糸井 |
ぼくを怒るという芸の
あのへんで、この番組の
「シミシミやっていくおもしろさ」
っていうコンセプトを、女優は守るんですよね。
脚本書く側にいたい人は、
そのコンセプト自体を変えちゃいたいから、
ばんばん食いものを入れたら
ほんとうに勝負できるじゃないか、
とか、言いたくなるんだけど。
でも、そうすると、
「今までこうやってやってきたじゃないか」
っていうか。
いままで日本書紀でやってきたのに、
外国人を入れないでちょうだい、という姿勢?
この話は、その場ではできないし・・・。
こうやってTさんとの場があって
話せて楽しいんだけど。
|
T |
ぼくは、どちらかというと、
外人入れていこう、っていうほうなんです。
だから、それもやろうと思いますけど。
|
糸井 |
Tさんが考えてきた
この一粒の種が森になる、っていうコンセプトで
いちばんおもしろかったのはひとつずつの種でしょ。
でも、そのコンセプト、何年まわしたんですか。
じゃあ、森をつくったあとに
あなたは何をしたいんですか?という、
そういうところに来ているんじゃないかと思う。
同じことのぐるぐるまわりは、
人をひきつけないと思うから。
|
T |
どこまでさらけだせばいいのか、ということで
やっていけばいくほど、
どこまでも隠していくという
ヘンなことになるなと思いながらも、
やっているところがあるんだけど・・・。
ただ、お互いの尊厳みたいなものはある中で、
その先に何がどうなるかなというのは、
ひょっとするとあるかもしれないですね。
|
糸井 |
「世の中いろいろありまっせ」が、
Tさんのやりたいことなんじゃないかと。
|
T |
基本的には、そうですね。
こんなのも、ありでしょ?が成立すると
うれしいというのが基本ですね。
|
糸井 |
電波少年の企画の中で、
目的を達成するドラマにのっかった人が
シナリオの中ではイキイキとする。
でも、「じゃあ、終わりね」って言った時に、
どうなったかということを、やっぱり・・・。
その仕組みのあとに、何がのっかるんだろう?
というか。
|
T |
猿岩石からはじまったあのシステムに
のっかるとは、どういうことなんだろう?
ということなのかもしれないですね。
ぼくは、アポなしをやっていた時代に、
社長と会長にお年玉をもらいにいこうとか
そういうことをやって、
えらい怒られたんですよ。
永田町にいくよりも100倍も怒られた。
会社の中なのに。
だけど、それをやらないと、
ひきょうだとぼくは思ったんです。
ひとの会社にはアポなしでガンガン行って、
みっともない姿を出しておいて、
でも、一時社内アポなしをしたら、
あれがいちばんおこられましたね。
|
糸井 |
へぇ、それって、
途中の人がいないと、
きっと怒られることじゃないんでしょうね。
|
T |
オンエアしたあとに怒られるんです。
会長かっこいいなと思うのは、
ノーカーデーと言っていた時に
「氏家ちゃん、電車でいこう」
と松本明子が誘った時に、
「そうは行くかよ、一緒にのってけ」
ってクルマでいく。
そこで行ったあとに、誰にも言わないんですよ。
もし言ったとしたらオンエア中止になる。
でも、誰にも言わなかった。
オンエアした次の日に、怒られた。
|
糸井 |
おもしろいなぁ。
だからさー、やっぱり上で
強風にさらされているほんとうのトップは、
なかなかすごいものがありますね。
ある種の敬意を払うべきものがあるよ。
|
T |
昨日今日と社長さんもいらっしゃったけど、
やっぱり、社長っておもしろいですよね。
|
糸井 |
社長はおもしろいですよ。
自分の博打を打ってる人だから。
|
T |
昨日言われたことで、
じゃあぼくは自分の年収分しか
リスクを背負ってないってことなんですけど、
それとは違う考え方として、
「いや、ぼくはぼくで、こっそりと
テロリストのように、
強大なテレビの中に巣食う虫のように
やらなければいけないことがあるんです」
と言っていましたよね。
でも、やっぱり、社長さんはおもしろいですよ。
|
糸井 |
まぁ、おもしろい人を選んで
つれてきているからでしょうけど。
なんでしょうけども。
|
T |
・・・あ、イトイさん、
ここでメールアドレスだされてますけど、
届いたメールはぜんぶこのパソコンに
直接来るんですか?
|
糸井 |
はい、来ます。
|
T |
フィルター、かけていないで?
|
糸井 |
ええ。それは覚悟してます。
ぜんぶ読んでますよ。
|
T |
すごいなぁ。
|
糸井 |
年収以上、かけてます。
|
T |
そっかー・・・。
やっぱり、俺は、
打たれよわいんですよ。
|
糸井 |
誰だって弱いです。
|
T |
・・・ですよねー・・・。
でも、2ちゃんとかに
たとえば、書かれるじゃないですか。
ぼくはほとんど読んだことがないですけど、
それを聞いただけでこわくなっちゃうんです。
|
糸井 |
誰だって弱いです。
それが現実に何かあった時に
自分はどうするかという覚悟は、
それこそ、社長さんたちはしてますよ。
逃げない。
逃げるのも、
ちゃんと理由があって逃げますよね。
|
T |
そのためにも、生のいろんなリスクを負って、
メールアドレスにもフィルターをかけずに
やっているということですよね。
|
糸井 |
メールはとにかくぜんぶ読む。
たしかに、つらいのもありますよー。
この場だからできていること関しても
敏感に反応がきますし。
文句は言うなよとはぜんぜん言いません。
ただガミガミ言ってるだけじゃなくて
これはという理由のある批判に関しては、
心からちゃんと考えますよ。
こちらも面と向かいます。
|
T |
やっぱり、そこを引き受ける覚悟がないと、
社長にはなれないですね。
|
糸井 |
そうですね。
たぶん、3人の会社の社長だとしても、
ある意味、そういうことを
やっているんでしょうねぇ。
|
T |
そうだよなー。
前に、15年ぐらい前に
川崎徹さんがうちの新入社員を前にして、
「会社員のいちばんあやういところは
逃げ込むところで、それがあるということは
クリエイターとして
ものすごいハンデを負っているんです」
ということを言っていたけど、
新入社員は誰もわからなかったけれども、
横にきいているこっちは
「なるほど!」とばかり思っていた、
ということがあるけれども。
やっぱり、それですよねぇ。
サラリーマンには逃げこむ癖がつきますよね。
|
糸井 |
逃げこんだことが後悔される場面が
きっと、出てきちゃいますよね。
「あの時は、逃げたっけなぁ・・・」
と思いだした次もまた逃げるのか、
このぐらいは留まるというかたちなのか、
そういうことって、
ジジイになってから来るですよね。
だから、若い社長って、
とんでもないものがありますよねぇ。
|
T |
そっかー・・・。
あのアドレスはイトイさんに
ストレートにくるのか。
|
糸井 |
そうですよ、読んでますよ。
|
T |
ありがとうございました。
また会いましょう。
|
糸井 |
ええ。
|