好きな人の言葉は、よく聞こえますか。
補聴器って、あるのは知っていたけれど。
偶然のように依頼がきた『補聴器キャンペーン』の仕事。
なにかの縁としか思えないくらい、
「ほぼ日」とのつながりを感じました。
耳からの言葉を、ちゃんと考えるきっかけが、
ここから生まれたらうれしいです

「Communication Aid 2002」が
ちょっとお役にたちました。


 俺が補聴器をするようになったら、単純に、
 「かっこいい補聴器」
 が欲しいなと思います。

 隠す補聴器じゃなくて、
 見えててかっこいい補聴器がほしいなあ。
 補聴器してるの、かっこいいだろって
 見せたくなるような。
 (darling)



この言葉で始まった、
「Communication Aid 2002」のキャンペーンから
早いもので、1年ちょっとがたちました。
聞くコミュニケーションの大切さについて
読者のかたがたと一緒に考え、
コミュニケーションのサポートグッズとして
補聴器のことをとりあげてきたコンテンツでした。

当時は、毎回寄せられる読者のかたがたの
たくさんのご意見に助けられて、
あのページができあがっていったのでした。
当り前だと思っている「聞くこと」が
どんなに普段のコミュニケーションの中で重要なのか、
補聴器がもっと安く、もっとかっこよくなれば
コミュニケーション自体も変わるのではないか、

ということをみなさんと一緒に考えてきました。

あのキャンペーンから1年後、補聴器の世界にも、
ようやく「BEST STANDARED」が登場したんです!



と言っても、「ほぼ日」が補聴器を発売するよ!
というわけではありません。
ワイデックスというデンマークの世界的な
補聴器メーカーと
あのベネトンがコラボレーションしてできた
画期的な補聴器が誕生したんです。
そのきっかけの一つが、
あの「Communication Aid 2002」の
キャンペーンだったんですって!


ある日、postman@1101.com宛てに、
こんなメールが届きました。


はじめまして、私、ワイデックスという
デンマーク系の補聴器メーカーで働いてます、
米道(ヨネミチ)と申します。

「ほぼ日」の
「好きな人の言葉は、よく聞こえますか。」は、
仕事でのつながりもありましたが、
個人的に共感を覚える部分が多かったので、
ずっと読ませていただいておりました。
「聞こえること」の大切さ、
コミュニケーションの大切さについて
これほどまでにストレートに向き合える機会を
多くの人々に提供いただけたコト、
本当に感謝しています。

そんな中で、
掲載されていた読者のかたのメールにあった、

「補聴器」というと、
どうもネガティブなイメージをもたれがちですが
ほんとはそれを使う事により
コミュニケーションに加わろうとする
すごくポジィティブなものなんですけどね。
ですから隠すんじゃなくて見せる補聴器、
私もそれが早くできないかと思っています。
ティファニーだとかエルメスあたりで、
おしゃれな補聴器作ってくれないかな(笑)。

というメッセージを読んで、
以前から
「きっと多くの人がそう感じているに違いない」
と考えていた私たちは、
社長以下、プロジェクトチームを立ち上げました。
「目立たない補聴器」から「目立つ補聴器」へ
というコンセプトで、メガネをつけるように
楽しんで身につけられる補聴器として、
アパレルブランド、ベネトンとのコラボレート商品を
発売することになったのです。
http://www.widexjp.co.jp/benetton/

人と人とのコミュニケーションに
欠かせない「聞こえ」を難聴の方々に、
もっともっとポジティブに捉えていただきたい!
という想いを形にしたものです。
ぜひ、ご一報をと思い、
メールを送らせていただきました。



と、いうことで、
なんと、みなさんと作り上げたあの連載を
ひとつのきっかけにして、
こんな素敵な商品が生まれたんです!



ベネトンとワイデックスが作った、
こんなにかっこいい補聴器が7色のラインナップで、
7月25日から発売になりました!!!



