COOK
調理場という戦場。
コート・ドールの斉須さんの仕事論。

タイトルはわざと大げさにつけちゃってすみません。
あの繊細で優しい料理のつくられる場所は、
それこそ命がけの工房なんだということを強調したくて。

限られた時間の中で、冷めないうちに、
お客様に最高のおもてなしをするために、
レストランのシェフたちは、どんなことをやっているのか?
いつも何に気をつけて、何を考えているのか?

日本のフレンチレストラン最高峰
『コート・ドール』のオーナーシェフ、斉須政雄さんに、
経験からつかみとった仕事論・組織論をうかがいました。
熱くて深くて、火が出るような言葉が盛りつけられます。
きっと、どんな職業の人が読んでも、
ひざをうつ話がいっぱいだと思いますよ。

第1回 わざと手を貸さない人、許しません。

第2回 理想の新人は、こんな人です。

第3回 ゴールとスタートを両立させたいです。

第4回 純粋なだけでは、力が宿りません。

第5回 子どものような、踊るような経営。

第6回 『調理場という戦場』が単行本になります。

第7回 裾野が広がっていない山は高くない。

第8回 厳しくて、体力のある文化。

第9回 舵取りをする余裕は、まだなかった。

第10回 もう、二〇代は捨てた。

第11回 便利すぎると、人は動かなくなる。

第12回 自分を作るのは、自分で発した宣言。

第13回 ひとつの店に深入りするということ。

第14回 見習いでいる期間。

第15回 住むところを、大切にする気持ち。

第16回 時間と生き方が、才能のサポーター。

第17回 食材を見つめる、ということ。

第18回 この掃除機は、自分なんだ。

第19回 間にあわない料理は、意味がない。

第20回 一生懸命な人の言葉しか、通じない。

第21回 同じ空を、違う荷物で行き来する。

第22回 届きたてホヤホヤの感想メールです。

第23回 それぞれの人にとっての、「戦場」。

第24回 「料理人の妹を、誇りに思います」

第25回 「感想だけで、泣けるなんて……。」

第26回 大切な後輩に向けた、手紙のように。

第27回 52歳の、斉須政雄さん。





「今、大学に通って5年目です。
 友人は就職して、頑張っています。
 そんな中で、まだ就職もせずにいることに、
 時々ものすごく不安になります。
 そんな時に勇気をもらっているのが、
 『53』での矢沢さんの話しだったり、
 『調理場という戦場』だったり。
 経験から語られる言葉は、本当に熱くて、深くて、
 自分で考えて、自分で責任とって、進んでみよう。
 失敗しても、その方が楽しそうじゃん。

 と思わせてくれます。("たかひろ"さんのメールより)」

「矢沢永吉さんの『53』のコーナーに
 すごく励まされて、価値観変わったっていう感じです。
 今までの私は、一生懸命な姿を見られると
 恥ずかしいなぁと思ったりしてて、変な照れがあって。
 だけど、永ちゃんの姿を垣間見て、
 一生懸命を恥ずかしいなんて思う事の方が、
 よっぽど恥ずかしい!と、目から鱗でした。
 これは、調理場という戦場でも教えられた事です。

 斉須さんに対しても、もう言葉がないです。
 なんて表現していいのか分からないけれど、
 『調理場という戦場』に書かれた斉須さんの言葉を、
 これから私の中で確実に育てていきたいと思いました。
 ちゃんと小さくてもいいから、お花を咲かせたいです。
 斉須さんから、あんなにも素敵な肥料を
 いっぱいいただいたのですもの。
 あとは、ちゃんとお水をあげて、時に
 斉須さんの言葉を思い出して、すくすく育てていきたい。
 ほぼ日を知らなかったら私は、
 『調理場という戦場』にも
 永ちゃんの言葉にも巡り会えていなかった訳です。
 一生懸命という事の素晴らしさを知ることが出来たことに、
 心からありがとうという気持ちでいっぱいです。
 これから、一生のキーワードにしていきたいです。
 一生懸命、ということを。("あや"さんのメールより)」






こちら『調理場という戦場』に最近いただくメールには、
現在ほぼ日で週3回のペースで連載中の
「53」というコーナーとリンクしたものが目立ちます。

そう言えば、「53」も、30年間音楽活動を
やりつづけている、矢沢永吉さんという人の経験や
年齢を重ねるということについてがテーマですので、
この『調理場』とも、内容が重なってくるんですよね!

そのことに気づいてくださったかたの言葉が、
また、すごくうれしいんです。

「色々な人間が生きてきた中での経験や判断こそが、
 エキス化された情報の塊……。
 最新とかという言葉はないかもしれないけど、
 人間の営み、歴史があっての、
 ぎゅっと詰まったかけがえのないもの」

そんな風に、感想を寄せてくださる人もいます。
経験とは、情報のカタマリであると同時に、
その人のそれまでの足取りをぜんぶひっくるめた
魅力なんだよなぁ、と改めて思わされました。

斉須政雄さんは、1950年生まれ。
現在、52歳です。
ほぼ日で現在ライトを当てている矢沢さんと、
同年代なんですよ。
斉須さんも、30年以上仕事を続けている方です。

そんな「経験」についても、今後
「53」とリンクしながら、このコーナーで
扱っていけたらいいなぁ、と思いました。

なお、単行本『調理場という戦場』は、
現在アマゾン書店でも取り扱っています
ので、
まだ読んでいないという方は、ぜひどうぞ!

