ねことクリエーターをテーマにしたWEBマガジン、
ilove.cat(アイラブドットキャット)」。
ねこ大好きな方は、とっくにご存じ、かも。
でも、ねこにそれほど強い思い入れがない人だって、
こんな素敵な写真が並んでたら、
引き込まれちゃうでしょ。 

「ねこの写真とインタビューが載ってます」って、
文字にするとふつうですけど、
ここにしかない魅力がたっぷり。

そんな「ilove.cat」の魅力の秘密を
ときあかす‥‥というほど、力は入れず、
主宰している服部さんに、いろいろうかがいました。

(聞き手・ゆーないと

  • 服部円(はっとり・まどか)

    編集者 /「ilove.cat」主宰

    武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。
    ファッションやカルチャー誌の編集をしながら
    2011年にねこ好きのクリエーターたちと
    「ilove.cat」を創刊。
    最近の主な仕事として、
    書籍「猪熊弦一郎描画集 ねこたち」(リトルモア刊)編集など。
    福島・三春シェルターからやってきた
    愛猫 スカイ(8歳、オス)と暮らしている。
    https://www.instagram.com/madokahattori/
  • ilove.cat(アイラブドットキャット)

    2011年に創刊した、
    ねことクリエーターをテーマにしたWEBマガジン。
    ねこ好きのクリエーターたちが集まり、
    飼い主へのインタビューや美しい写真などを通して
    ねこの魅力を発信している。

