会場
ざわ、ざわ、ざわ‥‥。
♪キン、コン、カーン、コーン~。
(チャイムの音とともに水野さんが登場)
水野
今日はお越しいただきありがとうございます。
カレースターの水野仁輔です。
今日のトークイベントは
『カレーと、将棋と、熱いトークの夕べ』。
‥‥イベントタイトルからして、
もう意味がわからない感じですけど。
会場
(笑)
水野
今日はカレーと将棋をテーマに、
プロ棋士の森内九段と、いろいろな話を
させていただけたらと思っています。
さて、森内さんをお呼びする前に、
まずはこのイベントのそもそものきっかけについて
お話ししますね。
今日のイベントは、ぼくがほぼ日に掲載していた
「カレーライスの正体」
という連載がありまして、
それを新書にまとめた
『カレーライス進化論』
という本の
出版記念イベントになります。
こちらの本が5月上旬に発売になりまして、
本の編集者と
「発売記念でなにか対談イベントをできたら」
という話になったんです。
ほぼ日に掲載していた経緯もあるので、
この場所(ほぼ日の大ホール)も使える。
じゃあ、相手は誰がいいんだろう?と
ふたりでしばらく考えていたんです。
それで「カレーの学校」の授業に
その編集者も見学に来たりしてたんですが、
ぼくが実は将棋が大好きなものですから、
授業のなかで、
「カレー好きで知られる森内九段に
いつか自分のカレーを食べてもらえたら」
みたいなことを自分の夢のひとつとして、
熱く語っていたんです。
水野
そしたらその編集者もたまたま将棋が好きだったので、
ぼくの話を聞いて
「森内九段との対談がいいんじゃないか」
と思いついたんですね。
彼はカレー好きでもありますから、
カレーと将棋がテーマのトークイベントなら、
自分もぜひ聞きたいと。
それで「大丈夫かなあ」とも思ったんですけれども、
彼が
「こういうのは聞いてみるのが大事なんです」と、
さっそく将棋連盟に問い合わせてくれたんです。
将棋好きの人にはわかると思いますが、
森内九段って本当にものすごい人なんですね。
「永世名人」という、
5期にわたって名人位を保持した人しか持てない称号の
十八世。
つまりこの世で18番目に
名のれるようになった人なんです。
永世名人は十八世が森内さん、十九世が羽生さんで、
二十世名人というのはまだいない。
そのくらいのすごい人が、まさかこんな
『カレーと、将棋と、熱いトークの夕べ』みたいな
不思議なトークイベントに来てもらえるとは
思わないじゃないですか。
会場
(笑)
水野
だけど、意外や意外、将棋連盟のほうから
「いいですよ」とお返事をいただきまして、
ぼくも担当編集者もびっくりしまして。
ふたりでその日からものすごく緊張して、
「うわーどうしよう」と何度も打ち合わせをして。
そして先日、森内さんとも打ち合わせをさせていただき、
森内さんもすごくやさしいかたで、
なんとかなりそうな感じにはなりました。
会場
(笑)
水野
ということで、今日はすこし変わった
トークイベントではありますけれども、
できるだけみなさんに
「聞けてよかったな」と思ってもらえる話が
できればと考えているので、
どうぞよろしくお願いします。
会場
(拍手)
水野
で、森内さんをお呼びしようと思うんですが、
そのまえにもうひとつだけ話をさせてください。
実はぼく、今回のイベントの打ち合わせのときに、
森内さんの絵柄のTシャツを着てたんですね。
森内さんの似顔絵と「お昼はカレーにしようかな」という
言葉が書いてあるもので、
今回のイベントの募集ページに載っていた
こちらですね。
このTシャツを着てご本人と並んで
ものすごく嬉しそうに写真に写っているという、
もう、将棋ファンの記念写真にしか
見えないものですけれども。
会場
(笑)
水野
それで今日の話になりますけど、
ついさきほどまでぼくは、
控え室で森内さんと軽く話をしてたんです。
そしたら森内さんがふと、
自分の持っていた紙袋をごそごそしはじめたわけです。
あ、どうしたんだろう‥‥と見ていたら、
森内さん、おもむろにこのTシャツを取り出したんです。
水野
ぼくも気になって、
「どうしたんですか?」とか聞くわけです。
すると森内さんが
「いや、うちに1個あったんで持ってきたんです」
と言うわけです。
「そうなんですか」とかぼくも答えるんですけど、
このTシャツ、ぼくはすでに1枚持ってるわけですよ。
だからぼくへのプレゼントでもないよな‥‥と。
で、不思議に思っていたら、
森内さんがこう言ったんです。
「‥‥今日わたし、これ着たほうがいいですかね」
会場
(笑)
水野
ぼくもびっくりして
「え、それ着るんですか? いや、
森内さんが着てるのちょっと見たいけど‥‥
あの、森内さん的にはそれ、大丈夫なんですか?」
って聞いたら、
「自分は大丈夫ですけど」って。
会場
(笑)
水野
「でも、将棋連盟的には大丈夫なんですか?」
と聞いたら
「まあ、スーツのほうが無難ですよね」
とは言われまして。
‥‥と、そんな話をしていたら
イベントの開始時間になりまして、
ぼくはバタバタとここに出てきたわけです。
だからこのあとの森内さんが、
あのTシャツを着てくるかどうか、
ぼくはいま、ちょっとだけ
楽しみにしているんですけれども(笑)。
それでは、お迎えしたいと思います。
森内俊之九段です‥‥どうぞ!
(つづきます)
2017-07-29-SAT
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN