世界中の人たちに、 このパスポートを。                                                        〜『ZED』の主人公、レダ・グェリニックへの取材〜

第3回 シルク・ドゥ・ソレイユというパスポート。

糸井 「シルク・ドゥ・ソレイユって、
 どういうところですか?」
って訊かれたら、なんて答えますか?
レダ うーん‥‥難しいですね‥‥
ほんとに、こう、なんていうか、
クリエイティブがあって‥‥
国際色が豊かで‥‥
なんでも可能であるかのように思える
クリエイティブなチーム、
そういうイメージがあります。
糸井 取材を続けてきて、
ぼくも同じ印象があります。
そして、おもしろいなと思ったのは、
シルク・ドゥ・ソレイユで働いている人たちは、
みんながみんな、
シルク・ドゥ・ソレイユのことが大好きなんですよ。
それって、どういう秘密があるんでしょうね?
レダ 私個人の経験でいえば、
どこよりも濃密な経験をさせてもらえるからです。
糸井 ああ、なるほど。
レダ 先ほども言いましたが、私は2度、
大舞台に立つ機会を与えられました。
一度目は『オー(O)』で、
フランコ・ドランゴーヌさんという
世界的に有名なディレクターといっしょに
ショーをつくっていくことになりました。
彼とは8ヵ月間をともにしたのですが、
それは、シアタースクールで過ごした4年間よりも
ずっと学ぶべきことが多く、
密度の濃い時間だったんです。
私たち、アクターにとって、そういう機会に
めぐり会うことができるのは
本当にすばらしいことなんです。
今回の『ZED』は映画業界で有名な
フランソワ・ジラールさんと
いっしょに仕事をすることができました。
それも、シルク・ドゥ・ソレイユにいるからこそ、
経験できることだと感じています。
糸井 逆に、シルク・ドゥ・ソレイユにいて
困ったことってありますか?
レダ 困ったことというか、難しいこととしては、
やはり、毎日毎日、同じショーを
ずっと続けていくということですね。
糸井 ああ、それはそうでしょうね。
何年もずっと、ということですから。
でも、発見がまったくなくなるということは、
きっと、ないんですよね?
レダ そうですね。
私は『オー(O)』というショーを
トータルで1400回ほどやりましたが、
500回を過ぎたときに、ハッと気づいたんです。
「このキャラクターは、もっと、
 こういうふうにしたほうがよかった」って。
その発見自体はうれしいことなんですが、
つぎに思うのはこういうことです。
「なぜぼくは1回目から
 こういうふうにやらなかったんだろう?」
糸井 たいへんだ、それは(笑)。
レダ はい。ショーをずっと続けていくのは
たいへんなことではありますが、
その、毎日続くたいへんなショーこそが、
自分がもっと進化する場、
成長する機会であるというふうに考えると、
やはり、人生で1000回もショーに出られるというのは
やっぱりすばらしいことだなと思います。
糸井 よくわかりました。
レダ 私個人はそういうふうに感じています。
ほかの人に訊いたら、
違うことを言うかもしれませんが。
糸井 理由がそれぞれ違うほうが
シルク・ドゥ・ソレイユらしいと思います。
人種も、国も、ことばも、文化も、
混ざったままでニコニコしているのが
シルク・ドゥ・ソレイユですから。
レダ ああ、そのとおりですね。
シルク・ドゥ・ソレイユには
本当にたくさんの国の人たちが働いてるんですけど、
まったく対立もなく、平和に過ごしているんです。
だから、私は、世界中の人たちが、
同じパスポートを持てばいいんじゃないか、
と思うことがあるんです。
「シルク・ドゥ・ソレイユのパスポート」
っていうものを(笑)。
糸井 ああ、それはいいですね。
ぼくもぜひ持ちたいです(笑)。
レダ (笑)
糸井 今日のショーの開演時間が迫ってきたので
そろそろ最後の質問にします。
さっきは「通訳になってほしい」
なんて言ってましたけど、
いま1歳半のお嬢さんと
シルク・ドゥ・ソレイユで競演したいって
思うことはありませんか?
レダ もちろん、あります(笑)。
もっとラクな仕事に就いてもらいたい、
という気持ちもありますけどね(笑)。
でも、本当にアーティストになりたいのであれば、
そうですね‥‥『ZED』のチームには
エレナというすばらしい
体操のアーティストがいますから
彼女にお願いして、
ストレッチから教えてもらおうかな(笑)。
糸井 共演をたのしみにしてますね。
今日はどうもありがとうございました。
レダ ありがとうございました。
(おわり)

※長期に渡って続けて参りました
 「シルク・ドゥ・ソレイユからの招待状」という
 取材シリーズは、今回をもちまして、
 いちおう、ひと区切りとなります。
 もちろん「ほぼ日」は今後とも
 『ZED』およびシルク・ドゥ・ソレイユに
 関わっていきたいと思っていますので、
 どうぞ、おたのしみに

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2008-10-28-TUE



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
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Photo: Red Dog Studio, Cosutume: Renee April