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ぷはーっ!
はふーっ!
ぜいぜい‥‥。
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やっと深く息ができますね。
きょういちにち、ずっと緊張していたものね。
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そうなのです。ぼくらはいま、
デヴィッド・ルヴォーさんの対談の収録を終えて、
戻ってきたところです。
緊張したー! でも、おもしろかったー!
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なにせ、対談のゲストが、
ひとりは宮沢りえさん。
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そうだよー。ただでさえ、
世界的な演出家と言われるルヴォーさんで
緊張しちゃうのに。
あ、さいしょにルヴォーさんが
「どれくらいすごいのか」といいますと。
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トニー賞を3回受賞なさってます。
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そもそもトニー賞ってなんだい?
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正式にはアントワネット・ペリー賞って言うんですが。
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ぜんぜん知らなかった!
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ブロードウェイで上演された
演劇、ミュージカルにたいし、
「アメリカン・シアター・ウイング」という団体と、
「全米劇場プロデューサー連盟」が主催、
700人の選考委員から選出される、
アメリカの演劇人にとってこれ以上の栄誉はないという
すばらしい賞なのです。
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それウィキペディア読んだ?
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ちょっと読んだ!
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それはつまり、アカデミー賞やグラミー賞、
エミー賞やピューリッツァ賞みたいなこと?
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まさしくそのとおり!
それをルヴォーさんは、3回受賞しています。
さらに、ノミネートはさらに9作品も。
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すごいね‥‥。
たしか、組んだ役者さんたちもすごいんだよね。
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調べましたよ。すごいですよ。
オーランド・ブルームで『ロミオとジュリエット』を、
リーアム・ニーソンで『アンナ・クリスティ』を、
ジェシカ・ラングで『ガラスの動物園』を、
アントニオ・バンデラスで『ナイン』を。
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くらくらしてきました。
そういえば対談でもふつうに
「バンデラスくんが」みたいな感じで喋ってたよね。
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うん、うん。
その世界的な演出家のルヴォーさんは、
じつは日本ともとても縁が深いかたで、
1988年に初来日、
1993年にはtpt(シアタープロジェクト東京)という
ちいさな演劇カンパニーの立ち上げにかかわって。
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いろんな役者と組んで、
著名な戯曲を独自の演出で公演、
名作と言われる舞台をいっぱいつくってきたんだ。
くわしくはべっかむ3渾身の
ルヴォーさんのプロフィールページをごらんください!
そして、それが、ミュージカル『ナイン』につながって。
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縁あってそのリハーサルを観たぼくらが
すっかりまいっちゃって、
「ほぼ日」で特集したっていうわけでした。
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かなり勝手に応援したねえー。
演劇のことがよくわかっていないぼくらが
稽古場に通いつめてレポートしたわけだから、
ルヴォーさんにしてみても
そうとう奇妙な応援だったと思うよ。
あれは何年前?
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あれは『ナイン』年前です。9年。
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そんなに経つんだ!
