いまうちの事務所がやっていることのひとつに おじさんのコミュニティをつくる 仕事があるんです。 |
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おじさんのコミュニティをつくる仕事(笑)。 |
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はい(笑)。 大阪府の府営公園をつくる仕事を しているのですが、 公園の整備や管理をする人々として、 「パークレンジャー」というボランティアを 養成しているんです。 そのボランティアに応募してこられる方の多くが 定年退職された男性なので、 結果的におじさんのコミュニティをつくっている、 ということではあるのですが。 |
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へぇー。 |
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応募してきてくれたおじさんたちが 1年がかりの養成講座を受けて、 公園づくりの技能を身につけていきます。 1期につき、だいたい30人くらいのチームで、 みんなで竹を切ったり植物について学んだりしながら、 公園の整備の具体的な方法を学びます。 そして、講座が終わったあとは、 実際にその公園のパークレンジャーとして 活動していただきます。 いま受講しているのが4期生。 すでに受講し終えた1期生、2期生、3期生は もう公園の中に入って、 どんどん竹を切ったり道をつくったりしています。 これを毎年つづけて、 パークレンジャーを200名まで 増やしていきましょう、 というプロジェクトなんですよ。 |
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おもしろいですね。 |
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公園の整備や運営は コミュニティをつくることと組み合わせると、 うまくいくんじゃないかな、 という考えからはじまったことなんですが。 |
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コミュニティと組み合わせる‥‥というと? |
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その公園の最初の計画は、 敷地ぜんぶを はじめから整備しようというものでした。 でも、ぜんぶを整備したあとで 公園を維持しようとすると 相当なお金がかかります。 たとえば最初の整備に 10億円ぐらいかかる規模の公園であれば 維持費が10年分で2億円くらいかかります。 つまり、全部で12億必要です。 |
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ええ。 |
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でも、最初から整備しておくのは 敷地の2割だけにしたらどうでしょう。 そのかわり、養成講座で 毎年パークレンジャーを育てていき、 のこりの敷地は、そのパークレンジャーたちが 少しずつ整備していく。 そんなやりかたをすることにしたんです。 それだと、先ほどの計算でいえば 最初の整備に2億円、 維持費のところは レンジャーを育てていく費用が入るので、 すこし多くなって、10年で3億円。 でも、全部で5億円です。 お金をかけずに公園整備ができて、 さらに、10年後に 「公園にようこそ!」と言ってくれる 200人のチームができていることになるわけで。 |
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ほおー! なるほど。 いいですねえ。 最初の「2割だけの整備」というのは いったいどんなことをやっておいたんですか? |
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公園の入り口部分や 「パークセンター」と呼ばれる 核となる施設だけを整備して、 残りは森のまま残し、 道だけつくっておくようにしました。 あとは、森の中にトイレつきの のこぎりなどの道具が置いてある小屋を ぽつぽつと建てておく。 それだけです。 |
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うん、うん。 |
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公園をどんなふうに整備していくかも パークレンジャーの人たちと 相談しながら決めています。 「公園でなにをしたいですか」と聞いて たとえばみんなの意見が 「森の音楽会をしたい!」とまとまれば、 「じゃあそれができるように、 林床を整備してください」 とお願いしてその人たちがやる。 そんな流れで、整備をおこなっています。 |
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そのおじさんたちは、 自分でお金を払って参加してるんですか? |
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いえ、その公園に来るための交通費や 保険代は自費ですけど、 講習自体は無料です。 とはいえちゃんとした整備ですから、 大変な部分はけっこうあります。 でも、そういった公園のつくりかたを 粋に感じてくれて、 「ま、やったろうやないか」という 大阪のおっちゃんたちが集まってくれています。 みんなものすごく元気で、チームの結束力も強くって。 お互いに意見を言い合いながら、 どんどん整備してくれているんです。 |
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みんな、たのしいんですよね。 |
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それもあると思います。 地域の役に立つ仕事でもありますし。 |
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これは違う話になりますけど、 秋に、東京で 「目黒のさんま祭」というイベントが 毎年行われているんですよ。 気仙沼から大量のさんまを運んできて、 目黒の公園でとにかく焼いて、焼いて、 来てくれた人にタダでさんまを振る舞う、 というお祭りイベントなんですけど、 そのお祭りには、気仙沼から さんまを焼きに来る人たちがいるんです。 |
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へええー。 |
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その人たちは0泊3日の旅で、 深夜バスで来て深夜バスで帰ります。 |
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0泊3日! |
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そう。すごい弾丸ツアーで、 煙のなかでさんまを焼いて、 大変な思いをして帰っていくんです。 でも、その気仙沼から さんまを焼くためにやってくる人たちは、 じつは3000円を「払って」参加しているんです。 その内訳はバス代とTシャツ代らしいんですけど、 お客さんにはタダで振る舞って、 大変な思いをするほうが3000円払うという 不思議なイベント(笑)。 ぼくも「焼き」の手伝いに行ったんですが、 当然、参加費の3000円を払いました。 |
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はあー、すごい。 みんな払ってやってるんですね! |
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でも、お金を払ってみんなのために 大変な思いをしながらさんまを焼くことが、 なんだか、うれしいんですよ。 |
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ええ、ええ。わかります。 いろんな場所で価値観の転換って 起きているんですよね。 |
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こんなことを聞くのもなんですけど、 たとえばさきほどの公園の計画のようなものって、 どうやって山崎さんたちの収入になるんですか? 企画を出すことですか? |
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ぼくらのやっている仕事は、基本的に 企画を出したあとで実行をしますので その「実行すること」に対して お金をもらっています。 |
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ああ、なるほど。 |
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さきほどの公園の話だと、 「公園をつくる」ということの実行が ぼくらの収入です。 「2億円で最初の整備をして 残りはちょっとずつ整備していきます」 というなかの、 「ちょっとずつ整備する」費用の中に、 ぼくらの働く分が入っています。 もうすこしお金のことを言うと、 じつはこの公園づくりについて、 大阪府はお金を出していないんですよ。 府がお金を出しているのは土地だけで、 公園をつくる費用は 「大輪会(だいりんかい)」という 関西の企業グループから支援をもらっています。 その企業グループが、 「なにか企業として社会貢献をしたいんだけど、 いまは何をするといいんだろう」 と考えていたとき、 その公園の計画について橋下知事が 「予算はゼロ!」 と言いきったところだったんです。 そこで、この『予算はゼロ!』と言われた公園を 企業グループの支援でつくることになりました。 ぜんぶをお金で、というわけではなく、 一部はショベルカーなどのモノを提供していただいたり、 支援しやすい方法で支援してもらっています。 |
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そういうことを全部マネージメントするって、 相当大変でしょうね。 |
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それはもう、成り行きだからなんとかなっている というのが正直なところです。 公園計画でも、さきほどお話ししたように 「知事が変わって、予算がゼロになったので 発注できません」 となってしまうことだってあります。 でも、「やりましょう」と 手をあげてくれるところが出て、救われました。 ぼくらの仕事は、あとで語ると、 最初からうまくマネージメントしているように 見えちゃうんですが、 はじめから完璧な計画があるというよりは、 やっていく中で困った事態が起きてしまって、 なんとかしようととにかく動いていたら、 いい決着点が見つかって救われた、 そんなことが多いですね。 |
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でも、その、 「動きながら考える」やりかただからこそ、 できてきたことも多いんでしょうね。 |
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そうですね。そうだと思います。 | |
(つづきます。) |
2013-01-14-MON |