    その活動はWEBマガジンのみならず、
    書籍版「ilove.cat」(リトルモア刊)の発行や、
    BEAMSとコラボレーションしたねこグッズの企画、
    和菓子屋「とらや」とコラボレーションした
    イベント 「甘いねこ展」の企画・プロデュース、
    「猪熊弦一郎展 猫達」への協力など、
    ねこにまつわる様々な活動を行っている。
ねこがあいだにいるおかげで。
ゆーないと
まず、「ilove.cat」を始めることになった
きっかけを教えていただいてもいいですか?
服部
まず、創刊当時は、仕事がちょうど暇で(笑)、
なにか新しいことをやりたいなと思っていたんです。
もともと私は編集の仕事をしているんですけど、
いろんな取材をするとき、
相手がねこを飼っている方だと、
やっぱり、ねこの話になることが多いんです。
でも、その話は、たのしく盛り上がるんですけど、
取材のテーマとは関係ないので、
どうしても記事には載せられない。
ゆーないと
ああ、そうでしょうね。
服部
でも、その人を知ってもらううえで、
その「ねこを通して素の生活が見えたりする」
っていうのが、実はけっこう大切だし、
なによりおもしろいのになあ、と思っていました。
なので、ねことの素の生活を紹介する
ブログのようなものがつくれないかということで、
知り合いのクリエーターたちと集まって、
普段の仕事のスキルを持ち寄る形で実験的に始めました。
▲服部さんのお家のスカイさん。この日の取材はご自宅にて行いました。
ゆーないと
それまでって、「ilove.cat」のように、
おしゃれにいろんなねこを紹介するウェブマガジンは、
ありそうでなかったですよね。
服部
他の方がやっているねこブログなども見てはいたんですが、
少しファンシーな女の子趣味の強いものが多かったんです。
あるいは、1匹の飼いねこのことだけを
記録したブログとか。
だから、「ilove.cat」ではもう少し落ち着いた感じで、
サイトのデザインもシンプルかつ見やすさを重視しながら、
いろんなねこを紹介したいと思っていました。
ゆーないと
かならず、おうちにうかがってらっしゃいますよね。
服部
それは、「ilove.cat」を起ち上げたときに
いちばんこだわったところでした。
「絶対、飼い主の家に伺って取材する」。
SNSとかでねこの写真を見るときって、
ねこだけじゃなくて、ねこの周りにあるインテリアとかも
ねこと同じように見ちゃいますよね。
「あ、こういう机と椅子にしてるんだ」とか
「トイレはこうしてるんだ」って。
ですから、写真にそういうものが
自然に写り込むようにして、
ねことの生活を感じられるようにしたかったんです。
クリエーターの方は、ねこがいても
インテリアをおしゃれにそろえていることが多いので、
そういう意味ではインテリアも
ねこと同じくらいしっかり見せたいなと思って、
取材しています。
ミロコマチコさんの愛猫・ボウさん photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
青山有紀さんの愛猫・ガルさん photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
ゆーないと
リアルな生活を感じられるようにするということと、
クリエーターのインテリアを見せるということが
ポイントなんですね。
服部
そうですね。
あと、もうひとつこだわっているところは、写真です。
ネット上にねこの投稿写真は
たくさんあると思うんですけど、
プロのカメラマンさんが撮った写真って、
やっぱり違うので。
ゆーないと
本当にそうだと思います。
服部
写真のクオリティを高めたという点では、
ねこをテーマにしている他のウェブサイトさんと比べて
新しかったところかもしれませんね。
酒井駒子さんの愛猫・ミツさん photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
ゆーないと
取材のときは、ねこがあいだにいると、
会ったことがない人の家にでも比較的行きやすいですか?
服部
それはありますね。
取材を受ける側も受けやすいと思います。
「家の取材はだめ」って断られることもあるんですけど、
逆に、「家の取材は基本的に断ってるけど、
ねこだから家の取材もやっていいよ」
って言ってくれる人もいるので。
ねこがあいだにいることで、
取材した人との心の距離も近くなるんです。
普通の取材では見れない姿が見れたり、
裏話が聞けちゃったりして。
ゆーないと
たしかに、じぶんじゃなくて、
ねこの取材だと、ずいぶん気楽になる気がします。
服部
取材のあともいい関係が続くことが多いんです。
私、「ilove.cat」以外のメディアでも
取材のお仕事をすることがあるんですけど、
そのときは主に現場でお会いしてお話を聞くだけなので、
相手の方とそのとき限りの関係になりがちなんです。
だけど「ilove.cat」の取材では
相手のお家に伺ってお話をするので、
別の機会でお会いしたときに
覚えていてくださったりするんです。
そうやってつながりがまたできてくるのが
おもしろいですね。
ゆーないと
それはいいですね。
服部
一方で、ねこを取材しているからこそ
考えさせられることもあって‥‥。
ねこの取材をはじめてから5年経つんですが、
その間取材したねこのうち、
何匹かは、もう、亡くなっているんですね。
でも飼い主の方からは、
「うちのねこを撮ってもらえて、うれしかったです」
って言ってもらえたりもして。
そうやって言っていただけることは、
ありがたいことであると同時に、
ねこは人間よりとても寿命が短いんだな、
ということを考えさせられます。
ゆーないと
私もそういうことを考えちゃって、
切なくなることがあります。
でも、たくさんのねこたちとの出会いとか、
楽しさもありますよね。
服部
そうですね。
オーラがちがうねこ。
ゆーないと
これまで様々なクリエーターの飼いねこや、