かっこいいですよねー。
自分が補聴器を買うならこれがいいなあって
思ってしまいました。
しかも、片耳ずつ違う色にしてもお値段は同じとか。

「ほぼ日」が小さなきっかけになって、
補聴器を医療機器としてだけではなく、
メガネみたいにファッションとして楽しむための
第一歩がふみだされたみたいで、
本当にうれしいです。

うれしすぎたので、
どんな風に、このことが実現したのか、
さっそくワイデックスの米道さんに伺ってきましたよ。



ほぼ日 これがあの補聴器ですね。

米道 はい、医療器具分野で
世界的なファッションブランドと、
本格的な共同ブランドの提携をするのは、
世界でも初めての試みなんです。
ほぼ日 すごい!
どうして他のメーカーはやらないんでしょう?
米道 やっぱり、前例がないし、
正直なところ、儲かるか儲からないかを
まず考えてしまうとできないですよね。(笑)
この補聴器をまず見てください。



これを耳に入れると、
こんな風に外からまったく見えないんですよ。

ほぼ日 ほんとだ。外からは、全然わからないですね!
米道 これがワイデックスのデジタル補聴器なんです。
こういう「隠す」ための技術は、補聴器って
どんどん進化してるんですけど、
これ以上小さくすると、
ほんとうに耳の穴の中に入ってしまうから
この大きさが限界なんですね。
ほぼ日 これ以上小さくしても、耳穴にはまらないと
意味がないんですもんね。
米道 それに、なによりも
人と人とのコミュニケーションを考えたときに、
コミュニケーションするための道具を「隠す」って、
ちょっと違うんじゃないかっていうことを
社内でずっと話していて、色々と調べていたんです。
なぜ、隠したくなるのか、
つけている人は本当にそれで、
コミュニケーションがとれやすく
なっているのかどうか。


今までの流れとまったく逆のことをすると、
失敗するかもしれないっていう
リスクは当然あります。
でも、誰かがやらなきゃ始まらないっていうのが
社内でも、うっせきしていたんですね。

そしたら、ちょうど「ほぼ日」で
補聴器メーカー協議会と
「好きな人の言葉は、よく聞こえますか。」
っていうページを作られてることを知って、
じっくり読みました。
そう言えば、先日、
仙台の補聴器販売店に出張に行ったら、
「『ほぼ日』を見て買いに来ました」っていう
お客さんがいらしたそうです。
30代くらいの女性が。
ほぼ日 わあ、うれしいですね。
そんなかたがいらっしゃたんですか!

たくさんあるブランドの中から、
ベネトンに話をもちかけられたのは、どうしてですか?
米道 かっこいいものを作るために、
一緒に組めるアパレルブランドはどこかを
考えてはいたんですが、
ベネトンは
「UNITED COLORS OF BENETTON」
っていう企業名ですよね。
色がたくさんあって、
その人それぞれの個性に合わせて
好きな色を選べるのが、
あのブランドの特徴のひとつです。

ベネトンには、
「個性を大切にするための選択肢を持つ」
という考え方があるから
これは補聴器にぴったりなんじゃないのかなと
思いました。

話をもちかけたら、むこうも、
「偏見のない社会を作る」っていう
ブランドメッセージを持っている企業だ
ということもあって、とても乗り気でした。
ほぼ日 そうですね。確かに、
他のブランドと組んで補聴器を出しても、
ブランド戦略のひとつかな、という印象にとられて、
一過性のものになりそうですよね。
それに、きっとすごく高価なものになるでしょうし。
米道 ええ。そうなんです。
今回の補聴器は、
うちの「Bravo」という
一番リーズナブルな補聴器を
ベースに作っているんです。
せっかくかっこいいものを作るんだから、
作っただけで終わらないで、
補聴器を本当に必要とされている方々に
ちゃんと使ってもらえないと
意味がないですからね。
なので、もちろん、「Bravo」と
同じ価格でお買い求めいただけますよ。
ほぼ日 ちなみに片方で、おいくらですか?
米道 68,000円〜です・・・。
メガネなど一般の製品は、一度購入してしまえば
それで終わりですが、補聴器の場合は、
個人の聴力や生活環境など、それぞれに応じて、
何度も何度も人の手による調整が必要なものなので、
こういう価格になってしまいます。
とは言え、1人でも多くのかたが
より優れた補聴器を手にしていただけるように
引き続き努力していきます!
ほぼ日 はい、ぜひともお願いしますね!
デザインは、ベネトンのかたがされたんですよね。
米道 イタリアのベネトン専属のデザイナーが
関わっています。
もともと、カラー補聴器やスケルトン補聴器は
うちでも販売していたんですね。
そもそもワイデックスの補聴器自体が
無駄を省くのが得意なデンマーク製ということもあり、
かなり完成されたデザインだったんです。
なので、最初は、ベネトンならではのいろんな形も
検討されていたんですが、
最終的にはデザイナーの判断で、
デンマークのスタイルを活かす形で、
こういうシンプルなものになりました。

