身近な医者の底力シリーズ かかりつけ医だから できること。

本田 何科に行ったらいいか迷うようなときも、
まず、かかりつけのお医者さんに
診てもらうといいですよね。
松村 そう、科がはっきりわからないものもありますからね。
患者さんが気になるところは体中にわたりますが
だからといってそれに対応する科がないこともあります。
「爪の半月板が大きくなってきたような気がする」
って言われても
それは爪科か? みたいなね。
ほぼ日 ありますあります、そういうこと。
そういうときはいつも、
まずインターネットで検索するんですけど、
たとえば「爪がでこぼこしてきた」と検索したら、
なんだかいろんな病名が出てきて
よけいに不安が増大してしまったりして。
松村 あと、みの(もんた)さんの番組のあととかね、
心配になる人が、ぐっと増えますよ。
ほぼ日 ああ、そうですか。
ほんとうにあれ、情報で‥‥
松村 踊らされちゃいますね。
ほぼ日 はい。
それでもう、なにか、
これは重病なんじゃないか‥‥
みたいな気がしてきて。
松村 どうして心配になったのか、それが、
「みのさんの番組を観たから」だったら、
「それを観て心配になった人、多いんですよ」って
言ってもらうと安心じゃないですか。
ほぼ日 「あ、わたしだけじゃないんだ」と思って、
だいぶ冷静になりますね。
松村 でしょう。でもそれをネットで調べて
夜中にひとりで考えていたら、
「このままわたし死ぬかもしれない」って
思いつめてしまうかもしれない。

自分のこともそうだし、
家族のことでもそうですよね。
よくあるのは、たとえば
田舎にいるお母さんが倒れて病院に運ばれて、
今、集中治療室にいて、
バルーンっていうのを入れるらしいんだけど、
バルーンって何なんだろう、って
うちに聞きにきた人がいるんですよね。
「バルーン」って言われても
わかんないんですよね。
ほぼ日 バルーン?
松村 風船を入れるんですよ。
ほぼ日 風船が、からだに?
松村 心臓病の治療の方法のひとつなんですが、
ふつうはわからないですよね。
もちろん主治医の先生と話せば
説明してくれるんだけど、自分は東京にいて
直接話ができないと
わからないじゃないですか。

そういうことも気軽に聞ける
お医者さんが近くにいると便利ですよ。
ほぼ日 あの、そんなことを聞いてもいいんですか?
つまり、自分のことじゃないことでも?
松村 いろんな相談を受けますよ。
子どもが太っちゃってとか、
ペットが寝たきりなんだけどとか、
いや、うちはペットはちょっと‥‥とかね(笑)。
まあ、それに限らず。
本田 からだについての、
よろず相談所みたいな感じですね。
ほぼ日 さきほどの繰り返しみたいなことですけど、
あの‥‥自分の実感としては
やっぱりお医者さんってなかなか
いろいろ訊きづらいと思うんです。

たとえば「この薬を飲めば大丈夫ですよ」って
お医者さんに言ってもらって、
それって、どう大丈夫なんだろう、
もうちょっとくわしく知りたいな、
とか思うんですけど、
そういうことを聞くと不愉快に思われないかなとか、
しつこく聞くと嫌がられるかなって
躊躇してしまったりするんですが‥‥。
松村 そうやって気を遣わなきゃいけない先生は、
よくないです。
そういうときには話ができて、
聞いてくれる先生っていうのが大事です。
かかりつけのお医者さんだったら、
それは条件のひとつですよ。
ほぼ日 聞いていいんですね、先生に。
本田 もちろん。
松村 もちろんですよ。
だってお金払ってるんですから。
ほぼ日 どうして聞けない気がしちゃうんだろう。
松村 うーん、でもね、ぼくもそうですよ。
たとえば髪を切りに行って、
もうちょっと、ここ切ってほしいと思っても、
なかなか言えなかったする。
ほぼ日 ああ、そうですね(笑)。
松村 車を修理に出したときとかも、
どこがどうなってこうなんですか、
なんてこと、なかなか聞けないですよ。
専門的なことだとね。
それがお医者さん相手だと
特にそうかなとは思いますけど。
綿貫 それと、ある程度は
お医者さんにまかせて、
何とかしてほしいというのも
どこかにあるんじゃないでしょうか。
ほぼ日 あ、たしかにあります。
綿貫 ちょっとそのあたりは
さじ加減でやってください、っていうのが
あったりもするんじゃないかと思うんです。
ほぼ日 うん、そうですね。
松村 それでも、それ以上に気になることがあれば、
ちゃんと聞けるような関係が大事ですよ。

やっぱりどうしても、
医学的なことって、わからないからね。
そのわからないことを説明してくれたり、
先生にもわからないことだったら、
「じゃあ調べときます」って
言ってくれるようじゃないと。
本田 解決法はこの人に聞きましょう、ってね。
松村 そう、お医者さんにも
わからないことはあるんですよ。

それと、これは大事なことですけど、
自分では病気じゃないと思っていても、
お医者さんから見ると
「病気の芽」のことがあるんです。
それは自分から言わなくても
お医者さんは教えてくれないといけない。
それが、かかりつけ医のほんとうの仕事ですから。
(つづきます)



2010-04-10-SAT