東京カリ〜番長・水野仁輔さんが選ぶ カレーの思い出。
#その1 はじめてこのコンテンツを読むかたへ。
はじめまして! 僕たちは、東京カリ~番長と言います。

“カレー”の“番長”だなんて、
厳ついカレーマニアを想像しちゃうかもしれませんが、
「東京カリ~番長」は、個人名ではなく、
グループ名なんです。
爽やかな(?)男性8人組の出張料理集団。
全国各地のイベント会場に出張し、
その土地の食材でオリジナルのカレーを
ライブクッキングする活動を13年ほど続けてきました。

僕たちは、カレーマニアの集団ではありません。
イベントごとやお祭り好きの集団です。
クラブDJのようにレコードをかけて
会場を盛り上げたりすることもあります。
だから、おいしいカレーの作り方を研究したり、
おいしいカレー店を探し求めたりすることよりも、
カレーをキッカケにみんなで盛り上がれる
楽しい時間が好きで活動しています。

ほぼ日さんとは、「ほぼ日カレー部」のイベントで
タモリさんと一緒にカレーを作ったり、
糸井さんのサプライズバースデーパーティで
カレーを作ったり、
お正月の座談会でカレー話をしたりしてきました。
そこにカレーがあるだけで楽しく盛り上がれる。
カレーの不思議な魅力にとりつかれているんです。

ただ、そんな東京カリ~番長メンバーの中で
ひとりだけ例外がいます。
そう、調理主任である僕、水野仁輔は、
メンバーで一番のカレー好きにして唯一のカレーマニア。
ラジオや雑誌に出たり、講演会をやったり、
カレー本なんて、これまであの手この手で
30冊近いタイトルを出版してきました。
いわゆるソロ活動というやつです。

カレーのことならなんでもやりたい僕は、
今までずっと温めてきた企画があります。
それが、「カレーの思い出」です。
僕は、人のカレーの思い出話を聞くのが
何よりも好きなんです。
日本の国民食であるカレーには、
日本人の数だけストーリーがあります。
僕のようなマニアじゃなくても、
ちょっとしたカレーにまつわるお話に、
その人の人となりや人生が顔をのぞかせる。
それがたまらなく面白い。

もっといろんな人の話が聞きたい! と、
ほぼ日さんで連載をすることになりました。
早速、募集をしたところ、
たくさんの投稿が届きました。
もう、感涙ものです。

では早速、ご紹介いたしましょう!

001
cenosan/男性/54歳

中学生の頃だったと思うのだけれど(この辺は不確か)、
今はもう亡くなったお袋の誕生日のプレゼントという事で
作った事を覚えています。

見よう見まねで作ったのだと思う。
教わった覚えは無いので。
うちは親父が早くに亡くなったので
家族はお袋と俺と弟が一人。
お袋は働き通し、の日々。
少しは家事の手伝いをしようと思ったのかも‥‥
何かを買うお金も無かったし。
初めて作ったカレーは、何時間も煮込んで煮込んで、
しまいには、ジャガイモがとろけて
形がなくなるほど煮込みました。
お袋が、そりゃあ喜んで何回も美味しいと言っていました。
お袋が無くなってからお袋の日記を見たら、
その誕生日のカレーの事が書いてあって
「凄く嬉しかった」って書いてあった。

じんわり来る思い出、ありがとうございます。
何回も美味しいと言ってくれたってことは、
心の底からおいしいと思ってもらえたんだと思います。
しかも、それが日記に書いてあっただなんて、
一生の宝物ですね。
カレーは、好きな人に作ってあげるのが
一番おいしくできるのかも。
僕は自分のレシピ本を誰かにプレゼントするときに、
「大好きな人に作ってあげてください。
 それが一番うまいから」って
メッセージを書いたことがあります。
お袋カレーならぬ、息子カレー。
僕も今度作ってみます。

002
ゆう/女性/41歳

実家のカレーは、必ずバーモントカレーの甘口。
なぜなら、父が辛いものが全くダメだったので。
一味や七味はもとより、
わさびや辛子、はては胡椒さえもダメな人でした(笑)。
小学生の頃、母がルーを買い間違えてしまって、
辛口のカレーを作ってしまった事がありました。
家族全員、一口食べてビックリ!!!
辛くて食べられません(汗)。
でも、誰もどうしてよいかわからず、
途方に暮れてしまいました。
その時、父がおもむろにカレーに
砂糖をかけて食べ始めたのです!
‥‥みんなも恐る恐る砂糖をかけて一口。
しかし、砂糖をかけたカレーは妙に甘いだけで、
辛さはそのまま。
辛さはちっとも緩和されてないうえに、
さらに食べるのがツライ味になってしまいました。
でも、父はそんなカレーをもりもりと食べて見せ、
それが妙におかしくて、
みんなで辛くて甘い残念なカレーをヒーハー言いつつも、
笑いながら食べたことが、
よい思い出として記憶に残っています。

