コロッケさんのものまね道。

おじいちゃんと女子高生が
一緒に笑える、
コロッケさんのものまね。
森進一さんがどうなるか、
わかっているのに笑ってしまう、
コロッケさんのものまね。
大御所のみなさんから、
あんな「失礼」なのに許される、
コロッケさんのものまね。
今までコロッケさんが歩いてきた
「ものまねの道」のこと、
じっくりと、うかがってきました。
担当は「ほぼ日」奥野です。

コロッケさんのプロフィール

コロッケ

1980年8月、NTV「お笑いスター誕生」でデビュー。
TV・ラジオ等に出演する傍ら、
全国各地でのものまねコンサート及び、
東京・明治座、名古屋・御園座、大阪・新歌舞伎座、
福岡・博多座などの大劇場での座長公演を定期的に務める。
現在のものまねレパートリーは300種類以上となり、
ロボットバージョンやヒップホップダンスとの融合、
落語にものまねを取り入れた「ものまね楽語」、
さらにはオペラやオーケストラとのコラボなど
エンターテイナーとして常に新境地を開拓している。
海外においてもアメリカ・ラスベガスを始め全米各地、
中国、韓国、オーストラリアでの公演も大成功を収めた。
浅草芸能大賞・新人賞、ゴールデンアロー賞・大賞及び芸能賞、
2013年には松尾芸能賞・演劇優秀賞を受賞し、
映画やドラマなど俳優としての円熟度を増し、
アニメや海外ドラマの声優としても活躍の場を広げている。
2018年6月公開の「ゆずりは」で、
本名「滝川広志」として映画初主演を果たした。
永年にわたり、ものまねタレントとして
芸術文化の振興に貢献したと功績が認められ、
2014年文化庁長官表彰を受賞。
そして、2016年2月には
「ものまねタレントの代名詞的な存在になり、
 唯一の特徴をデフォルメする
 独特のパフォーマンスはピカソの領域にまで達した」
と日本芸能大賞を受賞した。
また、芸能活動の傍ら、
東日本大震災の被災地支援活動を精力的に行い、
2012年防衛省防衛大臣特別感謝状を授与される。

受賞歴

  • 1990年3月16日 第7回浅草芸能大賞(新人賞)
  • 1990年12月10日 ゆうもあ大賞(大賞)
  • 1991年2月25日 第28回ゴールデンアロー賞(大賞)
  • 1991年2月25日 第28回ゴールデンアロー賞(芸能賞)
  • 2013年3月27日 第34回松尾芸能賞(演劇優秀賞)
  • 2014年12月5日 文化庁長官表彰
  • 2016年2月28日 日本芸能大賞

第5回 志村けんさんは
絶対コントを捨てないから

──

コロッケさんが尊敬している芸人さんを、
教えていただけますか。

コロッケ

芸人といったら変なんですが、
まずは、やっぱりチャップリンですかね。

とくに、チャップリンの笑いというより、
あの切なさ、哀愁に惹かれます。

──

なぜですか?

コロッケ

だって、チャップリンという人じたいが、
寂しい、悲しい、辛い、
いろんな過去を背負っている人ですよね。

で、そういう人だからこそ、
コメディが活きるんだなあと思うんです。

──

なるほど。

コロッケ

根っこが寂しくないと、悲しくないと、
辛くないと、
コメディって難しいと思うんです。

寂しい人、悲しい人、辛い人の気持ち。
そこがわからないと、たぶん。

──

寂しさも、悲しみも、笑いも、
人のこころに触れることですものね。

コロッケ

他人の気持ちを思いやれなかったら、
ひとりよがりの笑いを、
押し付けちゃったりしちゃいそうで。

頭をポカーンと叩いて、
「これ、どう? おもしろくねえ?」
って言われたって、
「え、どこが?」って感じでしょう。

──

はい。

コロッケ

それよりも、その人の顔をのぞきこんで、
互いに気持ちをわかりあって、
一緒に笑うほうが、ぼくは好きなんです。

──

コメディアンという意味でいうと、
以前、柄本明さんにお話をうかがったとき、
志村けんさんのことを、
「最高の役者です」とおっしゃってました。

コロッケ

わかります。ぼくも尊敬してます。

──

どんなところを、ですか?

