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糸井 |
「ZED」の演出の際には、
何か核になるイメージのようなものが
先にあったのでしょうか。 |
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ジラール |
「ZED」をご覧になっていただくと
おわかりになると思いますが、
とてもドラマチックなショーに
仕上がっていると思います。
しかし、そこに物語性を持たせるというような、
そういうものではありません。
ストーリーがメインなのではなく、
キャラクターがメインのショーをしたい、
そんなアイデアが、まずは自分の中に
浮かんできたんです。 |
糸井 |
なるほど。 |
ジラール |
頭にふわっと浮かんでくるような
いろいろなインスピレーションを
まずは大切にした上で、
シチュエーションを考えます。
具体的に言うと、
どういうキャラクターが
どういうタイミングで
どういうポーズで出てくるのか、です。
この「ZED」のステージでは、
そういうことがとても重要になってくると
私は思いました。
それを考え出す上で、イメージしたのは、
タロットカードです。
タロットカードは
人生のいろんな展開や場面を
実に見事に表現しているものです。
それは、人生というもののシンボルを表し、
登場するキャラクターを示し、
システムを表す、ということでも
あると思います。 |
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糸井 |
では、「ZED」の
ショーの核になっているもののひとつは
タロットカードなんですね。 |
ジラール |
そうです。
核、種、そういうものを
タロットカードから得ましたが、
ただ、タロット自体を
そのまま出すということではなくて、
ショーをまとめる上で
タロットの要素を
ひとつのヴィジョンや方向性として
使おうと思った、ということです。
なにしろ、タロット=人生そのもの、ですから
いろんなところで
隠れたインスピレーションがあります。
ですから「ZED」にも、
タロットの要素がかなり隠れて登場してきます。
ショーを通して、そうですね‥‥
1000ぐらいの要素は、タロットから来ましたよ、
ということは言えると思います。 |
糸井 |
1000くらい! |
ジラール |
1000くらいです(笑)。 |
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糸井 |
タロットのイメージをつかんでからは、
順調に進んだんですか? |
ジラール |
いえいえ、演出の段階としては
まだまだです。
それからは、シアターの
建設のこともありますので、
舞台装置、大道具、小道具について考えることが
とても重要になってきました。
「ZED」の舞台をご覧いただくと、
たいへん重い材質をセットに使っていることが
おわかりになると思います。
重量が大きい、ということは、つまり
エンジニアの技術的な計算が
とても重要になってきます。
ですから、私が演出なり、
ショー自体を考える前から
セットはどうするかという話がありまして(笑)。 |
糸井 |
「そうするんだったら、こっちはどうする」
という問題が、必ずついてまわるんですね。
しかも、公演に合わせて
シアターを建設するわけですから、
先回りして考えなくてはいけない。 |
ジラール |
そうです。ですから、セットを考えて、
それからショーの細かい演出表現の部分を
固めていく、という順番を
取ることもありました。
はじめのうちの3年ほどは、
シアター全体のことについて考える段階に
費やした部分が大きいです。
頭の中にあるアイデアを
設計士やデザイナーなど、
いろんな方を交えた会議で発表し、
どうやって実現するかを話し合い、
設計図を引いていきました。
映画とちがったのは、
劇場内に収まるような
限られたプロポーションのセットを
組まなくてはいけませんからね。
それから、パフォーマーの方々に
ショーを理解してもらうことも大切です。
まぁ、これはシルク・ドゥ・ソレイユの、
いつものプロセスだと思うんですけれども、
映画と比較すると、
さまざまなことを「ただ考える段階」というのは
かなり長い時間がかかると思います。
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(つづきます!)
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