有名ねこの取材をされてきたと思うんですけど、
最近では相撲部屋で飼われている
ねこの記事が話題になりましたね。
服部
もともとは、
「欧米の観光客が訪れる相撲部屋」という内容で、
荒汐部屋のことがネットの記事に書いてあったんです。
その中に、親方と一緒に力士を見守る
「モルちゃん」の写真が1枚だけ載っていて、
「このねこはオーラがちがうぞ」
と思って取材を申し込みました。
実際に会ってみたら、やっぱりすごく存在感があって。
photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
▲九州からやってきた、荒汐部屋の看板ねこ。力士の稽古中はじっとして稽古を見守っている。
親方にワガママを言うことができる唯一の存在。(photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat)
ゆーないと
他にも、印象深いねこはいますか?
服部
やっぱり「どんこ」ですかね。
ゆーないと
あぁ、「どんこ」(笑)。
▲写真に映るおしゃれなインテリアとブサカワな表情のギャップで人気に。
珍しいことにおならをするねこである。
(photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat)
服部
どんこは、すごく社交的なんです。
ねこって、人の家に連れてこられると、
隠れたり逃げたりすることが多いんですけど、
どんこの家に来たねこは、
すぐに心を開いてなかよくなるんです。
ゆーないと
すごいですよね。
服部
はい。どんこは、ねこも人も惹きつけるんです。
うちの猫もたまに預かってもらったり、
どんこを通して、いろんな交流が生まれています。
それって、ねこの存在を象徴しているかも、
という感じがして、印象的でした。
photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
ねこと人はどうして一緒にいるのか。
ゆーないと
実際に、ねこを中心にした集まりって
あちこちで生まれてますよね。
服部
そうですね。
飼い主同士のコミュニティは増えてます。
ねこって、基本、家のなかにいますから、
飼い主同士も家に集まることになって、
それでグッと距離が近くなって仲良くなりやすいんです。
ゆーないと
そうやってそれぞれのねこと飼い主さんを見ていると、
ねこに対する接し方や、ねことの関係も、
人によって違いますよね。
服部
家族やパートナーみたいになっている人もいますし、
子どもみたいになっている人もいますね。
でも「やっぱり獣だよね」って言う人もいます(笑)。
人によってぜんぜん違う。
それがおもしろいですよね。
獣っぽい感じはしつつも、
2歳児くらいの知能があると言われているので、
なんとなく会話ができているようにも思えますしね。
ゆーないと
服部さんもご自宅でねこを飼っていらっしゃいますが、
仕事から離れたとき、
ねこにはどういう姿勢で接しているんですか?
服部
うーん、飼いだした当初は、
雄猫は甘えん坊だといわれているので、
恋人みたいな感じになるのかな
と思ったんですけど、全然ならなくて。
「ねこじゃ全然埋まらないものがある」
って気づいたんですよね(笑)。
友達、家族、恋人とは違う、新たな関係を発見しました。
でもそれは、飼っている人じゃないとわからない。
飼っていない人からすると、
なんでこんなにインスタグラムとかに
ねこの写真をアップしているんだろう
って感じると思うんですよ。
でも、ねこがいるとアップしちゃうし、
やっぱり他の人のねこの写真も見ちゃうんですよね。
ねこの方が犬よりがインドアなのも、
そのことに関係しているかもしれません。
ゆーないと
ねこは犬と違って
散歩とかなかなかしてくれませんしね(笑)。
服部
たまに散歩するねこもいますが、
なかなか難しいですよね(笑)。
そういえば、最近、料理研究家の
桑原奈津子さんのお家に取材に行ったんです。
桑原さんは犬もねこも飼っているんですが、
犬とねこを両方飼っている人は、
いわゆる「犬派・ねこ派」というのとは違って、
両方のおいしいとこ取りをしているって言うんです。
飼い主が遊びたいときは、
ねこはかまってくれないけど犬はかまってくれるし、
飼い主が疲れているときは、
犬は遊んでよっていうアピールを
少しくどいくらいにするけど、
ねこだと距離感がちょうどいいという感じで。
桑原奈津子さんの愛猫・小鉄さんと犬のキップルさん photo:Kazuho Maruo ©ilove.cat
ゆーないと
あー、わかります。
犬は飼い主に忠実で、
「待ってました!」という感じで接してきますが、
ねこはマイペースで、
飼い主のこともすぐ忘れちゃうって言いますよね。
服部
ねこの行動学を研究している先生によると、
ねこには「寂しい」という感情がないらしいんですよ。
お腹が空いてる、痛い、怒り、
とかいう感情はあるらしいんですけど、
「寂しい」っていう感情はなくて。
だからもしも、ねこが寂しそうに見えたとしたら、
それは人間がねこの行動を見て勝手に
「寂しがってる」って解釈しているんです。
ゆーないと
へーーー。
服部
だから、まったく役に立たない動物なのに、
どうしてねこが人間とこんなに長いこと
一緒にいられたのかって考えると、
その思わせぶりな感じがうまいのかなって思います。
ねこは処世術を持っているんですね。 
ゆーないと
たしかに、人間が好きなように
気持ちを解釈できる余地を、ねこは持っていますよね。
最後に、今後「ilove.cat」で
やっていきたいことってありますか?
服部
とにかく、いろんな人がいろんなふうに
ねこを飼っているところを紹介して、
「あ、飼いたいな」とか「ねこ、いいかも」って
多くの人に思ってもらえたらいいなって考えています。
(おわり)
2016-2-22-Mon

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