それでは、みなさんからの
さまざまなメールを、ご紹介いたします!
どの方も、「経験について」という
太いテーマが、共通しているんですよ。
読んでいると、さまざまな経験値を
シェアさせていただいているような気がします。







・『調理場という戦場』読みました。
 とても読みやすかったので彼にもすすめてみました。
 どんな感想を持ったのか聞きたくなって話題にしたところ
 二人とも最初に口にしたのが
 「ポム・スフレ、食べてみたいなぁ〜」
 (もっと他に何か無いのかぃ?)
 彼から返してもらったらもう一度読むことにします。
 仕事に対しても人生に対しても
 まだまだこれからという早い時期に
 素敵な本に出会えてよかった!
 と思えるように本の言葉を活かしていきたいです。

 (て)



・本当に、いい生き方してきた人の顔は良い!のです。
 「調理場という戦場」の中の斉須さんのお顔を見たとき
 「めっちゃ、ええ顔してんなぁー」って、思いました。
 もう、私もつられてええ顔してしまいました。
 以前、自分の中学生の頃の写真を見たとき
 「なんて、きっつい顔してんのやろ・・・」
 って、思ったんですよね。
 でも、思い返すにその頃の私は荒れてたよなぁ〜
 (もちろん、かわいいもんですが)
 人って、ほんま顔に出るよなぁって思うのです。
 眉間のしわだけは、作らないようにしなくては!
 と、日夜努力している訳です。
 これから、笑いじわは、ちょっと許そう・・・(笑)
 (TAMKUN)



・実はHPでこのコーナーを最近読み始めて、
 斉須さんとは職業も違うのに、
 妙に親近感を覚えてしまい、
 思わずメールを書かせてもらいました。
 勿論、本の方も注文したところです。

 私はアメリカで働く生物系のラボ・テクニシャンです。
 調理場をラボに、調理人をテック、に置き換えると、
 まるで自分のことをいわれているようで、
 どきどきしながらHPを読ませていただいてます。

 私は30才代で若くはありませんが、
 まるでフランスで働き始めた20才代前半の
 斉須さんと近い心境で働いています。
 私は研究者でもないので、自分のウデだけが頼りです。
 だからといって、特別な才能があるわけでもない。
 仕事を堅実に、しかし、楽しんでこなしているだけです。
 私が日本のラボでの人間関係が窮屈に感じていたことも、
 70年代後半のフランスのレストランの厨房の設備が
 当時の日本のもの比べると質素だったことと
 現在のアメリカのラボも
 日本のに比べると不便を感じてしまう所も、
 言葉が不十分で自分に満足できない所もそっくりです。
 薄給ですが、しかし、最近は楽しくて、
 労働していることが分からなくなりつつあります。
 その一方、私なりにも欲はあります。
 かなり回り道をしましたが、
 ようやくラボは自分のいる所、という
 実感を持って働いていられる充実感を得られ、
 今後も努力を惜しむことなく、
 好きだからという理由で前進していきたい、
 という志も、
 図々しくも共感してしまった次第です。

 共感できると、なぜか元気が出てきます。
 早く手元に本が来ないかと、待ち遠しいです。
 (あ)



・「調理場という戦場」、もう何回読んだことでしょう。
 読むごとに、新たな発見がもたらされる、
 素晴らしい本です。
 僕は、月曜日が来るのが憂鬱だと感じる、
 ごく普通のサラリーマンの一人です。
 毎日、上司や組織に悩んだり悩まされたり、
 そんなことばっかりで
 正直うんざりするときばかりです。
 もちろんサラリーマンは斉須さんみたいに
 ガツンと生きていくことは難しいかも知れません。

 でも、サラリーマンだって、
 時には斉須さんみたいに
 ガツンとやってもいいときがあると
 最近思うようになりました。
 そうしないと、斉須さんの言うように
 「いい人として組織に都合良く使われてしまうだけ」
 になってしまいますから。
 ただ、サラリーマンは、「熱かった」頃の
 斉須さんみたいに、
 ウェイターに油まみれの子羊を投げつけたり、
 ダニエルさんにゆでアスパラガスを
 投げつけたりはできません(笑)。

 あくまでも冷静に、理路整然と、
 だけど熱い闘志をたぎらせて
 上司や同僚に諫言や忠告を行わなければなりません。
 感情を爆発させてしまっては、
 目上の者に対する態度ではなくなってしまいますから。
 でも、上司に対し自分の考えを
 はっきり伝達しなければならない。

