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糸井 |
まず、本田さんが
こういうものが必要なんだと
思ったところから話していきましょうか。 |
本田 |
「ほぼ日」で健康についての連載を
9年以上つづけさせていただきましたが、
もともとわたしは一読者で。
アメリカの病院でレジデントをしていたころに
「ほぼ日」を知って、すごくおもしろいなと思って、
メールを出したんですよね。
そのときに自己紹介として
少し自分のことを書いたんですが、
それから、健康のことについて書いてみないかって
糸井さんにお誘いいただいて。 |
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糸井 |
ええ、そうでしたね。 |
本田 |
わたしは臨床医になって16年めになりますが、
研修医の1年目から今日まで、
ずっと変わらず思っているのは、
わたしたちが知っている
健康を守るために役立つ知識を
じょうずに患者さんにお伝えすることが
とっても大事だということです。
そして、それがうまくできていないことに
いつももどかしさを感じていました。
わたしたちが知っていることを、
お役に立つから、ぜひ知ってください、
そういう気持ちが、あの連載だったんです。 |
糸井 |
ええ。 |
本田 |
自分を守るために、
自分の健康や生活を守るために、
ぜひ役立ててもらえるとうれしいなと思う、
医療の現場で働いている者がもつ知識や経験、
それをお伝えする場として、
「ほぼ日」は最高の場です。
なぜかというと、わたしたち医者が
ふだんお目にかかるかたって、
みなさん「患者さん」なんですね。 |
糸井 |
なるほど。 |
本田 |
すでに病気になってしまったかたにしか
お会いできません。
でもほんとは、もっと前に、
ここをもう少し気をつけていたら、
病気にならずに済んだかもしれない。
そういうことが、たくさんあります。
それをお伝えできる場所として、
あの連載があって。
とくに健康に興味のないかたでも
たまたまクリックして読んで、
感想を送ってくださることも多くて、
ほんとうにありがたかったんです。 |
糸井 |
ブログのない時代だったからね。 |
本田 |
そうなんですよね、ほんとうに。 |
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糸井 |
機能としてのブログができてからは、
自分がひとりで思い立ったことを
しゃべる場所というのができたんだけど、
「ほぼ日」をはじめたころは、
まだブログのない時代だったから。
じゃあ書いてみたら? みたいな感じで
あの連載をはじめたんです。 |
本田 |
最初のころは、前日の夜に原稿を送ったら、
その数時間後にはそれがアップされていて(笑)。 |
糸井 |
すごいことしてたよね(笑)。 |
本田 |
ほんとに。そんなふうにしてわたしは、
一般のかたに健康のことをお伝えするということを
あの連載で実現できたんですが、
インターネットとはまた違う媒体で、
自分の健康を管理するようなものが
できるといいなということをずっと考えていたんです。
自分の健康についてふだんからまとめておいて、
書きながらも役に立つし、誰かに見せても役に立つ、
「おとなの母子手帳」のようなものを
つくりたいと思っていました。 |
糸井 |
なるほど。 |
本田 |
その考えをまとめたのが、
アメリカでの生活を終えて日本に戻った後に
東京大学の「医療政策人材養成講座」という講座に
通っていたときです。
その講座は、医療政策について話し合う1年間のコースで、
わたしはその2期生です。
だいたい40人くらいの人が集まるんですが
その40人は、医療に関する4つのグループから
バランスをとって採用しています。
医療従事者、医療を受ける立場、
メディア、行政の立場から医療を考える政策立案者、
そういう立場の違う人たちが集まって、
レクチャーを聞いて話し合い、
自分たちでなにかテーマを決めて、
プロジェクトとして形にするんです。 |
糸井 |
その講座はどのくらいの頻度で集まるんですか? |
本田 |
週に1回、3時間くらいですね。
そのプロジェクトとしてわたしが考えたのが、
自分の健康状態を知るための道具をつくるということ。
それまで自分であたためていた
「おとなの母子手帳」のようなものをつくりたい、
ということでした。
それに賛同して集まってくれたのが、
消費者センターの相談員のかたと、
健康雑誌の編集者のかた、
医療問題を扱っている弁護士さん、歯医者さん、
それからソーシャルワーカーのかた。
わたしも含めた6人が意見を出し合って、
1年かけて、手帳のようなものができたんです。 |
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糸井 |
ははぁ。 |
本田 |
講座では賞もいただいたんですけど、
でもそれを見てみても、おもしろくないんですね。
これを実際に使ってもらえるものにするには、
いったいどうすればいいかなと思いながら、
講座が終わったあとも2年間、
自分で書き足したり、抜いたり、熟成させて。
ようやく今年のはじめに、
これくらいあれば不足なく、
役に立つと思うものができたんですけど‥‥
こーんなに厚くて。
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糸井 |
(笑)ええ、見ました。 |
本田 |
書けば絶対に役に立つものにはできたんですが、
ぜんぜんおもしろくないし、
分厚くて、見返すのもめんどうくさい。
実際にみなさんに使っていただけるかどうかは
きわめて難しい、と思いました。
それぞれのエレメント、内容については、
ものすごく自信があるんですが、
使っていただく自信も
これが役に立つものだということを
みなさんに知っていただく自信もない。
3年かけてつくってみたものの、
届ける方策が、わたしにはないということに
気づいたんです。
それで、ほぼ日手帳という、
あれだけたのしい手帳をつくっている糸井さんに、
何かしらお知恵を貸していただけないかと思ったんです。 |
糸井 |
そこで、ぼくらがその分厚いファイルを
見せられたわけです(笑)。 |
本田 |
はい(笑)。 |
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糸井 |
それは本田さんが心からやりたいものだったし、
本田さんの、ものすごく大事な友だちみたいなものとして、
健康手帳の原型があったんですよね、まず。
これはいったい何なんですか、というときに、
ぼくが、あ、もしや、と思ったのが
そのなかにあった、
「転ばないでください」という項目だったんです。
転ぶということが、どのくらい危険なことで、
ひとつのサインになるのかということが書かれていた。
それが、本田さんのその分厚いファイルのなかで、
ものすごく目を引いたんですよ。
高齢者が転ぶと危険だということを、
知らなかったわけじゃないけども、
ほんとうに重要なことなんだな、と思って、
「これ、なんですか?」って
聞きたくなったんです。
(明日につづきます) |