ダーリンコラム

糸井重里がほぼ日の創刊時から
2011年まで連載していた、
ちょっと長めのコラムです。
「今日のダーリン」とは別に
毎週月曜日に掲載されていました。

(   )があるからおもしろい。

なにが、どう発見なのかはわからないんだけどさ。
発見したような気がしたんだよ。

65+35=100

って書いてあると、
まったくおもしろくなもなんともなくて、
読む気もしないで通り過ぎちゃうだろう?

でもさ、

65+35=?

だと、ちょっとは読む気がするんだな。
思わず「100!」とか、言いたくなっちゃう。

65+( )=100

って書いてあったとしても、
「ん?」っていうくらいのことは思うしね。

世界でいちばん高い山はチョモランマです。

と書いてあるのは、65+35=100と同じだよね。

世界でいちばん高い山は?

だったら、「チョモランマじゃなかったっけ」と、
少しは読む気になったりする。
さらに、

世界でいちばん(  )はチョモランマです。

なんかのほうが、興味をひきそうだな。

クイズにすると、読む気になるのか‥‥。

うすうすそんな気がしていたけれど、
こんなふうに、
おもしろくもないようなことで、
たとえてみるとつくづくわかるよな。

ある事実なり、法則なりを、
完成形で教えてもらうよりも、
いっしょに考えながら、いっしょに見つけるほうが、
人間の興味をひくというようなことなのかな。

完成された人なんているはずもないけれど、
完成されているかのようにふるまう人は、いる。
で、だいたいは、そういう人に興味はわかない。
それよりは、
その人の魅力について、
こっちのほうから考えたくなってしまうような人、
そういう人のほうがおもしろいんだよね。

人ばかりじゃなく、ものごと、みんなそうかもしれない。
さっき例に出したチョモランマにしても、
世界一高い山、というだけで済まない謎が、
感じられるんだよね。
数式の穴あき問題みたいに、
あちこちに穴が空いてるように思える。
そこがおもしろさなんだろうな。
いやいや、チョモランマのことを、
「世界一高い山だろ」と言って、
その段階で「完」にしちゃう人にとっては、
謎なんかなにも残ってないんだろうけどね。

ここ何年か、ずっと予算が少なくて済むからか、
テレビでもクイズ番組が盛んだ。
あれだって、答えを、
問題といっしょに言ってくれたほうが、
「親切だ(笑)」とも言えるよね。
でも、もし万が一、そうやったとしたら、
とんでもなくつまらない番組になるだろうねぇ。

ぼくが、ミーティングやら対談やらが好きなのは、
じぶんにも、相手にも、双方の間にも、
穴埋めを待ってる「謎」が、
しょっちゅうふつふつと湧いているからなんだ。
知っていることを言ってるだけ、
というようなときにでも、
思わぬ「謎」が、ひょいっと顔を出す。
それをじっとみたり、いっしょに見つめたりすると、
おもしろくなるんだよねぇ。

などと、穴だらけの文章を、
今回も読ませてしまって(     )。

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