お父さん、頑張りましたね。
おもむろに砂糖(笑)。
よく聞かれる質問に
「辛いカレーを辛くなくする方法はありますか?」
っていうのがあります。
残念ながら答えは、「ありません」。
辛いのは何をどうしても辛い。
砂糖を入れたら甘くはなるけれど、
辛さが軽減されるわけじゃないんです。
生卵を溶いて混ぜながら食べたら、多少ごまかせるかも。
卵が舌の痛覚(辛みを感知する場所)を
コーティングするから、
辛さを感じずに胃袋に落ちる。
でも胃袋に落ちてからはちょっと大変(笑)。
だから、お父さんのやせ我慢は、この状況においては
最善策だったのかもしれませんね。

003
HNぱた

大学生の頃、つきあっていた彼氏の家に遊びに行きました。
住宅街のすてきな一軒家。
「おふくろのカレーは結構うまいんだよ」と
お昼にカレーをごちそうになりました。
我が家の黄色いカレーとまったく違う、
今でいうところの「欧風カリー」。
ちょうど帰ってきた彼の妹と食べていると、
彼女が「やだ、ママ、今日のカレー、
しめじが入ってる。マッシュルームじゃなきゃだめ」
‥‥うちのカレーにはちくわが入ってるよ、
とは言い出せなかった18の夏。

ははは。
「マッシュルームvsちくわ」じゃ、負けるよね。
「欧風カリーvs黄色いカレー」も勝ち目がない。
しかし、なんでマッシュルームって
そんなに印象いいんでしょう?
高価な食材だから?
でもカレーの具にマッシュルームが入っていて
喜ぶ日本人って、そんなに多くないと思います。
具にするよりもすりおろして炒めたほうが
コクが増しておいしくなります。
これ、意外と知られてない裏ワザですよ。

004
なぼちん/女性/41歳

ウチのオットはイモが大好きなイモ男なのだけれど
ワタクシの作るカレーにはじゃがいもが入ってない。
じゃがいもそのものはキライじゃないんだけど。
我ながらどうしてだろう、とつらつら思いみるに。

小学生の頃、晩ごはん作りを
よくお手伝いさせられたものですが
うちの母親、カレーの時は必ず
「あんまりかもさないで!
 (訳:あまりかき混ぜないで)
 いもが崩れるじゃん!」
と口うるさく言うのでした。
どうも、煮崩れたじゃがいものデンプン質が
ルーに混ざってざらざらするあの舌ざわりが
母はキライだったらしい。
がしかし、「焦げ付かさないでね!」とも言われる。
いもを崩さないように、かつ焦げ付かせないように、
という難しい要求をクリアするのに、
小学生のワタクシは大変な緊張を強いられたのでした。
その記憶がワタクシをして、
カレーのじゃがいもを忌避させているらしい。

そしてこないだ知ったのですが、
ウチの姉のカレーにも
じゃがいもは入らないそうです。
ああ、母の呪い。

カレーにジャガイモ入れるの、僕は結構好きです。
肉じゃがのジャガイモは「なきゃなくてもいいかな」
と思ったりするけど、
カレーのジャガイモはあり。
でもカレーのニンジンはあんまり好きじゃない。
煮崩れるのが嫌だったら
男爵イモを使わない方がいいのかもしれません。
メークイーン系にすれば、形が割とちゃんと残るし、
素揚げにして煮込みの後半に加える方法もおすすめです。

005
だだ/女性/27歳

初めて一人で作った最初の料理がカレーだった、
という投稿がありましたが、
わたしが初めて一人で作ったのもカレーでした。
我が家には、小学校1年生の夏休みに一人でカレーを作る!
というルールがあったのです。
母がレシピを作ってくれ、一緒に買い物に行き、
一人でキッチンに籠もりカレーを作る‥‥
ということをわたしも妹も経験しました。
思えば、仕事を持っていた母による、
娘2人を即戦力にしてやる!
という思惑だったのかもしれませんが、
おかげさまで、ちゃんと料理のできる人間に成長しました。
ちなみにそのルールは、2年生でハンバーグ、
3年生でごはんとみそ汁‥‥と
年々レベルアップ? し、
4年生でたいがいの料理は自分で作れるようになった時点で
なんとなく終了しました。
お母さん、ご飯とみそ汁って
完全にただの晩ご飯じゃん‥‥。
でも、自分に子どもができても、
「我が家では1年生の夏休みに
 カレーを作るっていうルールがあるんだよ」は
踏襲していきたいと思っています。

なんと、素晴らしいルール!
ひとりでキッチンにこもらせるっていうのが
いいんでしょうね。
困っても手を貸さない。
自分で考えなさい、と。
カレー、ハンバーグ、みそ汁っていうのは、
すごく考えられたラインナップだと思います。
それぞれに大事なテクニックがある。
これ、本当にいいルールだなぁ。
水野家でも使わせてもらっていいですか?
うちの場合は、小学校6年生になったら、
スパイスカレーかな。
是非ずっと踏襲し続けて行ってください。
2012-12-27-THU
最新のページへ   次へ

mail tweet home