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糸井 |
さきほどのお話を聞いていて、
妙にうれしかったことは、
出発点に「お金が必要だ」っていう
切実な欲求があったということです。
つまり、ピュアなアマチュアとして
趣味を磨いていく延長上に
シルク・ドゥ・ソレイユができたんじゃなくて、
はじまりからそれは興業で、資金が必要だった。 |
ジル |
ああ、そうですね。 |
糸井 |
お金のため、というと言い方が悪いけど、
生活のためにというよりは、
自分がクリエイティブであるために
お金が必要だったわけですよね。
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ジル |
うーん‥‥
いや、生活のためでもありました(笑)。 |
糸井 |
ああ、いいですね(笑)。
ますます、いいです。 |
ジル |
竹馬に乗ってケベックを目指したとき、
私には3人の子どもがいました。 |
糸井 |
あ、そう! 3人?
それは、思いも寄らなかった(笑)。
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ジル |
子どもたちからは、
「(竹馬から)下りろ、下りろ」
って言われましたよ。 |
糸井 |
子どものころはお父さんから
「下りろ」と言われ、
オトナになってからは子どもたちから
「下りろ」と言われ(笑)。 |
ジル |
そうなんです(笑)。
そのころ、父はもう亡くなってましたが、
もしも生きていたら、
彼は私の竹馬をカットしたことでしょう。
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糸井 |
はははははは。 |
ジル |
母親はまだ生きていて、やはり、
私が竹馬に乗ることにひどく反対しました。
子どもがいるのに何をやっているんだ、
もっと真面目になりなさいと言われました。
いまさらクラウン(ピエロ)になるなんて、
おまえは愚かだと言われました。
けれども、私は、ハッピーだったんです。
私は愚かだけど、ハッピーだった。 |
糸井 |
いいなぁ(笑)。 |
ジル |
そして、無事に
ケベックまで竹馬で歩き終えたあと、
私は子どもたちのために
小さな竹馬をつくってあげました。 |
糸井 |
(笑)
(続きます。) |