ITOI

頭出し:電波少年的放送局の62時間。
いくつになっても、馬鹿は馬鹿。

臨時更新で、その時その時の会話をお届け!
数時間ずつ更新で、木曜深夜の対談をご紹介!!

[2日目の総括。T部長との会話ですよ]
<第4回 なぜ、人と組む?>


糸井 やっぱり、ローマの皇帝って、
とんでもなく優れていたみたいですよ。
優秀な人が皇帝になるし、
世襲になると腐るとかあるけど、
例えば戦略的なシーザーのようなものと、
戦略的ではないマザー・テレサのようなもの、
どっちを自分が目指すのかなぁというものが。
糸井 でも、マザーテレサ本人は、
いろいろな戦略をめぐらせたと思うよ。
つぶされないためだけでも
戦略って必要で。
運だけじゃ、あそこまでいかないですよね。
糸井 行くはずないですよね。
それと、長い期間もってきた人って、
勝ち戦の次の段階での仕事で
たいへんな思いをしてますよね。
マザー・テレサが
ノーベル平和賞を取ったことを
サクセスストーリーと書いた本があったら、
おもしろいかもしれない。
糸井 アンチよりも強くないといけないから、
精神的武装が要ったでしょうね。
その精神的な理論武装を、
マザー・テレサ本人がやっていたのか、
隣に誰かがいたのかを知りたいですよね。
糸井 ひとりでどこまでも行けた人って、
きっといないんだろうなぁ、と思うんです。
ひとりの次の単位はふたりで、
ふたりはいますよね。
ホンダとか、創業者はふたり。
三人もそれ以上もあると思うけれども、
自分の考えを殺してでも誰かに合わせるという
瞬間を持つのが、組織の原因ですよね。
組織じゃないとできないことだよなぁ、
と思って、ぼくらも、脱職人化をしてますよね。

料理人の世界でも、有名な料理人は、
いい組織の中で働いていますよね。
ひとりで材料買いにいけないもん。
「俺は腕がいい」って言っても、
仕入れの時にお金がなければ仕入れられない。
昨日イトイさんと話してうちに帰って
電波少年をつけたら、ホストの零士さんが
「ぼくには、仲間か敵しかいませんから。
 ともだちはいません」
とパーンと言われた時に、
すごいなぁと思ったんですよ。
・・・あ、いま、この部屋に
イトイさんを訪ねてくる人がたくさんいて、
すごいなぁと思うんですけど、
そのすごさって、なんですか?
ともだちが多いんですか?
糸井 ぼくはそんなにともだち多くないと思う。
仲間ですね。
・・・あ、わかんない。
ちょっと、バナナ取ってきますね。
零士さんの話を聞いた時に、
イトイさんはともだちが多いというのか、
仲間が多いと言うべきなのか・・・と。
糸井 ぼくは、場所をいつでも作りたい人なんですよ。
仕事を引き受けるのも
いろんな理由がありますけど、
場所がないと、おいでよ、
っていう理由もないし、
ぼくはひとりでいることが好きですから
そんなに人と話もしないし。

だけど、場所を作って話をすると、
反射的に考えないといけないことが出ますよね。
偶然言い出したことで相手が何か言ったり。
「・・・だとしたら、さぁ」
っていう会話が、ぼくはとても好きなんです。
ええ。
糸井 昨日の零士さんと大貫さんたちの会話も、
ぼくはあんまりしゃべっていない。
「そう、そう」って言ってたりする。
でも、ぼくがいないとふたりは会わないし、
新しい組みあわせをつくることはできている。

新しい場所に「おいでよ」って呼んだ時に、
脳の回路が新しい組み合わせを見つけるように、
新しい何かができるかもしれないのが嬉しいんです。
イヤイヤ行ったけど、行ってよかった、
というメールを、大貫さんもくれたりするんです。
「沼澤さんは呼んでくれてとてもいい人だ」
というか・・・。

お風呂って、入る前はめんどくさいですよね。
でも、入ったあとには気持ちがいい。
ぼくはそういうお風呂みたいなものを
用意できたらいいなぁと思うんです。
それ以上に、
好きになってくれとは言わないですもん。
それはめんどくさいもの。
イトイさんのつくった場所への信頼感ですよね。
だからこれだけの人がくるわけだし。
貸し借りがあるわけでもないと思うんですよ。
「あそこいってもソンはない」
みたいなものが、あるんですよ、きっと。
糸井 誰かと誰かが会うといいなと思っていても
やるチャンスがなければ、
実行されないですよね。
それがたまたまあればあるほどいいと思う。
電波少年という番組がなければ
この放送局がなかった、みたいなことですよ。
放っとくとなかったことが起こる、出会う、
みたいなことがあると、いいですよねぇ。
そこを敢えて聞くと、
「それが楽しそうなんだよな」
みたいなものがすべての行動原理で、
いいんですかね?
糸井 いいんじゃないですか。
いろんなものや人の持っている
ポテンシャルを最大限に発揮するというのが
いちばんおもしろいですよね。
「おもしろかったー!」と言いたい。
そこには、生まれてきた理由、ありますよね。
それ以上何を望むんだ、っていう感じです。

そうじゃないことを望む人はそれをすればいいし、
「・・・のために」みたいなつきあいは、
しなければいいんですよね。
「おもしろかった」を作るために
場をプロデュースするというか、
そこにからだが反応していくということ?
糸井 場をつくったことで、
誰かの仕事がうまくいけばおもしろいし、
新しいフィールドを開拓することで、
また可能性がひろがりますよね。
ぼくらのテレビや
イトイさんの広告とかには、ある意味
大衆を動かすということがあるじゃないですか。
そこに戦術とか戦略みたいな計算もしますよね。
そこは?
糸井 計算しないほうがいいんじゃないの?
考えているようじゃ、動機がないんじゃない?

おもしろい、って思った時には
戦術なんか思わせないんじゃないですか。
そんな仕事は、ことわっていると思う。
会社員でもことわる仕事ってあると思いますよ。
それやるならこっちやらせてください、って。

断る権利がないときめるダンディズムも
あると思うけど・・・。
「俺がやれば何でもうまくいく」
と言いたい時期もあるかもしれないけど、
それは「妖刀」みたいなもので、
歯こぼれすると思う。

人から見ておもしろいことをしていると
見られたがって何かをするというよりは、
もうちょっとワクワクして、
失敗もしながら、成功して汗をかくには、
ということをしていきたいと思っているんです。
ただ、そこには問題があって、
そうすると、「笑い」から外れるんですよ・・・。
これは頭がいたいんです。


(※つづく)

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2002-05-26-SUN
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