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北尾 |
私がすごいなと思うのは、
たとえすごい実力を持ってる人でも、
ぜんぜん威張らないこと。
あまり経歴のない人が、
「ここがよくなかったよ」
と注意したとしても、
「わかった」
って、素直に聞いてくれる。
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河邊 |
みんな、すごく素直です。
経歴がどうのこうのというより、
人間性でつきあってる感じがします。 |
糸井 |
それはキャストだけじゃなく、
スタッフも同じなんでしょうか。 |
河邊 |
あ、それはそうだと思います。 |
糸井 |
さっき、「オー」のバックステージを
案内してもらったんですが、
あらゆるスタッフがなかよくしてる感じが
伝わってくるんです。 |
河邊 |
そうですね、あんまりぎくしゃくしないです。
ぎくしゃくしてたら
楽しくショーができないから。 |
糸井 |
ほら‥‥いまも
どこかから笑い声が聞こえる。
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河邊 |
あ(笑)。ほんとですね。
いつもこんな感じです。 |
糸井 |
テレビでシンクロチームの練習のようすを
観たことがありますが、
その印象とはぜんぜん違いますね。 |
北尾 |
私たちも、練習といえば
日本のシンクロしか知らなくて。
最初にここに入ったときには
びっくりしました。 |
糸井 |
びっくりしたのは、笑ってるから? |
河邊 |
うん、そうです。 |
糸井 |
さっき練習を見せてもらいましたけど、
楽しそうでしたもんね。 |
河邊 |
今日は新しいメンバーが入ってきたので
そのパターンの練習をしていました。
今日はけっこうシリアスにやったほうですよ。 |
北尾 |
この前のミーティングで
ちょっと冗談が多すぎるってことになって、
今日は抑え気味でがんばりました(笑)。
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糸井 |
本当に、ここは運動部の匂いがしないですね。
たとえば運動部のコーチだと
「現場では厳しくて、練習後は笑ってくれる」
というのがひとつのタイプとしてありますが、
ここではそんなことは
通用しないんじゃないでしょうか。 |
北尾 |
いろんな人たちが混ざってるからかな?
スポーツ系の人、シアターから来た人、
芸術方面から来た人、
いろんなミュージシャン‥‥
さまざまな分野からきたカラーが
混ざってるからかもしれません。 |
糸井 |
ああ、混ざるっていいですね。 |
河邊 |
そもそもシンクロの競技って、
得点を競うために戦ってるわけです。 |
北尾 |
スポーツだからね。 |
河邊 |
でも、ここは「戦ってる」というわけじゃない。
そこがいちばん大きいと思います。 |
糸井 |
つまり、競わなくっても、
「向上したい」という気持ちになれるんですね。
キャスティング前の基礎トレーニングで
おふたりともモントリオールに
いらっしゃったわけですから、
そっちの雰囲気もご存知でしょう。 |
河邊 |
私の中では、モントリオールって
全くもって違うものなんですよ。
というのも、
モントリオールのトレーニングキャンプは
いわゆる「次期候補の人」が集まって、
みんなそれぞれ練習を積んで
次のショーに行くわけです。
契約を取ってるわけじゃないけど、
オーディションではない。
だからなのか、なんだか
活気に満ちてるんですよ。 |
糸井 |
オーディションではないけど
選ばれるのを待つ‥‥複雑ですね。 |
北尾 |
でも、いつでも「見られている」という
感じはしました。 |
河邊 |
ほんとにショーに行けるのかどうかが
わからない状態で。 |
糸井 |
つらくはないんですか? |
河邊 |
つらくはなかったです。
違う世界の違う国で、
なんだかもう「くらいついていく」毎日です。
全体にすごいパワーがあって、
その中に、楽しさがありました。 |
糸井 |
それは、経験しないとわかんないですねぇ。
(続きます)
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