『ナイン』は、その後映画になったから
ご存じのかたもいると思うけれど、
フェリーニの『8 1/2』を下敷きにしたミュージカル。
大人っぽくて、セクシーで、
主人公が愛すべき、ちょっとダメなモテモテ中年男。
音楽もキャストも、とってもよくてねー。
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ルヴォーさんの劇場版のほうが、
ずっと好きですよ、ぼくは。
映画好きとしてはくやしいくらい。
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ぼくもミュージカルでは、
あれを超える作品には出会えてないよ‥‥。
そして今回、なぜ宮沢りえさんが
対談相手として出てくださったのかというと。
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この6月6日から東京、そして19日から大阪で
ルヴォーさん演出の『昔の日々』という
お芝居がはじまるのです。
ルヴォーさんが日本で、日本語、日本人キャストで
演出をするのはひさしぶり。
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うん。そしてそのパンフレット用の対談にと、
劇場が、りえさんにオファーをしたんですね。
りえさんは6年前かな、
ルヴォーさん演出の『人形の家』に出演なさっている。
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そのお芝居、たしか渋谷のシアターコクーンで、
糸井さんといっしょに観に行ったんじゃなかったかな。
‥‥すごかったよね。
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うん、すごかった。とんでもなかった。
そもそも『人形の家』って、すごく有名、かつ、
すさまじく「古い」話だって思ってたんだよね。
女性の自立の話だから、そりゃ19世紀には
センセーショナルなことだったと思うけれど、
なぜいま? なぜルヴォーさん‥‥? って。
そんなふうにちょっとたかをくくって行ったのに、
もう脳天ぶんなぐられるような衝撃で。
胸ぐらつかまれて揺さぶられるみたいな。
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ありきたりな言い方だけど、
「まばたきを忘れる」、
「かたずをのむ」、
「手にハンカチを握りしめる」、
そんな3時間だったよね。
舞台は四方を客席がかこむリングのような形式で、
そしてりえさんは、完全に主人公の「ノラ」だった!
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目の前で起きているのは、
芝居というよりも
現在進行形の出来事だとすら思えちゃった。
あれはもう「体験」に近いよね。
あんなふうに、舞台と客席が一体になった
濃密な時間をすごせるんだから、
演劇ってすごいなぁて思ったよ。
観終ったあと、完全に脱力したもの。
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その主演女優と演出家が、
長い時を経ての対談だものね。
ほんとうは劇場のパンフレットだけに載る予定だったのを、
「それ、パンフレット版とは別に、
ほぼ日編集版として、ください!」って
武井さんが前のめりにお願いをしたんでした。
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これはねー、もったいないよ。広く読まれるほうがいい!
このふたりだったらぜったい面白いに
決まってると信じてたし、じっさい、すごかった。
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1時間という限られた時間のなかで、
りえさん、みごとなインタビュアーでしたよね。
名作といわれる舞台をつくった
「役者」と「演出家」のスリリングな関係。
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あんなに深い話になるとは予想していなかった。
その対談を、ほぼノーカットでお届けします!
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宮沢りえさんの対談のあと、
「ほぼ日」だけのスペシャルとして
さらに3時間ほど、ルヴォーさんの時間をいただいて、
また別の角度からのインタビューをしました。
これは、ぼくたちだけじゃ
太刀打ちできないだろうと思ったので、
たのもしい助っ人をお呼びしてね。
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それが、木内宏昌さん!
『ナイン』のときに広報を担当なさっていたかたで、
そもそも劇作家であり、演出家で、翻訳家でもあるひと。
しかも、「ほぼ日」のとも、学生演劇時代の
ともだちだったりもするというご縁があって。
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いまは、今夏、8月9日~31日に
シアターコクーンで上演される『炎立つ』
(栗山民也演出/片岡愛之助主演)の脚本に
たずさわっているんだよね。
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すごいよねー。
そんな木内さんが、
ルヴォーさんを尊敬する演劇人のひとりとして、
「ここまでちゃんと訊いたことがない!」という
ひざ詰めのインタビューをしてくださったのです。
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ほんとに「ひざ詰め」だったよね。
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対談場所、居酒屋の掘りごたつだったからね‥‥。
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りえさんとは、ホテルの会議室を借りたんだけどね‥‥。
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でも、くだけた場所だからこそ、
ルヴォーさんもいろんなことを話してくださったよね!
このインタビューも、ぎゅっと5回に濃縮編集しました。
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このふたつの対談を読んで、
すこしでも興味をもってくださったら、
ぜひ劇場に足をはこんでほしいよね。
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そう、ある意味、とても地味な芝居だし、
ハロルド・ピンターって「不条理劇」って言われてて、
とっつきにくい作品ではあると思うんだ。
東京も大阪もまだ席は余裕があると聞いているので、
ぜひみなさん、ルヴォーさんの舞台を
「体験」しに行ってみてください! |