糸井 いま、お話をうかがっていて、
こんなに短いあいだに、ご両親の話が、
とくにお父さんの話が何度も出てきました。
お父さんは、あなたにとって
よっぽど特別な存在なんですね。
ジル ええ、もちろん。
あなたはそうではないですか?
糸井 ぼくにとっての父親の存在は、
たぶん、あなたほど大きくはありません。
ジル そうなんですか?
糸井 今日は取材の時間も限られているので
ぼくの話はさておき(笑)。
ジル はい(笑)。
糸井 お父さんは、あなたにとって、
なにかにつけて反対する人で、
でも、あなたのことをとても
気にかけてくれている人で。
ジル もちろん、そうです。
糸井 わかりやすくとらえるなら、
あなたの前の世代、
前の時代の象徴ということもできますか?
ジル まず、私がなにを好み、なにになりたいか、
というような価値観は、
紛れもなく父親からもらった価値観です。
それはとても重要なことだと思います。
私の父は非常に信仰の厚い宗教的な人でした。
そしていつも人々を助けようという
気持ちを持っていた人でした。
その父親の、姿を変えたのが、私です。
たしかに、私のやっていることは、
父の望んだこととは違うかもしれない。
けれども、やはり私の価値観は、
父の価値観に基づいているんです。
私のやり方が父のやり方とは違った、
ということではないかと思います。
糸井 あらゆる親子は、
そういうものかもしれません。
ジル そうですね(笑)。
でも、やはり彼にとって私は十分ではなかった。
建築家になったとき、両親は非常に喜んで、
私のことを誇りに思ってくれました。
その建築事務所を辞めたとき、
私は何年間もそれを両親に隠していました。
なぜなら、両親がそれを知ると
とてもがっかりすることがわかっていたから‥‥。
糸井 思えば、「建築」というのは
少しずつ積み上げて
高いところへ行くものだけど、
「竹馬」って、一瞬で一気に
高いところに登ってしまうものですね。
ジル ああ、そのとおりです。
私は「竹馬」を選んだんです。
糸井 でも、その「竹馬」があなたを救ったんだよね。
ジル ええ(笑)。
糸井 そして、シルク・ドゥ・ソレイユを生み出した。

(続きます)





トライアウトはたっぷり1か月半。

公開直前のショーであるトライアウト公演は、
「本公演の前の2〜3回くらいなのかな?」
と思っていたのですが、そうではありません。
なんと1か月半、39回もの
トライアウト公演が行われます。
長くて、しかも、多い!

ところで、トライアウト公演の前の
最後のリハーサルでは、
広報担当、映像部長などの関係者を招き、
観客になってもらうんだそうです。
このリハーサルはLion's denと呼ばれています。
ライオンズ・デン、つまり‥‥ライオンの巣窟!!
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
カンパニーマネージャーである
マイクさんに真偽を確かめると‥‥

「イエス。まあ、ローマ時代のコロシアムを
 考えていただくといいと思うんですけども、
 映画の『グラディエーター』のような
 ああいう競技場で、
 ライオンの中にポン! と入れられるような
 そういうイメージです。
 怖いライオンの前で、とにかくみんな
 懸命にやるんです」
と、教えてくれました。
「ライオンの巣窟」と言われるだけあって、
それはそれは厳しい社内プレゼンなんですって。

「ライオンの巣窟」を乗り越えないと、
お客さまを迎え入れることは
決してしないんだそうですよ。

(スガノ)

シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
トライアウト公演は
こちらのサイト
チケットが販売されています。

2008-04-14-MON

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