コロッケ

まず、志村けんさんというかたは、
ご自分が、
みなさんに何で覚えてもらったか、
その部分を、
絶対、忘れてらっしゃらないです。

──

それは、つまり「コント」を。

コロッケ

そう、ちょっと売れちゃったりすると、
「司会の仕事、来ないかな」
「役者でデビューできないかな」って、
そんなことばっかり考えてる、
そういう若い子も、たまにいますけど。

──

ええ。

コロッケ

志村けんさんは、
コントで、常に新しい挑戦をしています。

そこから生まれた枝葉で、
動物と触れ合ったりしてますけど、
この先、絶対に、
志村さんはコントを捨てないと思います。

──

そうでしょうね。

コロッケ

そして、自分も、そうありたいんです。

これからもずっとものまねを諦めずに、
新しいネタをつくっていきたいんです。

──

そういう人って、他には‥‥。

コロッケ

志村さん以外で言うと、
やっぱり(ビート)たけしさんですかね。

映画をはじめ、いろいろなさってますが、
たけしさんも、絶対に、
ふざけていた自分を捨ててないですよね。

──

少し前に、
たけしさんの単独ライブに行ったんですが、
本当に、おもしろかったです。

内容は、時事ネタ的な‥‥と言いますか、
「ザ・不謹慎」というようなもので。

コロッケ

でしょう? やり放題でね(笑)。

あれは、たけしさんにしかできない芸だし、
絶対におもしろいはずです。

──

最高でした。

コロッケ

同じように、志村さんのコントも、やはり、
志村さんにしかできないです。

──

その意味でいうと、
ものまね芸におけるコロッケさんらしさ、
という部分は、
ご自身では、どんなふうにお考えですか。

コロッケ

やっぱり、自分の強みがあるとするなら、
それは「解釈の仕方」でしょうね。

ものまねをやらせていただく対象の人は、
ひとりじゃないですか、当然。

──

コロッケさん、コージー冨田さん、ホリさん、
ものまね芸人の数だけ、
「それぞれの武田鉄矢さん」はいるけれども。

コロッケ

そうです、それぞれの「解釈の仕方」で、
まったく違う武田さんになるわけですが、
そのときの自分らしさって、
「ええ、そこまでやっちゃって大丈夫?」
ってことだと思うんです。

──

はい、そのとおりだと思います(笑)。

コロッケ

その人のファンからすれば、
ちょっと腹立たしいかもしれないくらいの、
ギリギリな感じ‥‥。

でも、ぼくはずっとそれでやって来たし、
そこを期待されてもいるので、
もう「すいません、でもやっちゃいます!」
と言うしかないんですけど。

──

へんな顔をしないコロッケさんのほうが、
見ているこちらとしても、
「具合悪いのかな?」とか思いそうです。

コロッケ

だから「コロッケ流」があるとすれば、
ふざけたことをやる、
「なんか失礼なことやるんじゃないか」
という、そういう期待感‥‥?

──

あります。

コロッケ

「絶対になんかやるぞ、やるぞ、やるぞ‥‥
 あれ、まだやらない、やらない‥‥
 ああ、やっとやった! あの失礼なやつ!」
という感じなんでしょうね。

──

ものまね芸人さんはたくさんいますけど、
コロッケさんほど、大御所に対して
愛情に満ちた「失礼」をする人は‥‥(笑)。

コロッケ

いないですねえ(笑)。

──

でも、五木ひろしさんにしても、
野口五郎さんにしても
北島三郎さんにしても、
岩崎宏美さんにしても、
「はじめて、ものまねをしたとき」って、
あったわけですよね。

コロッケ

ええ。

──

それ、いきなり「失礼」だったんですか?

コロッケ

いえ。

──

じゃ、はじめは何というか、まっとうに?

コロッケ

ちゃんとやってました。

──

それがいつからか‥‥。

コロッケ

五木ひろしさんが、ロボットと化し。

──

森進一さんの頭が、開くようになり。

コロッケ

はい。自然とね。

──

進化の結果‥‥ですかね(笑)。

コロッケ

そう、まさしく「進化の結果」ですよね。
理由はないんだから、とくには。

いつの間にか自然に、ああなってました。

──

コロッケさんにとって、
理想の芸って、どういう芸でしょうか。

コロッケ

ぼくは、
「わかる人にわかればいいや」じゃなく、
ひとりでも多くの人に
楽しんでほしいと思って、やっています。

おじいちゃんも、おばあちゃんも、
お父さんも、お母さんも、子どもたちも。
家族全員で、みんなで楽しめる芸。

──

なるほど。

コロッケ

コロッケのものまねショーを見て
「わぁ、今日は楽しかったなあ」って、
みんなで思ってもらって、
10年後でも、20年後でも、30年後でも、
「ああ、そういえば、あの日、あのとき、
 コロッケの頭、開いてたよね」
って、みんなで思い返して、
何度でも笑ってもらえたら、最高ですね。

──

でも、実際そういう芸だと思います。

コロッケ

みなさんの思い出の一部になりたいです。

それが、コロッケのものまねの、
ぼくが目指すエンターテインメントの、
理想のかたちだと思っています。

<おわります>