「UNITED COLORS OF BENETTON」のロゴが、
補聴器のカーブに沿うように、小さく入っています。
ほぼ日 この補聴器を街でしている人がいたら、
すごくかっこいいですよね。
米道 そうですよね!
「歳をとったら、これをつけるのか、いやだな」
っていう気持ちをなくしていきたいんです。
歳とるのって、楽しいことだなって
思ってもらいたい。というか、思いたい。
だって、歳をとるのって、
これからは「ぼくたち」なんですよ。
(笑)
ほぼ日 確かに。
これだったら、
赤は似合うけど、黄色は似合わないなあとか、
試着する楽しみもありますね。
米道 ええ。
補聴器をつけて鏡を見たときに、
今までと違って楽しいですよね。
こういう選択肢ができた上で、
場所や状況に合わせて
外から見えにくい耳穴補聴器にしようとか、
今日は服やメガネの色に合わせようとか、
選べばいいと思うんですよね。

今までは、選ぶことすらできなかったんです。
「隠す」っていう考え方しか、なかったんです。

10年後や20年後には、
もっと多くの人が、アクセサリー感覚で、
楽しみながら補聴器を身に付けられるような
そんな社会になることを目指して、
ぼくらも、がんばります。
ほぼ日 1年前に「ほぼ日」で
「こんなのがあったらいいな」って言っていた
「かっこいい補聴器」が、
こんなに早く形になったんですもんね。
これからどんな補聴器が出てくるのか
とても期待しています!


ということで、
将来、自分はどんな補聴器をつけることになるのか、
すごく楽しみになってしまったお話でした。
補聴器の印象、値段、デザイン、
ちょっとずつでも変わっていければ、
いつか大きく変われるんじゃないかなと
思わせてもらえる、今回のニュースでありました。

このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「よく聞く」と書いて、
aid@1101.comに送ってください。

2003-07-28-MON

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いままでのタイトル
2002-06-06 今日から、スタートするこの企画について。
2002-06-14 皆さんからの声です。
2002-06-21 補聴器メーカー協議会の人に、
たくさん質問してみました。
2002-06-27 心の声を聞くラグビー
2002-07-05 みんなでコミュニケーションのこと
話してみました
2002-07-12 イベントを開催します。
参加受付けは、今日からです!
2002-07-19 イベント参加ご希望のかたへ
大切なお知らせです。
2002-07-26 「よく聞く」コツをdarlingによく聞く。
2002-08-02 音響科学博物館に行ってきました!
2002-08-09 darlingが補聴器を作りに行きました。
2002-08-16 ゆーないとさんの
「青春はコミュニケーションだ!」 レポート
2002-08-23 darlingの補聴器ができました。
偶然、鳥越さんも!
2002-08-24 明日はイベントW生中継。
みなさんのメールをお待ちしています!
2002-08-25 本日13時から、
イベントをW生中継します!
2002-08-27 イベント第1部前半:プロローグトーク
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2002-08-30 イベント第1部後半:プロローグトーク
「しゃべること、聞くこと」
ピーコさん・糸井重里
2002-09-05 イベント第2部−1:カジュアルシンポジウム
「聞くコミュニケーションってなんだろう」
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木村修造・糸井重里
2002-09-06 イベント第2部−2:カジュアルシンポジウム
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2002-09-12 イベント第2部−3:カジュアルシンポジウム
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「耳からの言葉と音楽」