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糸井 |
いま、お話をうかがっていて、
こんなに短いあいだに、ご両親の話が、
とくにお父さんの話が何度も出てきました。
お父さんは、あなたにとって
よっぽど特別な存在なんですね。
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ジル |
ええ、もちろん。
あなたはそうではないですか? |
糸井 |
ぼくにとっての父親の存在は、
たぶん、あなたほど大きくはありません。 |
ジル |
そうなんですか? |
糸井 |
今日は取材の時間も限られているので
ぼくの話はさておき(笑)。
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ジル |
はい(笑)。 |
糸井 |
お父さんは、あなたにとって、
なにかにつけて反対する人で、
でも、あなたのことをとても
気にかけてくれている人で。 |
ジル |
もちろん、そうです。 |
糸井 |
わかりやすくとらえるなら、
あなたの前の世代、
前の時代の象徴ということもできますか? |
ジル |
まず、私がなにを好み、なにになりたいか、
というような価値観は、
紛れもなく父親からもらった価値観です。
それはとても重要なことだと思います。
私の父は非常に信仰の厚い宗教的な人でした。
そしていつも人々を助けようという
気持ちを持っていた人でした。
その父親の、姿を変えたのが、私です。
たしかに、私のやっていることは、
父の望んだこととは違うかもしれない。
けれども、やはり私の価値観は、
父の価値観に基づいているんです。
私のやり方が父のやり方とは違った、
ということではないかと思います。
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糸井 |
あらゆる親子は、
そういうものかもしれません。 |
ジル |
そうですね(笑)。
でも、やはり彼にとって私は十分ではなかった。
建築家になったとき、両親は非常に喜んで、
私のことを誇りに思ってくれました。
その建築事務所を辞めたとき、
私は何年間もそれを両親に隠していました。
なぜなら、両親がそれを知ると
とてもがっかりすることがわかっていたから‥‥。 |
糸井 |
思えば、「建築」というのは
少しずつ積み上げて
高いところへ行くものだけど、
「竹馬」って、一瞬で一気に
高いところに登ってしまうものですね。 |
ジル |
ああ、そのとおりです。
私は「竹馬」を選んだんです。 |
糸井 |
でも、その「竹馬」があなたを救ったんだよね。 |
ジル |
ええ(笑)。 |
糸井 |
そして、シルク・ドゥ・ソレイユを生み出した。
(続きます)
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