糸井 |
言葉も違う。芸も違う。
年齢も、人種も、経歴も違う。
そういう組織の中で、
長く過ごすのって、楽しいことですか? |
稲垣 |
そうですね。楽しいですね。 |
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糸井 |
あの、ぼくらって、
「こいつらなら、
なんでもわかってくれるんだ」っていう
集団の中に居がちじゃないですか。
同じ会社だったり、同じクラスだったり。 |
稲垣 |
はい、はい。 |
糸井 |
シルク・ドゥ・ソレイユというのは、
ある意味ではその真逆みたいな組織だけど、
みんな仲はいいんですよね、なにか、妙に。 |
稲垣 |
そうですね、みんな、こう、明るくて。 |
糸井 |
あれはなにがそうさせてるんですかねぇ?
家族っぽいというか、
つねに助け合ってるみたいな
感じがありますよね。 |
稲垣 |
そうですね、うーん‥‥。
あの、彼らは、じつは、
なにも考えてないんじゃないですか(笑)。 |
糸井 |
ああ(笑)。 |
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稲垣 |
「なにも考えていない」というと
語弊がありますけど、なんていうか、
深く考え込まないというか。 |
糸井 |
うん。その日の、1回ずつを、
ただただ、きちんとやるというか。 |
稲垣 |
うん、そう思いますね。
舞台裏でいっしょにいても、
「うわ、緊張! どうしよう!」
っていう人はあんまりいないですし。 |
糸井 |
はーーー、そうですか。
じゃあ、根っからそういう人たちなんだ。 |
稲垣 |
どっちかっていうと、南米系の人たちは
そういう明るさを持ってる人が多いですね。 |
糸井 |
日本人にはあんまりいないですね。 |
稲垣 |
いないですね。 |
糸井 |
ご自分ではどう思います? |
稲垣 |
ぼくはどっちかっていうと
典型的な日本人なので(笑)、
もう、失敗したりすると、
すぐに居残りで練習しちゃう。 |
糸井 |
(笑) |
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稲垣 |
そしたらね、
「もう、帰れ、帰れ!」
って言われちゃうんですよ。
「帰って、休め!」って。 |
糸井 |
でも、そういうアドバイスに従ったほうが
結果がよくなることも多いでしょ。 |
稲垣 |
あ、そうですね。 |
糸井 |
追いつめていくのは、
いいことばっかりじゃないからね。
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稲垣 |
そう、それはありますね。
コリオグラファーにもよく言われるんです。
「正司にはすごくいいところもあるけど、
南米の人たちの楽観的な部分も
半分もらったほうがいい」って。 |
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糸井 |
もらって身につけたいですか? |
稲垣 |
もらいたい部分もありますけど、
ぜんぶは要らないですね。 |
糸井 |
むしろ、あげたい部分がある? |
稲垣 |
あげたい部分、ちょこっとあります。
たまに感じます(笑)。 |
糸井 |
(笑)。
‥‥さて、いよいよ、
「ZED」がはじまっちゃいますね。 |
稲垣 |
はい。 |
糸井 |
とってもたのしみにしてます。 |
稲垣 |
ありがとうございます。 |
糸井 |
ほかの人の演技とかは、
観てらっしゃるんですよね?
「ZED」を観て、どうですか? |
稲垣 |
すごく楽しいですよ。
やっぱり、パフォーマンスの
クオリティが高いですから。 |
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糸井 |
ぼちぼち、出演者としてではなく、
「お客さんの目」から
観られるようになってるんじゃないですか? |
稲垣 |
うーん、どうでしょう‥‥。
ほんとに、ひとりのお客さんとして、
この「ZED」を観てみたい、
とは思うんですけどね。
こう、最初から最後まで、通して。 |
糸井 |
あー、でも、それは無理ですね。
稲垣さんのバトンは
「ZED」に欠かせませんから。 |
稲垣 |
残念(笑)。 |
糸井 |
「ZED」の公開を楽しみにしてます。
今日はどうも、ありがとうございました。 |
稲垣 |
ありがとうございました。
(稲垣さんとのお話は今回で終わりです。
お読みいただき、どうもありがとうございました)
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