙突 ぬん、 と出ている 銭湯の煙突](images/vol30_card21.jpg)
ぬん、という表現がすてきでした。
というわけで、
「ぬ」の読み札はこんなところで。
ここまでお読みいただいてお気づきでしょうが、
以前の「キープ札」の制度は廃止しております。
今回、選ばせていただいたのは、
一次予選のようなものとお考えください。
「ね」「む」「め」「よ」「ろ」まで
一次予選を行いましたら、
そこでまた委員長・糸井重里による
最終選考会を行います。
さあ、いよいよ、
ひとそろいの読み札がそろいそうな予感。
なにしろむずかしい「ぬ」に
こんなに投稿があるとは思いませんでしたから。
もちろん、「ね」「む」「め」「よ」「ろ」にも
たくさん届いておりますよ。
次回、
「ね」に送られた読み札たちの発表をおたのしみに!