 僕も、つい先日、いまの会社に入って
 はじめて上司に厳しい諫言を行いました。

 普段は報告や意見は言っても、
 基本的に上司の言う通りに仕事を進めてきましたから。
 でも、上司の認識と自分の認識にギャップを感じたので、
 上司の言うことに異を唱え、
 なるべく理性的に意見をいいました。
 結局、意見は聞き入れられました。
 言うまでの10日くらい、
 すごく胃が痛むナイーブな精神状態の日々でしたが、
 はっきり意見を言ってよかったです。

 僕が斉須さんの文章を読んで一番感じるのは、
 その不器用さと真面目さです。

 僕も不器用だしクソ真面目なほうです
 (斉須さんほど突き抜けて不器用でも
  真面目でもある自信はないですが)。
 だから、上司や組織が無理難題を押しつけてきても、
 異を唱えることなく
 シャカリキでがんばってしまうのです。

 そして、その場はしのいでしまう。
 でも、真の問題は未解決なまま残されてしまう。
 そして、次の機会が来ると、また
 無理難題をシャカリキでこなさなければならない。

 結局、自分一人でシャカリキでがんばるだけではなく、
 組織的に考え直さなければならない
 問題だったりするんです。
 だから、どうしても言わなければならなかったんです。
 上司にとっては耳が痛い話だから
 なかなか聞く耳を持とうとしないんです。
 「大変なのはみんな同じだ」とか
 「俺は休日も返上してやってるんだ」とか。
 はっきりいって理屈もくそもないんですが(笑)、
 いままではその迫力に押されてしまい、
 情けなくも引いてしまってたんです。
 でも、そのときは腹を括ってたので
 逃げるつもりはありませんでした。

 僕は、不器用で真面目な性格の人間が大好きだし、
 自分のそういう本質を誇りに思っています。
 なぜなら、不器用な人間こそ、
 努力のすえ物事の本質に
 たどりつくことが出来得ると思っていますから。
 斉須さんが、「コート・ドール」で
 他の日本のフランス料理のお店では
 あまり感じることのできない、
 個性的な現在の境地を開拓されたのは、
 まさに努力に努力を重ね料理を
 本質的に考えつづけられたからだと、
 心より尊敬しております。
 でも、ピッチャーがいくら球が速いからといって
 直球ばかり投げればいつかは打たれてしまうように、
 いくら不器用な人間でも
 時には不器用だけの人間じゃないぞということを
 アピールしなければだめだ
ということを、
 斉須さんの本から教えられました。

 斉須さんは、カンカングローニュのころは
 自分一人でシャカリキにがんばる、
 優秀だけど不器用な料理人だったように感じられましたが
 (もちろん、その時代に斉須さんは
  大きく成長されたんだと思いますが)、
 ヴィヴァロワやタイユバンで
 組織としてチームプレーで仕事をすること、つまり
 上司や同僚とのコミュニケーションの重要性に
 開眼したのでしょうね。
 そして、コミュニケーションには、
 相手にとって耳が痛いことであっても
 直言する勇気が必要だってことに、
 気がつきました。

 私も、いつか斉須さんのように
 「環境保全」を真に重要に考えることのできる
 上司になりたいと思います。
 そして、そのためにいま現在
 努力しつづけていきます。
 (英)



・遅くなってしまいましたが、
 『調理場という戦場』読みました。
 言葉が何の引っかかりもなく、
 染み込むように、すいすい頭の中に入って来まして、
 真正面からこちらの胸に投げかけられる言葉というか、
 読んだ人は自分を見つめざるを得ない、本ですね。
 逃げようがないですよね。
 これだけ誠実に、自分をさらけ出して正面から
 語りかけられると。
 若い頃の斉須さんの
 筋肉的な、がむしゃらさもすごいけど、
 何かを掴もうとする人間の見つめる力、
 見つめて考えている斉須さんもすごい迫力でした。

 で、何しろ面白かったです。
 darlingが「話し言葉」と
 「職人さんが年月をかけて経験でつかみ取ったもの」
 の話をくり返していたのは、こういうことだったのかぁ、
 と自分勝手に納得したりして。
 私にはエンタテインメントにもなっていましたから。
 読んでる途中、
 暑さが厳しかった休日、(普段もボーッとしてますが)
 「あ、録画しとかなきゃ」と一瞬思ったくらいです。
 面白い小説を読んでるときとか、
 面白いゲームをしているときとか、
 いつもの生活していても
 違う時空が自分の中に存在していますよね。
 そんな感じです。
 頭の中で映画を観ていたんですね。
 斉須さんのお話は勿論ですけど、文章のリズムと
 フランス一店目から六店目、そしてコートドール、
 という目次進行(というのかどうか分かりませんが)が、
 とても効果的だったんじゃないかと思います。
 生意気ですが、そんな風に感じました。
 (りえ)

  


では、次回のこのコーナーで、お会いしましょう!

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2002-07-29-MON

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